研究課題/領域番号 |
21H03646
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
押谷 潤 岡山理科大学, 工学部, 教授 (70314656)
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研究分担者 |
原田 周作 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80315168)
辻 拓也 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90379123)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 流動層内での物体浮沈 / アルキメデスの原理 / 無線式センサシステム / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
昨年度明らかとなったアルキメデスの原理にある浮力と重力とは異なる力が流動層内の物体に作用することをさらに検討するため、電子天秤に吊るしたステンレス球の流動層内での重量測定に基づいて見積もった見掛け浮力から重力を差し引いた値を求めた。この値が正の場合は物体が浮揚し、負の場合は沈降することになる。流動層の風速と層高を変化させて様々な高さでその値を求め、同条件で行った球の浮沈実験の結果と比較した。まず、浮沈実験により昨年度と同様に風速が大きい場合は密度差から沈降すると予想された球が沈降しない結果を得ると共に、流動層表面に近い上部では見掛け浮力から重力を差し引いた値が大きな正の値となり、想定される浮力よりも極めて大きな上向きの力が球に作用することが明らかとなった。また、同条件で様々な高さで壁面での空気圧測定を行うと共に、圧力センサーを内包した球を流動層内の様々な高さに固定して球上下での空気圧力差を測定した結果、高さ方向での空気圧力差が局所的かつ瞬時に大きな値となることが明らかとなり、上記の極めて大きな上向きの力が空気圧力差に起因するものであることが示唆された。数値シミュレーションにおいても物体浮沈と空気圧力差の関係を検討した結果、風速が大きい場合に粉体や気泡の激しい運動に起因する局所的かつ瞬時の大きな空気圧力差が生じることと、その近傍において球が浮揚することが明らかとなった。以上により、流動層内での物体浮沈のメカニズムとして流動層内には局所的不均一性があり空気圧力差に基づく圧力勾配力も物体に作用する力として考えるべきであることが見出され、研究課題名に挙げた混合廃棄物の乾式素材分離技術の高度化に向け、アルキメデスの原理に基づかない力への配慮の重要性が示され有意義な結果であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画に挙げた『流動層内の物体に働く浮力と重力以外の力の計測』として流動層内での各高さで空気圧力を壁面や球上下で測定した結果、同じく挙げた『流動層内の局所的不均一性の存在証明と物体浮沈メカニズムの予測』に関連して高さ方向での空気圧力差が局所的かつ瞬時に大きな値となることが高風速での球の特異的浮沈の要因であることを明らかにすると共に、同じく挙げた『数値シミュレーションによる物体浮沈メカニズムの検証』として流動層内には局所的不均一性があり空気圧力差に基づく圧力勾配力も物体に作用する力として考えるべきであること見出したことはおおむね順調な進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間では1つでかつ形状が球形の物体についての浮沈を検討してきたが、混合廃棄物を対象とした実用面では数多くの物体や様々な形状の物体を分離する必要があるため、次年度以降は複数(多体)や非球形の物体についての浮沈を検討する。特に複数の場合は物体の初期配置に注目し、流動層表面に配置する場合と底面に配置する場合を比較したり、平面方向で中央に配置する場合と壁面近傍に配置する場合を比較したりする。また、今年度見出した流動層内の局所的不均一性と空気圧力差に基づく圧力勾配力のみでなくその他の要因にも注目し流動層内での物体浮沈メカニズムのさらなる解明に迫る。
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