研究課題/領域番号 |
21H03691
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
齋藤 剛 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (90508912)
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研究分担者 |
小田 淳一 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (10177230)
吉田 早悠里 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (20726773)
苅谷 康太 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (70634583)
佐藤 健太郎 北海道大学, 文学研究院, 教授 (80434372)
中尾 世治 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教 (80800820)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 北部アフリカ / イスラーム / イスラーム化 / 知識 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
令和4(2021)年度は、新型コロナウィルス感染拡大が世界的に終息を見せない状況の中、各自がそれぞれすでに収集を進めていた資料などを主に活用した研究、渡航が可能な国における資料収集・現地調査などを進め、次年度以降の研究発展に向けた準備を進めた。科研の国内研究会においては、吉田、中尾が研究成果発表を行った。吉田は、エチオピア南西部カファ地方を対象とした民族学的研究の第一人者であるF.J.ビーバーが残した資料のアーカイヴズ化とその活用を、オーストリア科学アカデミー・デジタル人文学遺産センターと協力しながら、近年集中的に進めている。本科研班ではその研究成果と、エチオピア南西部における聖者の活動をめぐる吉田の実態調査の結果を交錯させつつ研究を進めた。中尾は、西アフリカ・ブルキナファソにおけるイスラーム化をめぐる歴史人類学的取り組みと合わせて、西アフリカにおけるイスラーム化をめぐる理論を提示したことで知られるウィルクスの議論(平和主義的なイスラーム化)を再検討に付した。この研究は次年度(令和4年度)にさらに発展をさせる方向で構想されており、本研究課題における重要な柱の一つと位置付けられる。 また、アーカイヴズ研究を進めている吉田の研究はアラビアンナイトのフランス語への翻訳で知られるマルドリュスの遺稿の分析を進めている小田の研究とも交錯するものであり、資料の分析方法をめぐる理論的検討を研究班として進めていくことが可能である。同時に、民話や文字資料の分析方法をめぐっても、刈谷、小田は修辞などに着目をしながら分析・研究を進めてきており、今後、研究班においてさらに研究を発展させていく上で重要な論点が本年度の研究から浮かび上がっている。これら以外にも佐藤は契約文書の分析に関する研究成果を共に講演を実施しているほか、齋藤はイスラーム化を文明論と結び付けて論ずるべく理論面での研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4(2021)年度は、新型コロナウィルス感染拡大が世界的に終息を見せない状況の中、2021年度には各自がそれぞれすでに収集を進めていた資料などを主に活用した研究、渡航が可能な国における資料収集などを進め、次年度以降の研究発展に向けた準備を進めた。 科研の国内研究会においては、吉田、中尾が研究成果発表を行ない、吉田がアーカイブズ研究と資料分析をめぐる理論的・実証的検討をすすめたのに対して、中尾は西アフリカのイスラーム化をめぐる歴史人類学的研究を、先行研究において提示された理論の再検討に視野を拡大させた議論を提示している。これらの二つの方向性は、人類学、歴史学、情報学を専門としつつ、北部アフリカにおけるイスラーム化についての研究を進めていく本研究課題における資料の扱い方をめぐる重要な論点であり、本年度の研究展開に寄与する重要な貢献であった。そのような方向性は、佐藤、苅谷の問題関心とも重なるものであり、本研究班の間での共通の問題意識の深化にも資するものである。 小田は、自身がこれまで手がけてきたレユニオン島のクレオル民話を対象として「民話の語り手がどのような修辞を用いるのか」という主題について研究を進めた。これは北部アフリカにおける異教徒間の交渉に関心を寄せる本研究課題、そして小田の本研究課題における中心的な課題であるラモン・リュイの研究にも応用可能な修辞法をめぐる分析である。齋藤はイスラーム化を文明論と結び付けて論ずるべく理論面での研究を進めた。また、吉田は、「エチオピアにおける歴史認識の形成/再編成をめぐる動態的メカニズムの解明にむけた実証的研究」によって所属先の名古屋大学において第10回石田賞を受賞している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の対策については、まず北部アフリカにおけるイスラーム化をめぐって長地域的なネットワークを媒介として宗教的知識のローカル化の実態に関する研究を引き続き進めていく。西アフリカ南部、ブルキナファソについては中尾のこれまでの研究蓄積をふまえて、西アフリカにおけるイスラームの平和理の波及をめぐる理論を提示したウィクルスの調査・研究とマルハバ・サノゴなどインフォーマントたちの間でのイスラーム化をめぐる理解の形成がいかにして進んだのかをより詳細に検討してく。このために、中尾は、アメリカのノースウェスタン大学に保管されているウィルクスをめぐる資料の精査と分析に今後取り組む予定である。小田は、ラモン・リュイに関する資料の収集と分析を継続して進めてゆくほか、知識のローカル化において重要になる修辞をめぐってインド洋海域世界での研究の蓄積を援用しつつ研究を進めてゆく。
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