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2023 年度 実績報告書

野生動物の個体数モニタリング手法の確立:自動撮影・深層学習・統計モデリングの協働

研究課題

研究課題/領域番号 21H03653
配分区分補助金
研究機関日本大学

研究代表者

中島 啓裕  日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (80722420)

研究分担者 寺田 和憲  岐阜大学, 工学部, 教授 (30345798)
飯島 勇人  国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30526702)
上野 将敬  近畿大学, 総合社会学部, 講師 (30737432)
相澤 宏旭  広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (30910301)
東出 大志  岐阜大学, 応用生物科学部, 特任助教 (60634871)
加藤 邦人  岐阜大学, 工学部, 教授 (70283281)
安藤 正規  岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (80526880)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード自動撮影カメラ / 個体判別 / 空間明示型捕獲再捕獲法 / 密度推定
研究実績の概要

今年度も、前年度に引き続き学習用の動物画像を追加取得するとともに、個体の自動判別を行うための機械学習モデルの構築を行った。ツキノワグマに関しては、熊本のくまもとドリームパークにおいて飼育されている20個体の撮影を行った。これまでに集めたデータと合わせて計113個体分のデータが集まった。これらを用いてメトリック学習を行ったところ、85.1%のテストデータで正しく個体判別ができた。目視による個体の判別には膨大な時間を要することから、本モデルの適用により大幅な省力化ができると考えられる。ニホンザルに関しては、すでに個体判別のモデルが構築されているので、サルとヒトの顔の多様性に関わる発展的な研究に着手した。ニホンジカとカモシカに関しては、学習データが膨大な分、その整理とアノテーション作業に時間を要している。しかし、シカに関してはほぼ作業を完了しており、速やかな判別モデルの作成ができる見通しである。カモシカについても引き続き作業を進める予定である。これらと並行して、空間明示標識再捕獲法に基づく密度推定手法の改良に取り組んだ。具体的には、個体識別に不確実性が伴う場合、従来のモデルがどのような推定結果をもたらすのかをシミュレーションベースで検討した。その結果、予想された通り、従来のモデルでは大きな偏りが生じることが確かめられた。このシミュレーション結果を受けて、不確実性を考慮したモデリングに取り組んだ。現時点では、パラメータ推定の収束が悪く、さらなる検討を進めているところである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現時点では、対象種によって、予想以上に進展している種と若干の遅れが生じている種が存在する。ツキノワグマに関しては、飼育されている個体の数も少なく、撮影許可が得られるかも不透明であったため、申請段階の目標は、可能な限り多くの個体から学習データを集めることが目標であった。しかし、国内で飼育されている個体のかなりの割合を撮影できたことで、深層学習モデルの構築に速やかに進むことができた。現時点でも高い精度での判別が可能になっており、野外データへの適用の道も開かれつつある。ニホンザルに関しても、本プロジェクト開始前から研究を開始していたこともあり、さらに発展的な研究へと前進できている。一方、ニホンジカとカモシカに関しては、データの処理やアノテーション作業に思いのほか時間を要している。一方で、学習データの多さは、より高精度な深層学習モデルの構築につながるため、今後のプロセスは順調に進むことが期待できる。当初の予定通り、すでに判別の不確実性を組み込んだ空間明示型捕獲再捕獲モデルの構築に取り組めており、この点でも予定通りの進捗状況といえる。これらのことから、全体としてはおおむね順調に進展していると考えられた。

今後の研究の推進方策

最終年度を迎えるにあたり,若干の遅れが認められるニホンジカとカモシカのアノテーション作業を速やかに終了させ,深層学習モデルの構築を行う。また,予想以上の進捗状況にあるツキノワグマに関しても,秋田県北秋田市で飼育されている個体の撮影をさらに行う。これらの個体を無事に撮影できれば,現在国内で飼育されている個体の大半を撮影できたことになり,極めて貴重な資料となる。また,全種に関して,実際の自動撮影カメラ映像に構築したモデルを適用する。野外データに関しては,これまでの調査によって十分なデータが集められている。深層学習モデルによる自動判別結果が,目視による判別結果と一致するかを確かめる。一致しない場合は,どのような状況で不一致が生じるのかを詳細に確認し,追加の学習を行う.さらに,個体判別の不確実性を組み込んだ空間明示型標識再捕獲法による密度推定モデルを確立する。これらの作業と並行して,これまでに得られている成果を速やかに論文としてまとめる。一部の結果に関しては,すでに執筆を開始しているが,これらに関しては,可能な限り早い段階で受理されるよう努める。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Proximity and preening in captive Humboldt penguins2024

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Yuka、Ueno Masataka
    • 雑誌名

      Behavioural Processes

      巻: NA ページ: 105032~105032

    • DOI

      10.1016/j.beproc.2024.105032

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Behavioral responses of solicitors after failure to receive grooming in <i>Macaca fuscata</i>2023

    • 著者名/発表者名
      Ueno Masataka、Yamada Kazunori、Nakamichi Masayuki
    • 雑誌名

      American Journal of Primatology

      巻: 85 ページ: e23491

    • DOI

      10.1002/ajp.23491

    • 査読あり
  • [学会発表] 房総半島における草食動物3種の密度の劇的な変化:状態空間RESTモデルによる推定2024

    • 著者名/発表者名
      神田有香音,矢島豪太,中島啓裕
    • 学会等名
      第71回 日本生態学会大会
  • [学会発表] 方向統計学とベイジアンノンパラメトリクスによる野生動物のactivity patternの推定2024

    • 著者名/発表者名
      矢島豪太,中島啓裕
    • 学会等名
      第71回 日本生態学会大会
  • [学会発表] 自動撮影カメラを用いた野生動物の密度の長期・広域モニタリング手法の確立2024

    • 著者名/発表者名
      中島啓裕
    • 学会等名
      第71回 日本生態学会大会
  • [学会発表] 自動撮影カメラによる密度推定の自動化:深層学習による動物の移動速度情報の取得2024

    • 著者名/発表者名
      羽部優衣,矢島豪太,中島啓裕
    • 学会等名
      第71回 日本生態学会大会
  • [学会発表] 野生動物の気象への応答を探る:時間点過程を基礎とした自動撮影カメラデータ解析2024

    • 著者名/発表者名
      松岡涼,中島啓裕, 宮下直
    • 学会等名
      第71回 日本生態学会大会
  • [学会発表] カメラトラップ映像解析における深層学習技術の実応用ーMegadetectorの適用例ー2023

    • 著者名/発表者名
      安藤正規・相澤宏明
    • 学会等名
      日本哺乳類学会2023年度大会

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公開日: 2024-12-25  

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