• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実績報告書

環境ストレスによるゲノムDNA損傷の修復を保障するクロマチン作動原理の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H03598
配分区分補助金
研究機関神戸大学

研究代表者

菅澤 薫  神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 教授 (70202124)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードヌクレオチド除去修復 / DNA損傷認識 / 紫外線 / 色素性乾皮症 / クロマチン
研究実績の概要

1.損傷部位にリクルートされるヒストン修飾酵素の解析: ヒストンメチル化酵素がDNA損傷部位にリクルートされる分子機構を理解するため、当該酵素の様々な欠失変異体をEGFP融合タンパク質として安定発現する細胞を作製して局所紫外線刺激を行った。その結果、これまで機能未知のN末端領域が損傷部位への集積に十分であることがわかった。さらに組換えタンパク質の発現・精製を行い、そのDNA結合活性が損傷によって増強されることを示す結果を得た。一方、ヒストン脱アセチル化酵素HDAC1/2に加えて、その活性促進因子として知られるMTAタンパク質が局所紫外線刺激に応答してDNA損傷部位に集積し、ヒストン脱アセチル化を誘導することが明らかになった。
2.クロマチンとの相互作用を介したXPCの局在・動態制御機構の解析: XPC中央部の天然変性領域がヒストンH3のN末端テールと直接相互作用し、ヒストンテールのアセチル化によってこの相互作用が著しく減弱することを見出した。さらにこの中央領域を欠失した変異XPCは無細胞NER反応系では正常な活性を示す一方、細胞内では野生型XPCに比べて活性が低下することがわかった。さらに、LacO-LacRシステムを用いてHDACのテザリングを行い、HDACの活性依存的にXPCをLacOアレイにリクルートできることを示した。
3.XPCのゲノムワイドな局在制御と損傷修復効率の相関: A549細胞を用いてXPC及びヒストン修飾を標的とするクロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-seq)解析を行い、クロマチン上におけるXPCとメチル化ヒストンの局在が正の相関を示す可能性を見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1.損傷部位にリクルートされるヒストン修飾酵素の解析: ヒストンメチル化酵素に関しては、DNA損傷部位へのリクルートに関わる領域の同定に成功した。XPC及びDDB2に依存せずにヒストンメチル化酵素が損傷部位にリクルートされるメカニズムの解明が重要な課題の一つであったが、ヒストンメチル化酵素自身がDNAの構造異常を認識する能力を持つ可能性を見出したことは大きな進展である。HDAC1/2がMTAとの複合体として損傷部位にリクルートされることも示しており、この部分の研究は概ね順調に進展している。
2.クロマチンとの相互作用を介したXPCの局在・動態制御機構の解析: これまで機能未知であったXPCの中央領域がアセチル化を介したヒストンテールとの直接相互作用を担い、細胞内のNERの促進に寄与するというのは、様々な修飾を含むヒストンとの相互作用を解析して上で極めて重要な発見と言える。また、テザリングアッセイの結果は、ヒストンのアセチル化状態を操作することでXPCの核内局在を人為的に制御できることを示した画期的な知見である。この部分の研究は当初の計画以上に進展が見られている。
3.XPCのゲノムワイドな局在制御と損傷修復効率の相関: クロマチン上におけるXPCとメチル化ヒストンの局在相関はヒストンメチル化酵素の役割から期待された結果と合致しており、この部分の研究の進捗は概ね順調と考えている。
以上、本研究計画全体としては、概ね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

1.損傷部位にリクルートされるヒストン修飾酵素の解析: ヒストンメチル化酵素のDNA結合活性の特異性をさらに詳細に解析し、どのようなDNAの構造異常を認識しているのかを明らかにする。当該酵素の全長タンパク質及び複合体としての発現・精製も行い、DNA結合活性とその特異性を比較解析する。またHDAC複合体については既知の構成サブユニットの発現抑制や変異体作製により、DNA損傷部位へのリクルートを担う因子・ドメインの特定を目指す。
2.クロマチンとの相互作用を介したXPCの局在・動態制御機構の解析: XPCの中央領域とヒストンテールの相互作用が、ヒストンテールのメチル化によって増強されるかどうかを調べる。XPC中央領域でこの相互作用に関与する領域を絞り込むとともに、構造生物学的な手法も駆使して詳細な相互作用の解析を行う。さらに、HDACとメチル化酵素を同時にテザリングした場合のXPCの局在に対する相乗効果の有無を検証する。
3.XPCのゲノムワイドな局在制御と損傷修復効率の相関: ChIP-seq解析を繰り返し行い、XPCとメチル化ヒストンの局在相関の有意性を統計的に評価する。さらに様々なヒストン修飾のゲノムワイド分布に関するデータベースを参照し、XPCの局在制御に関わるヒストン修飾パターンを明らかにする。さらに、通常培養条件でXPCが局在しやすい遺伝子領域が、紫外線照射時に優先的に修復されるかどうかを検討する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Histone deacetylation regulates nucleotide excision repair through an interaction with the XPC protein2022

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Kusakabe, Erina Kakumu, Fumika Kurihara, Kazuki Tsuchida, Takumi Maeda, Haruto Tada, Kanako Kusao, Akari Kato, Takeshi Yasuda, Tomonari Matsuda, Mitsuyoshi Nakao, Masayuki Yokoi, Wataru Sakai, Kaoru Sugasawa
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 25 ページ: 104040

    • DOI

      10.1016/ j.isci.2022.104040

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ヌクレオチド除去修復の損傷認識を補助するクロマチン構造変換機構の解明2021

    • 著者名/発表者名
      前田拓海、日下部将之、菅澤 薫
    • 学会等名
      日本遺伝学会第93回大会
  • [学会発表] 紫外線誘発DNA損傷の効率的な認識と修復を保障するヒストン修飾の役割2021

    • 著者名/発表者名
      日下部将之、各務恵理菜、栗原文佳、槌田千輝、多田遥人、前田拓海、菅澤 薫
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第64回大会
  • [学会発表] ヌクレオチド除去修復におけるDNA損傷認識を制御するクロマチンダイナミクス2021

    • 著者名/発表者名
      日下部将之、各務恵理菜、栗原文佳、槌田千輝、多田遥人、横井雅幸、酒井 恒、菅澤 薫
    • 学会等名
      第94回日本生化学会大会
  • [学会発表] ヒストン脱アセチル化はヌクレオチド除去修復におけるDNA損傷認識を制御する2021

    • 著者名/発表者名
      槌田千輝、日下部将之、各務恵理菜、栗原文佳、多田遥人、前田拓海、横井雅幸、酒井 恒、菅澤 薫
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] ヌクレオチド除去修復の損傷認識を促進するクロマチン構造変換因子の機能解析2021

    • 著者名/発表者名
      前田拓海、日下部将之、横井雅幸、酒井 恒、菅澤 薫
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] ヒストン脱アセチル化による紫外線誘発DNA損傷認識の制御2021

    • 著者名/発表者名
      槌田千輝、日下部将之、各務恵理菜、栗原文佳、多田遥人、前田拓海、横井雅幸、酒井 恒、菅澤 薫
    • 学会等名
      第39回染色体ワークショップ・第20回核ダイナミクス研究会
  • [学会発表] 色素性乾皮症C群タンパク質によるDNA損傷認識を制御するクロマチン動態2021

    • 著者名/発表者名
      前田拓海、日下部将之、横井雅幸、酒井 恒、菅澤 薫
    • 学会等名
      第39回染色体ワークショップ・第20回核ダイナミクス研究会
  • [備考] 神戸大学バイオシグナル総合研究センター・菅澤研究室ホームページ

    • URL

      https://www.research.kobe-u.ac.jp/brce-sugasawa/

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi