研究課題/領域番号 |
21H03739
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
三村 功次郎 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40305652)
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研究分担者 |
河村 直己 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光推進室, 主幹研究員 (40393318)
保井 晃 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光推進室, 主幹研究員 (40455291)
魚住 孝幸 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80295724)
水牧 仁一朗 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光推進室, 主幹研究員 (60360830)
光田 暁弘 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20334708)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | X線分光 / ベイズ推定 / 不純物アンダーソン模型 / 希土類化合物 / 電子状態 |
研究実績の概要 |
Eu 4f-5d電子間のクーロン斥力 (Ufd) は、近年報告された価数揺らぎに起因した新奇量子臨界現象の鍵であり、その定量評価が急務である。本研究では、共鳴硬X線光電子分光 (共鳴HAXPES),共鳴X線発光分光 (共鳴XES),部分蛍光収量X線吸収分光 (HERFD-XAS) からなる複合計測システムを構築し、Eu化合物に対して試料個体差の影響を完全に排除したスペクトル観測を行う。励起の素過程が異なる各スペクトルを不純物模型に根ざしたベイズ推定により画一的に再現し、Ufdを含む確度の高い物理パラメータを決定する。決定された物理パラメータがEu化合物の価数揺らぎ・価数転移、特に量子臨界現象の発現にいかに関与しているのか、その物理的描像を解明する。 本年度は、EuNi2(P1-xGex)2について単結晶育成を行った。光学マイクロスコープを導入し、上述した複合計測システムを構築するSPring-8 BL09XUの高エネルギー分解能HAXPES装置に組み込んだ。これにより、各種計測における試料位置調整を正確かつ容易に行える環境を整えた。本装置にX線発光分光器を組み込むための専用架台を設計・製作した。また、対象試料の基底状態観測に向けた試験測定としてEuNi2P2単結晶試料に対するEu 3d共鳴HAXPESの偏光依存性の観測を行い、スペクトルの偏光依存性がL3吸収領域のEu2+, Eu3+ 共鳴・非共鳴エネルギーに応じて変化する様子の観測に成功した。この結果は、共鳴HAXPES偏光依存性の観測が基底状態の決定に適したツールになり得る可能性が高いことを示唆している。また、スペクトル解析については、高温のレプリカを用いた事前スイープと共役勾配法を組み合わせた効率的な数値アルゴリズムを構築し、2次光学過程である共鳴HAXPESおよび共鳴XESスペクトルを効率よく解析する環境を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って、EuNi2(P1-xGex)2について単結晶育成を行った。試験計測として、EuNi2P2に関して共鳴HAXPES実験を実施し、L3吸収領域においてEu 3dスペクトルの多重項構造の偏光依存性が励起エネルギーにより変化する様子を初めて観測した。この結果は、共鳴HAXPESスペクトルの偏光依存性の観測が、Ufdの決定はもとより、系の基底状態における波動関数を決定する上で更なるツールになり得る可能性を期待させるものである。 計測系については、光学マイクロスコープの導入で、各種計測における試料位置調整を正確かつ容易に行える環境を整えられた。複合分光計測を行う上で最も重要となるのは、X線発光分光器を共鳴HAXPES装置に組み込み、整備・調整を実施することである。そのため、X線発光分光器の設置用架台を設計・製作し、放射光を利用した調整や試行実験を進めるための準備を整えた。 また、計算環境の構築については、上述したように順調に進行しており、令和4年度にワークステーションを導入することで計算環境が完成する見込みである。 以上から、進捗状況を「概ね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
製作した架台を利用して複合分光計測システムを構築する。放射光を用いて本システムの調整・性能評価を行った後、SPring-8 BL09XUの光学系とHAXPES制御系、XES制御系を同期制御した複合自動計測化を達成させる。 育成・評価が完了したEuNi2(P1-xGex)2単結晶を用いて、同一表面に対する共鳴HAXPES, 共鳴XES, HERFD-XAS複合計測の試験測定を行う。本システムの課題が多く出てくることが想定されるため、それらを洗い出し、改善を図ることで安定した共鳴X線分光複合計測が行える環境を整える。その後、温度依存性およびT, X依存性の詳細な観測を実施することで、Eu価数およびc-f混成強度、電荷移動エネルギー、Eu 4f-5dクーロン斥力を求めるためのデータの蓄積を図る。 これまでに構築したコードを令和4年度に導入予定のワークステーションに組み込み、解析作業を本格化させる。ベイズ推定によるスペクトル解析環境を整え、前段落の各種物理パラメータを解析者の主観に依らない形で決定し、より正確な物理量の考察を可能にする。 また、種々のEuT2X2単結晶 (X: 遷移金属、X: P, Si, Ge等) の育成を行い、上記と同様な方法で研究を推進する。
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