研究課題/領域番号 |
21H03609
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坂口 綾 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00526254)
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研究分担者 |
鄭 建 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 福島再生支援研究部, 上席研究員 (30370878)
横山 明彦 金沢大学, 物質化学系, 教授 (80230655)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ネプツニウム / トレーサー / アクチノイド / 人工放射性核種 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、環境中の長寿命人工放射性核種ネプツニウム同位体(Np)に着目し、質量分析のためのNp-236gスパイク製造、高マトリクス試料からの簡便・高収率なNp分離濃縮法を構築し、長半減期Np-237の超高感度定量法を開発する。これにより、被ばく/環境影響評価に関わる重要なアクチノイドであるNp-237を定量的に評価するだけでなく、環境Np挙動研究により表層環境の生物地球化学的物質循環の解明を可能にすることを目指す。 2022年度の計画は①Thフォイルに様々なエネルギーのリチウム(Li)ビームを照射し、前年度までに確立された化学分離方法を適用し、Np-236mの核反応断面積および励起関数を得る、②加速器質量分析計やその測定法の改良により、妨害核種の影響除去を検討する ということに取り組んで来た。①に関しては、20~40MeVのLiイオンビームをThに照射して、これまでに確立した化学分離法を適用することによりNp-236mのシグナルをγ線測定により確認した。化学分離法に関しては、実試料に適応後不具合が確認されたため更なる精製を目指し改良も行った。最終的に分離法が確立し論文執筆を終了している。また、それぞれの照射Liエネルギーにおける核反応断面積および励起関数を得ることができた。また②においてはフッ化物/オキシフッ化物負イオンビームの取り出しによりNp測定の妨害となるUやPuのビーム引き出しを低減することが可能となった。また、環境試料への適応も考慮し、環境試料の化学および測定法の確立もお行った。これら結果の一部は査読付き国際誌に投稿・受理されるとともに国内外での学会でも発表された(招待講演含む)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、申請書に記載した①実際の試料に確立した方法を適用し、Np同位体製造に関する情報(特に副産物であるNp-236m)を得る という計画に従って研究遂行することができた。実際にNp-236mの励起関数を得ることもできている。また、②妨害核種の低減 を加速器質量分析の観点から取り組むという計画に対して、実際妨害核種(UやPu)の低減に成功し査読付き国際誌への投稿・受理となっている。そのほかにも得られた重要な知見は学会などでも発表しており、おおむね計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
実際のスパイクを作成するため、Np-236gとNp-237の励起関数を作成する必要がある。2022年度はNp-236gおよびNp-237に関して一部のエネルギーで核反応断面積が試算されているものの、さらにデータの精査が必要なデータもある。そこで、加速器質量分析およびセクターフィールド誘導結合プラズマ質量分析により得られた実際の測定値から核反応断面積を再計算や確認により推定しなおすほか、データが得られていないエネルギーに関してRIKENのビームタイムで照射実験を行いそれらのエネルギー範囲でNp-236gおよびNp-237の核反応断面積を得る。最終的には励起関数を両核種に対して得る。Np-236gのパイロットスパイクの作成にも取り掛かる。1枚のThフォイルからできるだけ多くのNp-236gを得るために、一度Liビームを照射したThフォイルを化学分離することなく、さらに別のビームタイムでも重ねて照射する。十分に冷却後(短寿命放射性核種の壊変後)に、これまでの研究で確立した化学分離法を全て適用し、パイロットスパイク溶液を得る。これらの溶液中に含有される製造目的核種であるNp-236gおよびNp-237に関して濃度定量を行うことでパイロットスパイクを作成する。濃度定量には加速器質量分析、トリプル四重極誘導結合プラズマ質量分析、セクターフィールド誘導結合プラズマ質量分析により行う。
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