研究課題/領域番号 |
21H03617
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
花本 征也 金沢大学, 環境保全センター, 講師 (10727580)
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研究分担者 |
本多 了 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (40422456)
黒田 啓介 富山県立大学, 工学部, 准教授 (30738456)
端 昭彦 富山県立大学, 工学部, 講師 (70726306)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 動物用医薬品 / 人用医薬品 / 病原微生物 / 指標微生物 / 養豚排水 / 河川調査 / 数理モデル / 季節変動 |
研究実績の概要 |
畜産業が盛んな全国8か所の河川流域(十勝川:北海道、北上川:宮城県、利根川:茨城県、小矢部川:富山県、大野川:大分県、大淀川:宮崎県、川内川:鹿児島県、肝属川:鹿児島県)において、動物用・人畜両用・人用医薬品5・2・3物質を対象とした河川調査を月1回の頻度で1年間実施した。その結果、集水域において養豚数よりも人口の方が多い関東以北の3河川では、人用医薬品3物質の合計濃度が動物用医薬品5物質の合計濃度を上回ったが、人口よりも養豚数の方が多い他の5河川では逆となった。慢性疾患に用いられる医薬品は河川負荷量の季節変動が小さく、急性疾患に使用される医薬品は冬季に負荷量が上昇する傾向が見られた。人用医薬品の河川負荷量は、排水負荷に着目した水圏排出モデルによる予測値が現地調査による観測値の1/3~3倍の範囲内に含まれており、高い予測精度が得られた。一方で、動物用医薬品では、大淀川や肝属川では、上記モデルによる予測値が観測値の1/3~3倍の範囲内に含まれた物質が多かったが、大野川や利根川では予測精度の低い物質も見られた。動物用医薬品5物質の負荷量の合計値としては、多くの河川で予測値が観測値の1/3~3倍の範囲内に含まれていたことから、畜産場数が少ない流域では使用原単位の空間分布の影響を受けやすいことが示唆された。また、都府県とは家畜糞尿管理方式の異なる北海道では、農地からの動物用医薬品の流出が示唆される結果が得られた。富山県の小矢部川・庄川・神通川においては、指標微生物の現地調査を月1回の頻度で1年間実施した。FRNAファージ(FRNAPH)の遺伝子群(GⅠ-GⅣ)とバクテロイデス属菌を用いた微生物汚染源特定マーカーとの比較により、GⅡ-FRNAPHはヒト糞便汚染、GIV-FRNAPHはブタ糞便汚染の指標として有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、動物用・人畜両用・人用医薬品の計10物質を対象とし、全国の畜産地域を流下する河川において、存在実態及び、その季節変動を明らかにした。これらの調査結果を用いて、過年度の研究において構築した、養豚排水に着目した動物用医薬品の水圏排出モデルを検証し、予測精度を明らかにしたと共に、実測値と予測値の乖離要因を見出した。液肥の農地散布や牛の放牧の多い北海道では、動物用医薬品の農地流出が示唆される結果が得られており、家畜糞尿管理方式の地域差が動物用医薬品の水圏流出機構に影響を与えていることが示唆された。ヒト糞便汚染及び動物糞便汚染の指標微生物であるFRNAファージ遺伝子群の宿主特異性についても評価を行った。このように、本研究の目的である、家畜由来薬剤・微生物を対象とした、①畜産排水処理施設における排出モデルの構築(@本州・九州)、②農地・放牧場における流出モデルの構築(@北海道)に対して、着実に成果を得ており、研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
全国の畜産地域を流下する前述の河川において、家畜由来薬剤・微生物の現地調査を継続することで、存在実態及び季節変動を明らかにする。また、現地調査による実測値と水圏排出モデルによる予測値とを比較することで、予測可能性についても更なる知見を得ると共に、モデルの改良も試みる。 排水処理施設からは年間を通して処理水が表流水に放流される一方で、液肥・堆肥は主に春先と秋に農地に散布され、放牧牛糞尿は冬季を除いて農地に負荷される。農地に負荷された薬剤・微生物は、主に雨天時・融雪期の表面流出水により、一部は暗渠排水や中間・基底流出水により表流水へ流出すると考えられる。これらの畜産・農業活動と、薬剤使用量や排水処理性能の季節的な変動を考慮し、北海道の十勝川では3-4月の施肥・融雪期と8-9月において、雨天時に焦点を当てた河川調査も実施する。また、液肥施用農地や放牧場に由来する薬剤・微生物の地下水汚染も考えられることから、主に北海道の十勝川流域を対象とし、湧水についても採水・分析を行う。
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