研究課題/領域番号 |
21H03607
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
赤田 尚史 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (10715478)
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研究分担者 |
田中 将裕 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00435520)
真田 哲也 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (00544272)
柿内 秀樹 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 研究員 (20715479)
平尾 茂一 福島大学, 環境放射能研究所, 准教授 (30596060)
田副 博文 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 准教授 (60447381)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トリチウム / 高精度 / 簡易計測 |
研究実績の概要 |
近年、国民の“トリチウム”に対する関心は高い。この「トリチウム」の環境・健康影響を明らかにするためには、環境中に低濃度で存在するトリチウムを高精度で計測する必要がある。そのため、一般に公開されているデータは極めて少ない。福島原発周辺地域の住民からは、「多くの環境トリチウムデータの公開が風評被害の払しょくに繋がる」との声も上がっている。この問題をクリアするためには、高精度・簡易環境トリチウム計測法を開発することが重要である。そこで、これまでの核融合工学研究で培った技術と環境放射能研究によるの経験を活かし、①固体高分子膜電解濃縮装置の高効率化による高精度測定前処理手法の確立、②パッシブ型大気トリチウム簡易モニタリング装置の開発、③簡易・自動有機結合型トリチウム前処理手法の確立を行う。また開発した手法により日本の一般環境におけるトリチウムのバックグラウンド濃度とその分布を明らかにするとともに、トリチウムと安定・放射性同位体を組み合わせたマルチアイソトープ手法により気圏-陸圏-水圏における人為起源トリチウムの環境影響診断手法の確立を目指す。 ①の固体高分子膜電解濃縮装置の高効率化に向けた改良では、リザーバーを小型化し、試料水の冷却効率の向上について検討した。その結果、良好な結果を得ることができた。 ③について、市販の管状炉、触媒等を購入し、燃焼システムを製作した。また、製作したシステムを用いて燃焼試験を行い、安全に運転できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では4つの項目について検討することを計画している。1年目である2021年度は、特に固体高分子膜電解濃縮装置の改良と有機結合型トリチウム分析のための前処理システムの構築について研究を進めた。 固体高分子膜電解濃縮装置の改良では、少ない資料をより効率よく冷却するため、これまでに改良・製作していたガラスリザーバーを改良し、より小型なものを製作した。その結果、少試料量でも冷却効率がアップし、濃縮効率の向上に繋がった。 燃焼システムの検討では、市販のプログラム式管状炉を購入し、それに合う50mmΦの石英管を製作した。その中には燃焼ガスを酸化するための白金ハニカム触媒を入れることができるよう長さを工夫した。一方、触媒加熱するための市販のマントルヒーターも購入した。準備したセットで燃焼試験を実施した。燃焼プログラムについては、TG/DTA分析により得られた松葉の試験結果を利用した。その結果、プログラムの修正を数回実施し、良好な結果を得ることができた。 既に開発しているHTO用パッシブサンプラーを用いた屋外大気の観測を開始した。取り付ける予定の触媒については、その選定を終えることができた。また、福島県いわき市沿岸海水の採取を開始し、測定を開始した。 これらのことから、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は十町に計画を推進することができた。2年目は計画に従って、固体高分子膜電解濃縮装置の高効率化として、A設定の電流設定について検討を行う。パッシブサンプラーとしては、弘前市と福島県浪江町でHTO観測を実施し、地点間比較を行う。また、触媒設置についての検討も行う。有機結合型トリチウム分析に関する検討として、植物以外の加熱昇温プログラムを検討する。特に、魚試料の燃焼に着目し、その条件検討を実施する。バックグラウンド濃度観測として、これまでの降水ネットワーク観測を継続すると共に実測結果と文献値を取りまとめて、その傾向を明らかにする。
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