本研究では、災害や貧困、迫害から逃れて移住をする避難民のジェンダー不平等について実態把握を行う。その際、新たな居住地で社会関係資本を形成し、関連するステークホルダー(隣人や支援団体など)の間でどのような相互集団行動が成立しているのかに着目し、ジェンダー不平等の状況と社会関係資本との関係性を明らかにする。その上で、避難民のジェンダー不平等を改善するためにどのように社会関係資本やステークホルダーの相互集団行動を活用できるかという向上メカニズムを検討し、政府やNGOへの政策提言を目指す。 2022年度には、昨年度に収集した都市スラム住民と、農村住民のデータのとりまとめを行った。収集したデータには、居住地での社会関係資本の形成状況、ステークホルダー(隣人や支援団体など)の相互集団行動、ジェンダー不平等の状況に関する情報があり、これらの関係に関する分析を進め、国際学会での報告を行った。得られた成果は、国際学術誌に投稿中である。また、これらと並行して、過去に収集した関連データをとりまとめ、国際誌に論文を掲載した。 さらに、2022年度には、もう一つの事例であるロヒンギャ難民を対象とし、ジェンダー不平等と社会関係資本の実態把握を目的とした調査を実施した。申請当初は、コックスバザール県のロヒンギャ難民地帯の調査も予定していたが、パンデミックを含む状況の変化により、ロヒンギャ難民の事例についてはまずネパールで調査を行うこととした。2022年度末にネパールのロヒンギャ難民を対象とした情報も収集し、データクリーニングを進めている。
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