研究課題/領域番号 |
21H03606
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
冨永 貴志 徳島文理大学, 神経科学研究所, 教授 (20344046)
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研究分担者 |
高島 一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 上級主任研究員 (90357351)
梶原 利一 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (60356772)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膜電位感受性色素 / 遅発神経毒性 / E/Iバランス / ビスフェノールA / 海馬 / 過興奮 / 前帯状皮質 |
研究実績の概要 |
本研究は、環境中の化学物質による遅発性の脳機能障害の早期の網羅的検出方法の確立を目標としている。検出法として膜電位イメージング法を用い、神経回路の興奮(E)・抑制(I)への過剰な傾き(E/I不均衡)を定量する手法を確立しようとしている。試験化学物質としてビスフェノールA(BPA)、BPA代替化合物、BPA関連化合物を用いた。この研究はほぼ終了し、BPA類の急性影響の網羅的解析を終了することができ、現在、投稿中である。この研究を進めている間に問題となったのが、海馬回路の主要な3シナプスをイメージングする際に、刺激電極を移動し、さらには視野を調整して計測するために時間がかかることであった。 現在、2台の全く同様に組み立てたイメージングリグを並列して動かすことで1匹のマウスから得られるデータを増やしているが、上述のような刺激電極の移動、視野の移動など時間をかけて行う実験操作が途中で挿入され、得られるデータに限りがあった。これを解決するために、光学系を微調整しマウス海馬の全体がちょうど1視野に収まるように改造するとともに、マイクロマニピュレーターを増設し、さらには刺激回路をマイクロマニピュレーターで切り替えられる装置を作成した。これらのことにより、ほぼ、全自動で1スライスからのデータを取得することができるようになり、実験の精度が格段に上がった。 これらのデータは他の病態モデルマウス(脳梗塞モデル)や老齢マウスへの適用で期待通りの効果を上げている。これらのマウスでも、本研究で中心的な課題としている過剰興奮が病態の中心的な役割を果たしていることを明らかにしつつある。BPA類の影響に関しては、現在、胎生期から離乳までの発生発達期の投与の遅発影響を定量しようとしている。 脳梗塞モデルでは、脳梗塞を発生させる物質の急性影響を調べ、バルプロ酸の急性影響も調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光計測用の計測装置の改善は順調に進んでおり、論文の準備もできている。また前帯状皮質のマップに関する論文を出版することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、この検査法を海馬だけでなく他の脳領域にも広げること、興奮・抑制バランスの破綻のメカニズムを調べるために興奮・抑制の同時イメージングを行うことを次の目標としている。他の脳領域としては、前頭野に着目し、特に前帯状皮質を中心としたイメージングを行いながら機能マップを作成している。昨年度は前帯状皮質の機能マップに関する論文を完成させた。これへの薬物影響を調べようとしている。興奮・抑制の同時イメージングを行う上で技術的要件はまだ高いが、GEVIの発現とその最も容易な検証であるin vivo標本でのイメージング法の開発を進めている。 幼若動物や老年動物などの生理的変化に伴う回路応答について基礎データを収集し、毒性影響の評価に繋げられるようにしている。いくつかの関連論文を用意している。
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