研究課題/領域番号 |
21H03656
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
吉岡 明良 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島地域協働研究拠点, 主任研究員 (80633479)
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研究分担者 |
深澤 圭太 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主任研究員 (90617101)
藤田 知弘 国立研究開発法人国立環境研究所, 気候変動適応センター, 研究員 (50725603)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 廃村 / 避難指示区域 / 耕作放棄 / 里地里山 / 生物多様性 |
研究実績の概要 |
2021年度は国立環境研究所がこれまで取得してきた全国規模の廃村調査のデータ及び福島県の避難指示区域周辺の生物分布データについて統計解析ソフトR上等で統合的に統計解析ができるように整備を進めた。2015-2020年に福島県で衝突板トラップ及びマレーズトラップで得られたチョウ類と、2015-2016年に全国の廃村における目視調査で得られたチョウ類(セセリチョウ科等の現地での同定が困難な種と外来種は除く)の共通種は21種であり、そのうち個体数や出現頻度等の観点からキアゲハやベニシジミが主な解析対象種として挙げられた。加えて、耕作放棄時の景観に関する土地利用情報として、国土数値情報の土地利用図等を収集した。国土数値情報による土地利用図は1976年に整備されたものが最も古いが、調査対象となる廃村には60年代に放棄されたものもあるため、オランダ環境評価庁(PBL)が整備したより広範な期間を網羅した土地利用モデルであるHYDE(History database of the Global Environment)3.2等の収集も進めた。 また、廃村におけるデータのみを用いて先行して行ったチョウ類と土地放棄の関係に関する階層ベイズモデルによる統計解析では、解析対象となった43種のチョウのうち、キアゲハ等の13種が土地放棄によって負の影響を受けていた一方で正の影響を受けていた種は3種にとどまったこと、寒冷地を好む草原性のチョウが放棄によって負の影響を受けやすい可能性があること、「放棄の有無」が「放棄の期間」よりも説明力があること等が示唆された。この成果(Sugimoto et al. 2022)はProceedings of the Royal Society B: Biological Sciences誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの収集・整備は進んでおり、また、廃村データのチョウ類の統計解析において成果も出ていることから、順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、関連するデータのさらなる収集整備とともに、解析が先行しているチョウ類を対象に福島県の避難指示区域で取得されたデータと全国廃村で取得されたデータの統合的な統計解析を進め、より広範な範囲で耕作停止が起きた場合も含めて耕作放棄・停止の期間の影響や、耕作放棄前の景観の影響等を検討することで頑健な知見を得ることをめざしたい。
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備考 |
研究分担者の一人である深澤圭太主任研究員が所属する国立環境研究所の報道発表WEBページであり、廃村とその周辺の集落の調査によって土地管理放棄がチョウ類にもたらす影響を評価した研究成果を広報するものである。
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