研究課題
1.損傷部位にリクルートされるヒストン修飾酵素の解析: ヒストン脱アセチル化酵素HDAC1/2及びその活性化因子であるMTA(metastasis-associatd)ファミリータンパク質がDNA損傷部位にリクルートされるメカニズムを解明するため、これらの因子をサブユニットとして含む転写コリプレッサー複合体に着目した解析を行った。その結果、特にクロマチンリモデリング活性を持つATPaseサブユニットの発現抑制によってXPC及びMTAの損傷部位へのリクルートが減弱するだけでなく、当該サブユニット自身が損傷部位にリクルートされることを見出した。2.クロマチンとの相互作用を介したXPCの局在・動態制御機構の解析: LacO-LacRシステムを用いて、HDACのテザリングによりXPCがLacOアレイにリクルートされることを前年度までに示したが、この時XPCはLacOアレイを含むクロマチン領域で結合と解離を繰り返しており、その結合親和性はDNA損傷部位と比較しても決して低くないことがわかった。さらに、ヒストンメチル化酵素EHMT1が、HDACと同様にXPCをLacOアレイにリクルートできることを示すとともに、EHMT1の発現抑制によるXPCの損傷部位へのリクルートの減弱が、XPCタンパク質中央部の天然変性領域に依存することが示された。3.XPCのゲノムワイドな局在制御と損傷修復効率の相関: 前年度に引き続き、XPC及びヒストン修飾を標的とするクロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-seq)解析のためのサンプル調製及びデータ取得を行った。
2: おおむね順調に進展している
1.損傷部位にリクルートされるヒストン修飾酵素の解析: ヒストン脱アセチル化酵素HDAC1/2及びMTAがDNA損傷部位にリクルートされるメカニズムとヌクレオチド除去修復における機能を理解する上で、転写コリプレッサー複合体の関与を強く示唆する結果を得たことは重要な進展である。クロマチン上で発生したDNA損傷の認識において本質的な役割を担う新規因子の同定につながるもので、この部分の研究は順調に進展している。2.クロマチンとの相互作用を介したXPCの局在・動態制御機構の解析: HDACのテザリングにより人為的に誘導した低アセチル化クロマチン領域に対するXPCのリクルートが、DNA損傷誘導時にも比較的高レベルで維持されたことから、DNA損傷部位におけるヒストン修飾の変化がXPCによる損傷認識を促進するというモデルが強く支持される。ヒストンメチル化によるXPCのリクルートも確かめられ、この部分の研究は順調に進展している。3.XPCのゲノムワイドな局在制御と損傷修復効率の相関: ChIP-seq解析に加えてヌクレオチド除去修復のゲノムワイドな進行をモニターする実験系の構築を進めており、この部分の研究の進捗は概ね順調と考えている。
1.損傷部位にリクルートされるヒストン修飾酵素の解析: DNA損傷部位においてヒストン脱アセチル化及びメチル化を担うタンパク質複合体について、どの構成成分がDNA損傷部位へのリクルートに本質的な役割を担っているのかを、候補因子の発現抑制や変異導入によって明らかにする。当該因子の全長タンパク質及び複合体としての発現・精製を行い、損傷やその他の構造異常を含むDNA及びクロマチンに対する結合活性とその特異性を比較解析する。2.クロマチンとの相互作用を介したXPCの局在・動態制御機構の解析: ヒストン脱アセチル化とメチル化の機能連関に着目し、LacO-LacRシステムを用いてHDACとEHMT1を同時にテザリングした時のXPCのリクルートに対する相乗効果を検証する。また、ヒストンH3とXPCとの物理的相互作用がヒストンテールのメチル化によって増強されるか、またその相互作用がXPCの中央領域を介するかどうかを、精製タンパク質や再構成クロマチンを用いた実験で明らかにする。3.XPCのゲノムワイドな局在制御と損傷修復効率の相関: XPCとヒストン修飾のゲノムワードな分布、及びDNA損傷修復の時空間的相関関係を明らかにするため、引き続き次世代シーケンス解析を進める。一方、イメージング解析を駆使することにより、XPCが局在しやすい領域が紫外線照射時に優先的に修復されるかどうかを別の側面からも検討する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
iScience
巻: 25 ページ: 104040
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https://www.research.kobe-u.ac.jp/brce-sugasawa/