研究課題/領域番号 |
21H03752
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
西中 一朗 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員 (70354884)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | α放射性同位体 / 核医学利用 / アスタチン / ラドン / ジェネレータ / 大量合成 |
研究実績の概要 |
医療用α放射性元素At(アスタチン)-211の新しい供給法となるRn(ラドン)-211/At-211ジェネレータを普及するために必要となる大量合成のためのオンライン合成分離精製装置の新規研究開発を継続して実施した。Rn-211合成と分離精製を同時に行える新しいシステムを開発している。具体的には、先行研究で開発したRn-211/At-211ジェネレータを製造する際に利用した「Rn-211合成装置」と「Rn分離精製装置」を長さ約20メートルのステンレス管で連結させた構造を持つ新規オンライン合成分離装置の設計、製作、性能試験を行う。 昨年度は、技術開発が必要な主要構成部である①「Rn-211合成真空容器」の設計、製作を行い、加えて、②「合成用加熱部」、③「Rn-211合成加熱装置」の詳細仕様、設計を検討するためのテスト実験の準備を行った。 本年度は、昨年度準備したテスト実験を実施し、その成果に基づいて、②「合成用加熱部」、③「Rn-211合成加熱装置」の詳細仕様を決定し、これら②、③装置を一体化した「Bi照射用ステージ」を製作した。 加えて、先行研究で開発したRn-211/At-211ジェネレータ装置を利用して、At-211溶液調整や基礎化学の研究を継続して実施した。薄層クロマトグラフ分析法によって、アスタチンがクロロホルム、アンモニアと相互作用することで現れるアスタチン特有な化学特性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題申請時の当初計画では、昨年度から本年度にかけて、①「Rn-211合成真空容器」、②「合成用加熱部」、③「Rn-211合成加熱装置」、④「He循環装置の開発」の主要開発部を個別に製作し、オフライン性能試験を行い、その性能評価に基づいて、改良等を実施し、高度化を図る方針であった。この方針を見直して、装置の詳細仕様、設計を検討するためのテスト実験を行うことで、新規技術開発のオフライン性能試験、装置改良の試行回数を減らし、研究開発の高経済性、効率化を図った。本年度までの開発により、ほぼすべての主要開発部のオフライン性能試験の準備が整った。 アスタチンについて基礎的な溶液化学、気相化学についての実験研究を通して、アスタチン溶存化学種、揮発性化学種の生成機構、乾式蒸留分離での熱分離特性など、アスタチンに特有な化学特性を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に準備した②「合成用加熱部」、③「Rn-211合成加熱装置」を一体化した「Bi照射用ステージ」を用いて、オフライン性能試験を実施する。その結果に基づいて、必要に応じて改良を行う。さらに加速器施設で装置全体を組み立て、オンライン性能試験に向けた準備を進める。 装置開発に並行して、これまでの研究開発で確立したTLC、HPLC分析法を駆使して、アスタチンに特有な化学的性質を基礎化学からの観点から明らかにする。加えて乾式蒸留分離での熱分離特性の観点からもアスタチンの化学を明らかにする。
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