研究課題/領域番号 |
21H03734
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
二宮 啓 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10402976)
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研究分担者 |
チェン リーチュイン 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40585577)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 真空エレクトロスプレー / 液滴イオン / 短パルス化 / 二次イオン質量分析 |
研究実績の概要 |
我々は以前の研究で水溶液を真空下でエレクトロスプレーすることによって発生させた液滴イオンをビームとして利用する真空エレクトロスプレー液滴イオン(VEDI)ビーム技術を開発した。このVEDIを二次イオン質量分析(SIMS)の一次ビームとして使用すると、比較的大きな有機化合物でも分解することなく極めて高い効率でイオン化できる。そのためVEDIビームをSIMSの一次ビームとして実用化できれば、分析性能が大幅に向上することが見込まれる。一般に市販の有機用SIMS装置では、飛行時間(TOF)型の質量分離部が採用されTOF-SIMSと呼ばれる。TOF-SIMS装置では一次ビームを短パルス化して試料に照射する必要があるが、VEDIビームは短パルス化には不向きである。そこで本研究では、液滴イオン発生部を短パルス化するという新しい発想のもとパルスソース型VEDIビーム技術を開発し、それをTOF-SIMSの一次ビームとして利用するための研究開発を行っている。 2022年度においては、真空下のエレクトロスプレーによって発生する液滴イオンのサイズと電荷がスプレーを発生させるキャピラリーの先端内径にどのように依存するかについて研究した。先端内径が5、10、15ミクロンのシリカキャピラリーで液滴イオンを発生させて平坦な試料に照射し、1つ1つの液滴イオンが試料表面に衝突したときの衝突痕を原子間力顕微鏡で観測した。5ミクロンのキャピラリーでは衝突痕クレータの直径が50nm以下と小さく価数も数10程度と低いものであったが、10や15ミクロンでは直径が50から200nm程度の衝突痕クレータが観測され価数も数100から数1000と高いことがわかった。これらの結果から液滴イオンのサイズや価数はエレクトロスプレーを発生させるキャピラリーの先端内径に大きく依存することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、液滴イオンを発生させるソース部に用いるシリカキャピラリーの先端内径を5、10、15ミクロンと変えたときに、液滴イオンのサイズや電荷がキャピラリーの先端内径にどのように依存するかについて詳細に調査した。その手段として先端内径の異なるシリカキャピラリーに水溶液を流しつつ一定の高電圧を印加して液滴イオンを発生させ、その液滴イオンビームを平坦なポリマー試料に一定のドーズ量で照射し、1つ1つの液滴イオンが試料表面に衝突したときの衝突痕の形状や数を原子間力顕微鏡で観測した。その結果を解析すると、5ミクロンのキャピラリーで発生する液滴イオンのサイズは数10nm以下と小さく価数も数10程度と低いことがわかり、一方10や15ミクロンのキャピラリーでは液滴のサイズが数10nm以上と大きく価数も数100から数1000と高いことが判明した。これらの研究結果から、液滴イオンのサイズや価数はエレクトロスプレーを発生させるキャピラリーの先端内径に大きく依存することがわかり、VEDIビームをTOF-SIMSで有効に活用するための貴重な情報が得られたと考えられる。またパルスソース真空エレクトロスプレー液滴イオン銃の試作に向けたパーツ設計も順次進めていることから、おおむね当初の計画通りの研究開発を遂行できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、パルスソース真空エレクトロスプレー液滴イオン(P-VEDI)を飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)装置の一次ビームとして利用することを想定して試作装置の構築と性能調査を行う。以前の研究で開発したVEDI銃のイオン源を独自に設計・試作したときに培ったノウハウを生かし、小型でメンテナンスのしやすいP-VEDI銃を構築する。構築したP-VEDI銃については、まず大気圧下でパルスイオン源部の動作チェックを行って、100ns以下の短時間でも液滴イオンが発生することを確認したのち、真空下においてもパルスイオン源単独で液滴イオン発生テストを実施する。さらにはイオン源に設置した先端内径10ミクロンのシリカキャピラリーに100ns以下の短時間だけ高電圧パルスを印加して液滴イオンを発生させ、その高電圧パルスをスタート信号として液滴イオンの飛行時間測定を実施するとともに、真空での極短パルス液滴イオン発生メカニズムについても研究する。メカニズム解明に向けては、以前に金属針を用いるエレクトロスプレーである探針エレクトロスプレーにおける帯電液滴発生の瞬間を高輝度なパルスレーザによって可視化し、帯電液滴発生メカニズムの解明に携わった山梨大学のチェンリーチュイン准教授が研究分担者として協力する。
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