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2023 年度 実績報告書

転写共役型DNA二重鎖切断修復を制御する新規因子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 21H03597
配分区分補助金
研究機関京都大学

研究代表者

安原 崇哲  京都大学, 生命科学研究科, 教授 (90757056)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワードDSB修復 / 転写
研究実績の概要

ゲノム中の転写領域では、R-loop構造とよばれるDNA-RNAハイブリッド二重鎖と一重鎖DNAからなる特殊な核酸構造を起点としてDNA二重鎖切断(DSB)を正確に修復する。これまでに我々のグループは、S/G2期において転写共役型相同組換え修復がこれらのDSBを正確に修復していることを明らかにしてきた(Yasuhara et al. Cell 2018)。しかしながら、静止期においてこれらのDSBがどのように修復されているかについては分かっていなかった。転写共役型DSB修復に関連する新たな因子として、データベースを用いたスクリーニングから、ユビキチン鎖に結合する分子RAP80を同定した。RAP80欠損細胞ではR-loop構造の不安定化によるゲノム異常の増加が示唆されたため、一重鎖DNA部位の挙動の追跡を行った。その結果、RAP80欠損細胞ではR-loop内の一重鎖DNA部位が不安定化していることが判明した。つまり、RAP80が一重鎖DNAの安定化に寄与することが示された。また、このRAP80によるR-loopの安定化は、特に細胞周期のG1期においてBRCA1, Polθ, LIG1/3などが関与する転写共役型末端結合(TA-EJ)を誘導し、DSBを迅速に修復していることが明らかとなった。これらのことから、転写活性化部位に生じたDSBはR-loopを誘導するが、R-loop内の一重鎖DNAはRAP80の機能によってヌクレアーゼから保護され、TA-EJが転写活性化部位のゲノム安定性に重要な役割を果たしているというモデルが考えられた(Yasuhara et al. Cell Rep 2022)。
今年度は転写共役型DSB修復に関連する因子のスクリーニングによって、いくつかの候補因子を同定し、それらがDSB修復に与える役割を解析した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

スクリーニングによって同定したいくつかの候補因子が、実際にDSB修復に関与することを示唆するデータが得られたため。

今後の研究の推進方策

これまでのスクリーニングで同定した転写共役型DSB修復に関連する因子のDSB応答における役割の解明を通して、RAP80をDSB部位へ誘導するメカニズムの同定を目指す。
・転写共役型末端結合への関与を検証するため、G1期細胞に放射線を照射した後に、γH2AX fociの数を指標にして、未修復のDSB量を定量する。特に、RAP80ノックアウト細胞で見られている、放射線1Gy照射後30分でのγH2AX foci数の増加に対して、当該因子の有無によって変化が起こるかどうかに着目する。
・転写共役型相同組換え修復への関与を検証するため、G2期細胞に放射線を照射した後に、RPA foci、RAD51 fociの数を指標にして、相同組換えで修復されているDSBの数を定量する。特に、RAP80ノックアウト細胞で見られている、放射線2Gy照射後でのRPA/RAD51 foci数の増加に対して、当該因子の有無によって変化が起こるかどうかに着目する。
・レーザー照射系を用いて、DNA-RNAハイブリッド量をライブセルイメージングにより定量する。特に、RAP80 KO細胞で見られているDNA-RNAハイブリッド量の増加に対して、当該因子の有無によって変化が起こるかどうかに着目する。
・レーザー照射系を用いて、RAP80のDSB部位への誘導をリアルタイムで観察する。その誘導に対して、当該因子の有無によって変化が起こるかどうかに着目する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] オックスフォード大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      オックスフォード大学
  • [雑誌論文] An ATR-PrimPol pathway confers tolerance to oncogenic KRAS-induced and heterochromatin-associated replication stress2023

    • 著者名/発表者名
      Igarashi Taichi、Mazevet Marianne、Yasuhara Takaaki、Yano Kimiyoshi、Mochizuki Akifumi、Nishino Makoto、Yoshida Tatsuya、Yoshida Yukihiro、Takamatsu Nobuhiko、Yoshimi Akihide、Shiraishi Kouya、Horinouchi Hidehito、Kohno Takashi、Hamamoto Ryuji、Adachi Jun、Zou Lee、Shiotani Bunsyo
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 ページ: 4991

    • DOI

      10.1038/s41467-023-40578-2

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] How Our Genome Is Protected From Mutagenesis2023

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Yasuhara
    • 学会等名
      Asian Young Scientist Fellowship Annual Conference 2023
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] RNAを介したゲノム安定性維持機構2023

    • 著者名/発表者名
      安原 崇哲
    • 学会等名
      RNAフロンティアミーティング2023
    • 招待講演
  • [学会発表] Genome maintenance by transcription-associated DNA double-strand break repair2023

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Yasuhara
    • 学会等名
      2nd Fukuoka RNA commons
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Toward an understanding of how chromosome translocations occur2023

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Yasuhara
    • 学会等名
      Radiation Biology Center Mini-symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 京都大学生命科学研究科ゲノム損傷応答学 安原研究室 研究内容

    • URL

      https://www.rbc.kyoto-u.ac.jp/genome_stress/research/

  • [備考] 京都大学生命科学研究科ゲノム損傷応答学 研究内容

    • URL

      https://www.lif.kyoto-u.ac.jp/j/research/lab/6628/

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公開日: 2024-12-25  

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