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2021 年度 実績報告書

実用表面材料開発研究のための高効率な全反射高速陽電子回折実験システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21H03745
配分区分補助金
研究機関大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

研究代表者

和田 健  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (10401209)

研究分担者 望月 出海  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (30579058)
兵頭 俊夫  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 協力研究員 (90012484)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード表面 / 陽電子 / 低速陽電子ビーム
研究実績の概要

様々な材料開発が盛んに行なわれている表面材料研究において、表面原子配列を明らかにする構造解析は重要である。陽電子回折実験は、いくつかの表面の構造解析で実績を上げてきたが、十分な陽電子ビーム強度を得るのが困難で測定に時間がかかるため、効率的な表面材料開発研究のための短時間測定の実現が望まれている。この問題を解決するために、装置直前まで磁場輸送されてくる陽電子ビームを、回折実験用に非磁場領域に高効率に取り出すシステムのシミュレーションと設計・製作を完了し,動作試験を開始した。これまでは,陽電子ビーム輸送用の磁場コイルからの磁場を、ビームラインを通すための穴を中心にあけた鉄板で遮蔽し,陽電子を下流側の非磁場領域に取り出していた。この方式だと,中心の穴で鉄板に向かってゆるやかに曲線を描く磁力線にそって陽電子の軌道は曲げられ,その多くがビーム輸送用真空パイプの壁面に衝突して失なわれてしまう。本年度は,この鉄板にかえて,真空パイプ中に磁性体薄膜を等間隔で並べてそれらを磁性体のフランジに固定したシステムの開発と動作試験を行なった。このシステムは、磁力線を局所領域で曲げてビームラインの上流側に戻すことで、方向が変化する磁場との相互作用時間を短くし、磁場による陽電子の軌道変化をおさえるものである。
また,ビームのパルス幅がそのくり返し周期に対して4桁も短い(パルス中で高密度となりすぎている)ため,高効率化によって検出器が飽和してしまわないよう,パルスをいったん電磁場でトラップしてから、TRHEPD実験用に15 keVで徐々に下流側に供給することで、このパルス幅を4桁伸長して平滑化するシステムの開発に着手した。本年度は試験用の新しい電極とチャンバーの設計と製作を行なった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

装置直前まで磁場輸送されてきた陽電子ビームを回折実験用に非磁場領域に高効率に取り出すシステムの開発に関しては、ビーム輸送用の磁場及び静電レンズの電場の計算とビーム輸送シミュレーションを行なって、設計の最適化を試みた。実際に装置を製作し、ビームラインに接続してビーム試験を行なった。非磁場領域へ高効良くビームを引き出せるようになったが、引出し後の静電レンズによるビームの収束には改善の余地があることがわかったので、静電レンズをより収束力のある磁場レンズにかえたシステムのシミュレーションによる最適化を行ない、設計・作成をした。
15 keVのビーム供給が可能なパルス幅伸長システムの開発に関して、課題となっているのは、各パルスをトラップするための電極の放電である。真空中の高電圧放電は、陰極側のトリプルジャンクション(碍子/接続金属/真空空間の3つの境界)の金属面からの電界放出電子によって碍子表面が帯電し、これが成長することによって生じると考えられる。この現象は、各部品形状や表面の状態、真空度など複雑な要因によって生じるもので、シミュレーションのみで解決できる単純なものではない。本研究課題で開発する電極は大型となり試行錯誤が必要となるため、まずは、放電が起こらないよう配慮をした電極とチャンバーを、電場分布の計算を行なって確認をした上で設計し、装置を実際に試作した。
また、新しいパルス幅伸長システム用の高電圧フローティング電源の構成の検討を進め、必要なモジュール類の手配を開始した。
全反射高速陽電子回折実験の効率化に必須の解析プログラムの整備を進めた。
ビームライン全体の陽電子回折実験以外の実験とのシステムの共存のために、ビーム輸送電源の制御システムを整備し、ビーム輸送パラメータの高い再現性を確保すると共に、より精緻なビーム軌道制御を可能にすることで、高効率な実験が可能となった。

今後の研究の推進方策

今年度改良をした、磁場輸送されてくる陽電子ビームを回折実験用に非磁場領域に高輝度で取り出す新しいシステムを用いたビーム試験を行なう。
ビームのパルス幅伸長システムに関しては、今年度作成したトラップ電極の試作品を用いて、真空排気試験と電圧印加試験を行なう。また、新しいパルス幅伸長システム用の高電圧フローティング電源のシステムを組上げて、動作試験を開始し、その結果を見ながら、実際のビームラインへの実装の検討を進める。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Data-driven sensitivity analysis in surface structure determination using total-reflection high-energy positron diffraction (TRHEPD)2022

    • 著者名/発表者名
      Hoshi Takeo、Sakata Daishiro、Oie Shotaro、Mochizuki Izumi、Tanaka Satoru、Hyodo Toshio、Hukushima Koji
    • 雑誌名

      Computer Physics Communications

      巻: 271 ページ: 108186~108186

    • DOI

      10.1016/j.cpc.2021.108186

  • [雑誌論文] Positronium emission from GaN(0001) and AlN(0001) surfaces2021

    • 著者名/発表者名
      Kawasuso A、Maekawa M、Miyashita A、Wada K、Nagashima Y、Ishida A
    • 雑誌名

      Journal of Physics B: Atomic, Molecular and Optical Physics

      巻: 54 ページ: 205202~205202

    • DOI

      10.1088/1361-6455/ac32a0

  • [学会発表] Cu(111)基板上ホウ素の二次元物質の構造決定2022

    • 著者名/発表者名
      辻川夕貴, Xiaoni Zhang, 望月出海, 和田健, 兵頭俊夫, 堀尾眞史, 近藤剛弘, 松田巌
    • 学会等名
      日本物理学会第77回年次大会(2022年)
  • [学会発表] TRHEPD法による銅基板上の大面積ホウ素原子シート、ボロフェンの構造解明2022

    • 著者名/発表者名
      辻川夕貴, Xiaoni Zhang, 堀尾眞史, 望月出海, 和田健, 兵頭俊夫, 近藤剛弘, 松田巌
    • 学会等名
      2021年度量子ビームサイエンスフェスタ
  • [学会発表] 低速陽電子実験施設報告2022

    • 著者名/発表者名
      和田健, 望月出海, アハメッドレズワン, 兵頭 俊夫
    • 学会等名
      2021年度量子ビームサイエンスフェスタ
  • [学会発表] 二次元ホウ化銅の構造研究2022

    • 著者名/発表者名
      辻川夕貴, X. Zhang, 堀尾眞史, 松田巌, 望月出海, 和田健, 兵頭俊夫, 近藤剛弘
    • 学会等名
      第14回 日本ホウ素・ホウ化物研究会
  • [学会発表] 低速陽電子実験施設の試料準備チェンバー整備2021

    • 著者名/発表者名
      望月出海, 和田健, アハメッドレズワン, 兵頭俊夫
    • 学会等名
      京都大学複合原子力科学研究所専門研究会「陽電子科学とその理工学への応用」
  • [学会発表] 共同利用実験のためのLEPD 実験ステーションの整備状況2021

    • 著者名/発表者名
      和田健,Rezwan Ahmed, 望月出海, 白澤徹郎, 水野清義, 兵頭俊夫
    • 学会等名
      京都大学複合原子力科学研究所専門研究会「陽電子科学とその理工学への応用」
  • [学会発表] KEK物構研低速陽電子実験施設の加速器ベース低速陽電子ビーム生成ユニットの更新2021

    • 著者名/発表者名
      和田健, 望月出海, 兵頭俊夫, 永井康介, 岩瀬広, 峠暢一
    • 学会等名
      第58回アイソトープ・放射線研究発表会
  • [学会発表] GaN(0001)表面におけるポジトロニウム生成2021

    • 著者名/発表者名
      河裾 厚男, 前川雅樹, 宮下 敦巳, 和田健
    • 学会等名
      第58回アイソトープ・放射線研究発表会
  • [学会発表] 加速器ベース低速陽電子ビームによる陽電子回折実験の現状と将来展望2021

    • 著者名/発表者名
      和田健
    • 学会等名
      日本表面真空学会 2021年度関東支部講演大会
    • 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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