研究課題/領域番号 |
21H03625
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
羽野 健志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (30621057)
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研究分担者 |
佐藤 琢 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), グループ長 (20455504)
伊藤 真奈 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 研究員 (60735900)
Jusup Marko 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任助教 (60762713)
岩崎 雄一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (00748840)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | クルマエビ / 殺虫剤 / 病原体 / 高水温 / 複合影響 / エネルギー収支モデル |
研究実績の概要 |
課題1 沿岸干潟域における高リスク農薬の抽出:約20種の殺虫剤(ネオニコチノイド系農薬7種及びその分解物、フェニルピラゾール系殺虫剤フィプロニル、フィプロニルの3分解物等)を対象に沿岸干潟域の農薬の分布実態を調べた。2019-21年の抽出サンプルを用い液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS/MS)により分析した結果、フィプロニルの分解物が新たに検出された。また、室内実験の結果からフィプロニル分解物はクルマエビに対しフィプロニル同様強い毒性を持つことを明らかとなり、クルマエビに対し高リスクの殺虫剤になりうることが明らかになった。 課題2 クルマエビ稚エビのウイルス保有状況:天然稚エビ採捕調査を瀬戸内海沿岸干潟域を中心に実施した。採捕された181尾のうちWSSV陽性個体は2個体であった(感染率1.1%)。 課題3 複合要因の影響と作用機序解明:農薬曝露、ウイルス感染・高水温の複合的な環境要因を同時に評価可能な試験法を確立した。具体的には、試験期間は2週間、農薬曝露はフィプロニルを用いて2-3日毎に換水を行う半止水式、ウィルス感染は実験開始時にWSSV感染クルマエビから得た組織懸濁液を500倍希釈した海水下で2時間行うこととした。また温度制御には温度勾配恒温器を用いて検討した20,25,30℃下で対照区の2週間生存率は20%以下であり、試験方法が確立されたと判断した。 課題4 クルマエビ版DEBモデル構築:クルマエビ版動的エネルギー収支モデル(Dynamic Energy Budget,DEB)の構築に向け、過去の飼育実験等を整理し、モデル構築に必要な成長速度や繁殖に関わるパラメータ推定に必要なデータを収集・電子化した。さらに、エビ卵、餌料、エビ筋肉等の熱量分析を行い、モデル構築に必要な基盤情報を取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1 沿岸干潟域における高リスク農薬の抽出:クルマエビへの高リスク物質としてフィプロニル分解物を沿岸干潟域環境水から新たに検出した。 課題2 クルマエビ稚エビのウイルス保有状況:天然稚エビ採捕調査を実施し、WSSV保有個体を採捕した。 課題3 農薬曝露、ウイルス感染・高水温の複合的な環境要因を同時に評価することを可能にする毒性試験法を確立した。すなわち、全ての温度区で対照区の2週間生存率は20%以下であり、試験方法が確立されたと判断した。 課題4 クルマエビ版DEBモデル構築:クルマエビ版DEBモデルを構築する上で必要となる成長速度や繁殖に関するデータを収集できた。 以上、すべての課題において順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
課題1 沿岸干潟域における高リスク農薬の抽出:引き続き沿岸干潟域の農薬の分布実態を詳細に調べる。高リスク殺虫剤については随時情報を収集し測定対象としてのアップデートを進める。 課題2 クルマエビ稚エビのウイルス保有状況:引き続き天然稚エビ採捕調査を瀬戸内海沿岸干潟域を中心に実施する。採捕個体は、リアルタイムPCRによりウイルスの保有を確認後、ウイルス量、 遺伝子型及び多型性を調べ、感染率との関係を明らかにする。ウイルスの保有状況を踏まえつつ地域間差異や季節・経年変化を明らかにする。 課題3 複合要因の影響と作用機序解明:昨年確立した手法を基に、農薬曝露、ウイルス感染・高水温の複合的な環境要因を同時に評価する毒性試験法を実施する。 課題4 クルマエビ版DEBモデル構築:過去の飼育実験でのデータを有効に活用し、また昨年度測定した熱量分析値を有機的に活用しつつクルマエビ版DEBモデル構築を進める。
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