研究課題/領域番号 |
21H03666
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
鎗目 雅 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 客員准教授 (30343106)
張 政陽 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (40875465)
劉 庭秀 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (70323087)
金 丹 東北大学, 東北アジア研究センター, 専門研究員 (90779753)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 電気自動車 / 次世代モビリティ / 燃料電池自動車 / イノベーション / 政策 |
研究実績の概要 |
本年度中には、4つの領域に取り組んできた。第一に日本の地方における高齢化社会がもたらす交通課題への対応を目指した次世代モビリティの社会実証に着目し、どの地域にいかなる技術が導入されて、いかなるモビリティ・サービスが提供されているのかを可視化するために全国の視点からデータベースを構築し、内容を分析した。また、主要なステークホルダーへ聞き取り調査およびアンケート調査を行うことで、次世代技術の普及拡大を阻害する要因を検証し、打開策を抽出した。第二に、中国における使用済みのEVバッテリーの回収・リサイクルの市場形成に向けた可能性と課題について、経済、政策、制度的な観点から検討を行った。その成果に関しては、中国・広州において開催されたRematec Asia 2023で報告を行った。第三に、リチウムイオンバッテリーリサイクル技術の一つとして水熱有機酸浸出プロセスの共同開発に取り組んできた。通常の酸浸出プロセスで用いられる過酸化水素等の還元剤及び硫酸などの酸化剤を有機酸(酢酸、クエン酸、グリシン)に置き換え、リン酸鉄リチウム電池の正極材料からリチウム、鉄、リンを同時に熱水浸出可能なプロセス開発に成功したとともに、クエン酸の優位性を明らかにした。成果は国際学術誌Advanced Sustainable Systemsに投稿した。第四に、22年度に行った日中韓の次世代自動車バッテリーの国家戦略と技術動向の分析結果を中心に、中国における使用済みバッテリー(リチウムイオン)の発生予測、リユース及びリサイクルの環境影響評価を行った。また、使用済み自動車の水平リサイクルの国際動向を調査し、日本マクロエンジニアリング学会、日本金属学会で口頭発表した。第五に、中国において電動車の航続距離の向上や、スマート機能、コネクテッド・運転支援機能の搭載が進んだことについて資料収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りにデータ収集および成果発表ができた。
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今後の研究の推進方策 |
24年度中には、主に5つの課題に取り組んでいくことで、全期間の研究成果の統括を目指す。第一に、日本の地方が抱える交通課題解決を目指した次世代モビリティ・サービスの導入状況と課題に関するデータ収集を継続し、どのような運行体制がどのような社会的条件の下で事業化する可能性が高まるのかについて検証し、成果を国際学術誌に投稿する。第二に、中国における電気自動車から排出される蓄電池のリユース・リサイクルのシステムの構築に向けた課題と可能性について、さらに検討を行う。特に重要な課題として、様々なステークホルダーにおけるデータの収集・共有のためのプラットフォームの形成について検討を行い、その研究成果を発表する。第三に、マレーシアで開催される第13回アジア自動車環境フォーラムに出席し、次世代自動車の開発と普及に向けた各国の政策・技術動向を把握する。同会議にて日中韓における自動車用バッテリー開発と普及に関する政策比較、脱炭素と循環経済社会形成に向けた使用済み自動車由来の廃プラの特徴分析結果について研究成果を発表する。第四に、23年度に行ったコロナ後の日中韓の自動車産業の政策動向と自動車性能の向上に関して資料収集を継続し、その研究成果を発表する。第五に、電気バスの足回り部分及び蓄電池を解体し、素材調査を行う。23年度に得られたモーターの組成情報を加え、銅やリチウム、ニッケルに着目してこれら資源の採掘、素材生産から再生利用に至るまでの全ライフサイクルにおける物資の流れならびに環境負荷を定量的に分析する。物質循環と環境影響の視点から、電気自動車の普及に向けた戦略の影響を明示し、自動車部門の脱炭素化経路を検討する。関連成果を8月及び11月に開催される国際学会で報告するとともに、国際学術誌に投稿する。
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