研究課題/領域番号 |
21H03688
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山越 言 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (00314253)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 野生生物保全 / アフリカ / 人獣共通感染症 / 里山 / 自然保護区 / 観光 / 農作物被害 |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルスをはじめ各種人獣共通感染症が蔓延する昨今、人と野生動物の距離と関係を問い直すことは喫緊の課題である。人類史の中で、人はさまざまな方法で野生動物に接近してきた。本研究は、西欧近代の発展のなかで誕生し、野生動物研究や観光というかたちで今日の野生動物問題の核心を形成する、「野生動物への近接欲望」に注目する。現在、人と野生動物とが接する現場となっている自然保護区やその周囲の人為的環境(里地里山)では、ローカルな仕組みにグローバルな価値間が介入してさまざまな対立が生じている。これらの現場において、人と野生動物との適切な距離を検討するために、アフリカおよび日本において、フィールドワークに基づく調査を行った。 研究代表者は、焦点調査地であるギニア・ボッソウ地域において5年ぶりとなる現地調査を行い、今後の現地調査に関する現地協力機関との協議や、研究・観光の対象となってきた野生チンパンジー個体群の人口学データおよび行動観察を行った。2014-16のエボラウィルス病、2020-22のCovid-19と感染症が続き、観光・研究による人為的攪乱が減少したにもかかわらず、個体数の減少が止まらない現状への対処について、慎重な検討が必要である。 研究協力者の西原、大坂は、ガボン・ロペのマルミミゾウによる、人為的環境の利用の現状について現地調査を開始した。ゾウの保全と農作物被害の軽減をいかに両立するかについて、興味深い研究成果が期待できる。研究協力者の花村は、山口県周防大島町の大水無瀬島に人為的に導入されたニホンザルの歴史と現状に関する現地調査を軌道に乗せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に実施できなかった現地調査を、本年度は渡航規制が緩和された夏以降に、アフリカの焦点調査地およびアフリカ・国内の対照調査地において実施することができた。実施が遅れた分、また、Covid-19による研究中断の影響の分、現地調査に関しては今年度が実質な初年度となったが、昨年度の文献調査等の進展を合わせ、順調な進展であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
焦点調査地ギニア・ボッソウにおいては、2022年度調査で目処がついた現地調査を継続するとともに、人慣れの進行に関する歴史資料の分析を進める。 ガボン・ロペにおいては、研究協力者大坂による現状調査を進めるとともに、利用可能な1990年代以降の文書および映像資料の文責を開始する。 研究協力者花村による、大水無瀬島での調査を継続し、同島に現在生息するニホンザル個体群の導入以前の履歴に関する聞き取り、文献調査を継続する。 そのほか、実施可能な調査地での調査を検討するとともに、参画研究者による研究会を行い、研究地間の比較についての議論を深める。
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