研究課題/領域番号 |
21H03644
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
森 勝伸 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (70400786)
|
研究分担者 |
永井 大介 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (30375323)
石井 孝文 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50750155)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 循環再生材料設計 |
研究実績の概要 |
当研究グループでは、地球上で芳香族を最も多く含むリグニンに、重金属イオンを担持し熱処理することによって、優れた導電性を有するグラフェンを得ることに成功した。そこで、次の展開として、リグニンへの金属担持量と熱処理条件を制御することで、高導電性を有する単層グラフェンを安定に供給できる生成経路を明らかにし、生成したグラフェンの実装化に向けた準備を行う。具体的には、樹脂とのブレンド技術を確立し高導電性の絶縁性ポリマーを提示すると共に、熱処理時の副生成物(H2、CO2等)も合成ガスに変換することで、リグニンの完全な再資源化を図る。これにより、リグニンを炭素材料に変換する技術にとどまらず、複合材料の添加剤や排ガスの再利用を含め100%使い切る再資源化技術を提案する。 本研究の1年目では、まず、1)リグニンからグラフェンへの生成経路の探索として、試料調製条件、熱処理条件の探索、構造解析を行った。次に2)樹脂 との高分散ブレンド技術を確立と絶縁性ポリマーの導電化については、グラフェン存在下でのメタクリル酸メチル(MMA)の重合挙動を検討した。MMAにグラフェンを加え、分散液を超音波洗浄機でグラフェンを分散させた。その後、ラジカル重合開始剤を加え重合を行った。その結果、超音波処理時間が長くなるに従いポリマー中のグラフェンの分散性が向上することが分かった。さらに3)金属担持リグニンを熱処理する際に発生する副生成物のガスの分析を行うため、ガスの回収方法を設定した。各検討項目は、すべて着手することができたものの、新型コロナウィルス感染防止対策のため、試薬の購入が大幅に遅れた。ただし、それぞれの研究担当者が工夫して、研究目的を達成するためのアイディアを創出できていることから、次年度での飛躍的な成果が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の1年目では、〇リグニンからグラフェンへの生成経路の探索として、試料調製条件、熱処理条件の探索、構造解析を行い、金属イオン(Fe2+、Ni2+等)がリグニンに内在する水酸基にキレート結合することで、その金属イオンが熱処理時に芳香環をつなげる触媒の役割を果たすことを突き止めた。〇グラフェンの高分散条件の探索として、分散させる溶媒と樹脂との混錬方法について検討され、長時間の超音波処理によってポリマー内のグラフェンの分散度が向上することを突き止めた。〇副生成ガスであるCO2の水素還元触媒に、これまでRhやRuといった希少金属が利用されていたのを無機物ナノ粒子に炭素を被覆したコアシェル炭素担体の開発し、水素還元触媒に適用できることを明らかにした。 実施すべき項目については着手することができたが、新型コロナウィルス感染防止対策のため、試薬の購入が大幅に遅れ、すべての計画は実施できなかった。ただし、各研究担当者の創意工夫により全体的には計画通りに進展したことから「(2)おおむね順調に進展している。」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の2年目では、1年目で実施できなかった研究を早急に実施し、所定の各基礎研究の最適化を中心に、リグニンからグラフェンの生成条件の最適化、グラフェン-樹脂のブレンド法の開発、副生成物の分析と有機物質の転換方法の試みを行うことを計画する。
|