研究課題/領域番号 |
21H03700
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青山 和佳 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (90334218)
|
研究分担者 |
受田 宏之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20466816)
中西 徹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30227839)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 有機農業 / フィリピン / メキシコ / 日本 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
2年目にあたる2022年度は、新型コロナウィルスの流行により前年度(初年度)に実施が困難であった対面調査を日本、フィリピン、メキシコにおいて様子を見ながら開始した。また、初年度に行っていた文献調査やオンライン調査なども継続し、下記のような成果を得た。 (1)放送大学における教科書『現代国際社会と有機農業』を発行した。本テキストでは、グローバル社会における有機農業の意義、フィリピン、メキシコ、日本、イタリアの事例が紹介された。(2)(1)に関連し、放送大学での授業やホームページを通じて、広く一般に研究成果を還元するよう努めた。(3)フィリピンにおいて、有機農業者、都市貧困層への対面の個別訪問調査、MASIPAG(NGO)、フィリピン稲作研究所(PhilRice)、フィリピン大学ロス・バニョス校における対面の聞き取りと討論を実施、国際開発学会で報告を行った。(4)メキシコにおいて有機農業者にインタビューや参与観察調査を行い、国際開発学会において報告を行った。(5)土地を耕すというモチーフのもとにフィリピン若手研究者と実施したオンライン公開セミナーの結果をとりまとめ、国際学会(Philippine Studies Conference in Japan)で報告し、日本語・英語・ビサヤ語のトリリンガルでブックレットを刊行した(東京大学ヒューマニティーズセンター)。(5)フィリピンで農村出身の女性についてライフヒストリーのインタビューを行い、その内容をビサヤ語(原語)と日本語(翻訳)でワーキングペーパーとして発表、現地大学の学術会議で報告を行った。(6)本プロジェクト企画時において調査対象と予定していた有機農園のひとつ(ミンダナオ)がコロナ禍により閉鎖されたことが明らかになったため、その経緯とこれからの展開について確認するように努め、次年度以降の調査に備えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの流行により、申請当時に計画していた現地調査(フィールドワーク)を昨年度はまったく行うことができなかったところ、本年度よりそれらが可能になり、キャッチアップしているとことである。とはいえ、個々のフィールドにより、コロナ禍からの回復のあり様はさまざまであり、フィールドへの再統合にはカウンターパートの主体性と意思を尊重し、慎重に進める必要があるため、計画を柔軟に見直しながら進めている。一方で、昨年度より今年度にかけて文献調査やオンライン活動に時間をかけることができたため、予想外の成果(教科書やブックレットの出版や授業の提供、学会報告)をあげることができた面もあり、その意味では研究は進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの流行とその影響は、予測不能なものであったため、当初計画の遂行にこだわりすぎず、関係者全員の安全とカウンターパートとの関係性を重視し、柔軟に、あせらず研究を進めていくのが最善であるという姿勢を続けていきたい。必要な場合は、前年度と同様に、文献調査、SNSやZOOMを活用とした面接調査も継続する。現地調査が可能な場合でも、現地関係者と連絡をとりながら、相互の安全や安心を確認し、慎重に進めていくこととしたい。 昨年度にすでに懸念していたことであるが、調査予定としていた農園のなかには、地域社会ベースの有機農園を経営するばゆえに、経営困難(ロックダウンなどによる販路の遮断など)に陥り、その影響から回復途上であったり、あるいは回復できずに閉鎖するケースがでている。そのため、新型コロナウィルス流行が収束したあとも、農園側に過度の負担にならないような調査方法を探っていくことが今後も必要である。また、必要に応じて、本プロジェクトの目的に合致するような新しい事例を探すことも継続していく。
|