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2022 年度 実績報告書

出移民史を通じた次世代育成のための地域密着型パブリック・ヒストリーの構築

研究課題

研究課題/領域番号 21H03712
配分区分補助金
研究機関京都外国語大学

研究代表者

河上 幸子  京都外国語大学, 国際貢献学部, 准教授 (30586730)

研究分担者 河原 典史  立命館大学, 文学部, 教授 (60278489)
和泉 真澄  同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (00329955)
KIRK STANLEY  甲南大学, 全学共通教育センター, 准教授 (50516979)
松田 法子  京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (00621749)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード出移民史 / パブリック・ヒストリー / デジタル・アーカイブ / カナダ移民 / 和歌山 / 三尾 / アメリカ村
研究実績の概要

令和4年度は、和歌山県美浜町三尾地区のカナダミュージアム三尾たかえ館長と連携しながら、パブリック・ヒストリー実践や調査活動を精力的に実施した。また松田法子氏が研究分担者として加わったことで、三尾集落内の渡加者をめぐる土地所有者データと地図とを紐づけたデジタルマップの構築も進んだ。さらにカナダ側の共同研究「From Mio」のメンバーとバンクーバー島にて初めて対面で会合をおこない、今後の研究の進め方を議論できた。
グランフォークスと三尾出身者に関する調査研究および古写真帖の復刻版の出版企画(河原、河上)、そしてルーツ探し訪問客対象のデジタルアーカイブ構築に向けたカナダミュージアムとの共同調査およびデータ整備(河原、松田、河上)に加え、下記の取組も実践した。
ミュージアム展示については、日系ナショナルミュージアムによる日系カナダ人の戦時没収に関する展示 “Broken Promises”の日本巡回展実施にまつわる諸交渉(和泉、河原、河上)や三尾からの出移民とその住居にまつわる展示の企画構想と調査研究(松田)があげられる。また、パブリックヒストリー次世代育成プロジェクトについては、日加にまたがる松永家のファミリーヒストリー調査および当該家族の漁船を展示するキャンベルリバーミュージアムとカナダミュージアムとの架橋(Kirk、河上)、地域の歴史を英語で学ぶ語り部ジュニアへのネイティブ支援と学びの可視化(Kirk)、学校向けフィールドワーク教材およびまち歩きマップの語り部ジュニア講師との共同開発(河上)、三尾からの出移民研究に取り組む大学院生へのアドバイジングと研究支援(河上、和泉)となる。翻訳プロジェクト(Kirk)では、『アメリカ紀州人材録』、『和歌山県人 海外人材録』、『 加奈陀(カナダ)同胞発展大鑑』、『同胞人物観』の三尾にかかわる部分の日英翻訳を地域の翻訳者と実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本科研の研究目的となっているデジタル・アーカイブの構築については、科研の研究成果として研究者だけで一時的なものを作るよりも、町側のシステム上との接合が可能で、なおかつ地域に根付き活用されるための設計がなされたものを構築する必要があるという判断に至った。そのため、本科研の終了期間までにデジタル・アーカイブの構築をゴールにすることはせず、三尾からの出移民に関するデータ収集と整理、町や地域への働きかけおよび情報共有に注力し、実際の構築作業については、期間を延長して別の財源を確保し実施するよう軌道修正がなされた。
実際に、カナダミュージアムを運営するNPO法人日ノ岬・アメリカ村の理事会での定期的な報告を行い、7月には美浜町議会議員対象の研修会の場でも本科研研究の趣旨説明をおこなった。しかし一方で、町行政との接続は容易ではない側面も見えてきたため、今後の研究の方向性としては、国内の他のカナダ移民母村とのネットワークも同時に構築し、行政と連携して研究成果を教育観光の誘致にも結び付けるなかで、デジタル・アーカイブ構築も具体化していく方向性が今年度、議論された。
なお、今年度、在外研究中であった和泉については、三尾を中心とした活動にはあまり関われなかったが、カナダ側の研究者に日本側の研究者の日本語での研究実践の概要を英語で発信する取り組みを実施した。在外期間中は第二次世界大戦中の連合国における日系人の体験を比較分析する国際共同研究プロジェクト「Past Wrongs Future Choices(PWFC)」の客員研究員としてビクトリア大学に在籍し、研究交流を行なった。このPWFCとの連携は、”Broken Promises”の日本巡回展示企画や、和泉が研究代表者となり本科研の研究代表者および分担者も加わって戦時中の日系人の経験に焦点をおいた「海外連携研究」に申請する流れにもつながった。

今後の研究の推進方策

今後の方策としては、上記に述べたように、三尾での実践を他府県の関係者とつなげていく取り組みや、実践してきたパブリック・ヒストリープロジェクトの発信をおこなっていく。
具体的には、令和5年度のカナダ学会で河原を中心に企画セッションを設け、他府県のカナダ移民母村の役場関係者や移民関連の活動をしている市民とつながる取り組みを実施する。さらに、滋賀の平和祈念館で11月から”Broken Promises"の巡回展示がはじまるのにともない、滋賀と和歌山の移民母村をつなげる交流企画を和泉とKirkが担当する。
一方、カナダの共同研究者および日系コミュニティとの交流については、2023年10月5日(木)~8日(日)に第二回世界和歌山県人会が県をあげておこなわれる予定で、この機にあわせて来日する関係者とも交流をおこなう。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)

  • [国際共同研究] North Island College(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      North Island College
  • [国際共同研究] University of Victoria(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      University of Victoria
  • [雑誌論文] 移民と観光:和歌山県アメリカ村とルーツ・ツーリズム(原文 韓国語)2023

    • 著者名/発表者名
      河上幸子
    • 雑誌名

      東アジア海域の移住と社会

      巻: ー ページ: 361-384

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 京都府伊根浦における地域振興の試み2022

    • 著者名/発表者名
      河原典史
    • 雑誌名

      地域漁業研究

      巻: 62 ページ: 31~40

    • DOI

      10.34510/jrfs.62.1_31

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 記録を残すー100年前のスペイン風邪に学ぶー2022

    • 著者名/発表者名
      河原典史
    • 雑誌名

      立命館大学学生サポートルーム報告書

      巻: 14 ページ: 1-2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] バンクーバーにおける日本人移民社会とスペイン風邪 : 日本語新聞『大陸日報』からの分析2022

    • 著者名/発表者名
      河原典史
    • 雑誌名

      立命館言語文化研究

      巻: 34 ページ: 31-44

    • DOI

      10.34382/00017783

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] カナダ・バンクーバーにおける日本人移民の家内労働 : 20世紀初頭におけるガーディナーの萌芽2022

    • 著者名/発表者名
      河原典史
    • 雑誌名

      立命館言語文化研究

      巻: 34 ページ: 1-15

    • DOI

      10.34382/00018009

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] `International Mother, They Say`: Creativity and Self-Making in the Writing of First-Generation Japanese North American Women2023

    • 著者名/発表者名
      Andrea Mariko Grant and Masumi Izumi
    • 学会等名
      Global Talk, Signature Series, Centre for Global Studies, University of VIctoria
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 地域資源としてのカナダ移民2022

    • 著者名/発表者名
      河上幸子
    • 学会等名
      和歌山県美浜町議会議員研修会
    • 招待講演
  • [学会発表] Reassessing the 1907 Vancouver Anti-Asian Race Riot in Tras-Pacific Empire Studies2022

    • 著者名/発表者名
      Masumi Izumi
    • 学会等名
      Organization for American Historians, Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] What Can Transnational History Do?: On Archiving and Reading Japanese American Experiences in the "Tule Lake Stockade Diary," 1943-19442022

    • 著者名/発表者名
      Masumi Izumi
    • 学会等名
      Past Wrongs Future Choices Sholars Residency Talk, Department of History, University of Victoria
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 和歌山県日高郡美浜町三尾集落の空間構成について 紀伊半島の漁村・海付集落に関する史的研究 その 52022

    • 著者名/発表者名
      松田法子
    • 学会等名
      日本建築学会
  • [学会発表] 和歌山県日高郡美浜町三尾集落の民家建築について 紀伊半島の漁村・海付集落に関する史的研究 その 62022

    • 著者名/発表者名
      上野稔季・松田法子
    • 学会等名
      日本建築学会
  • [学会発表] 和歌山県日高郡美浜町三尾集落の宅地空間について 紀伊半島の漁村・海付集落に関する史的研究 その 72022

    • 著者名/発表者名
      森崇太・松田法子
    • 学会等名
      日本建築学会

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公開日: 2023-12-25  

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