本研究は、避難民のジェンダーエンパワメントについて、効果的な支援を行うための知見を得るため、「避難民のジェンダーエンパワメントに社会関係資本をどのように活用できるか。」という問いに答える。バングラデシュなど近隣の国に逃れたロヒンギャ難民と、バングラデシュ南西部の都市スラムの住民を主な対象として、①避難民のジェンダー不平等に関する実態把握、② 避難後の社会関係資本(相互扶助ネットワーク)の形成過程とジェンダーエンパワメントへの効果、③避難民と支援団体との関係性、といった具体的な課題の解明に取り組む。これにより日本を含め各国が取り組む避難民支援に資する政策的示唆を得ることを目的とした調査研究を進めている。 2021年度は、4年間の計画で調査研究の第1段階とし、バングラデシュクルナ県におけるスラムと農村地域において、ジェンダー不平等と社会関係資本の実態把握を目的とした調査を実施した。渡航して現地調査を行うことができなかったため、現地NGOに依頼し、こちらから指定した質問紙を用いて調査を委託した。現地NGOの協力により遠隔調査で収集したとクルナ県の都市スラムの避難民、および比較対象である農村のジェンダーに関する行動と意識に関するデータを収集した。具体的には、社会関係資本の形成状況や、関連するステークホルダー(隣人や支援団体など)の間でどのような相互集団行動が成立しているのかという点と、ジェンダー不平等の状況について情報を得た。
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