研究課題/領域番号 |
21H03624
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
今藤 夏子 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主任研究員 (10414369)
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研究分担者 |
岩崎 雄一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (00748840)
内田 典子 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (50876464)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水生昆虫 / 休廃止鉱山 / DNAバーコード / メタバーコーディング / 重金属汚染 |
研究実績の概要 |
本年度は、水生昆虫の参照DNA塩基配列の収集と参照データベースの整備と、コドラート法による採集と環境DNAによる多様性評価結果の比較を中心に研究を進めた。参照DNA塩基配列解析のための水生昆虫標本の収集を進め、このうち北海道 、岩手県、岐阜県の複数の流域について35種の標準的なDNAバーコード配列であるミトコンドリアのチトクロームオキシダーゼc サブユニットI(COI)の658bpの領域について塩基配列を得た。隠ぺい種と思われる種も複数含まれたことから、今後は分類学者と協力して分類学上の整理を試みる必要がある。種名が確定した配列については、国際塩基配列データベースに登録し、塩基配列を公開予定である。 環境DNAによる水生昆虫の金属影響評価方法の構築を目的として、岩手県の休廃止鉱山下流の河川において、リファレンス地点1箇所を含む5箇所の調査地点を設定し、金属濃度等の水質調査、水生昆虫(底生動物)調査、環境DNA解析用の採水を行った。鉱山廃水流入後に銅等の金属濃度が増加し、感受性が高いカゲロウ類を含む多くの底生動物の生息が制限されていた。環境DNA解析による昆虫類の多様性解析のため、河川水濾過フィルターからDNAを抽出し、16SrRNA領域の昆虫類ユニバーサルプライマーを用いてメタバ―コーディング解析に供した。調査地点間の比較において、1塩基配列の違いを区別したASV解析と,代表配列に基づくOTU解析の結果を比較検討した。今後、塩基配列リード数の確保およびリファレンスデータベースの最適化を行ったうえで、重金属影響度の異なる地点間における昆虫類の多様性について、環境DNAと採集調査結果を再分析する必要がある。また同様の調査デザインで、北海道の休廃止鉱山下流の河川でも予備的な追加調査を実施し、河川間比較を行えるようサンプルを収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
参照DNAデータベースを拡充するための水生昆虫標本について、当初の予定通りに入手できた。標本の収集・同定とリファレンス配列取得については、分類学者とDNA解析の研究者の連携が必須だが、2022年度からは分担者として分類学者の参画を得ることとなり、より効率よく、高い精度で進める体制が整った。また、2022年度以降は、引き続き共同研究者からの標本提供を受ける予定もあり、今後はさらに参照塩基配列を取得する種数は増えると考えている。 鉱山下流における環境DNAによる水生昆虫の多様性検出について、その手法や定性・定量性を検討していくにあたり、2021年度は岩手県の休廃止鉱山下流の下線において予備的な調査と実験を行った。調査に適した地点の選定や、山間部での採水・ろ過調査法の検討を行いつつ、各地点で河川における水生昆虫の採集調査と環境DNA解析を行った。得られた結果をもとに、2022年度以降は本格的な調査を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に沿って着実に進んでおり、今後も申請書の計画通りに研究を進めていく。また、今年度得られた塩基配列については速やかに国際データベースへの登録と公開を進める。環境DNA解析などの研究成果についても、できる早く論文化し、公表する。
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