研究課題/領域番号 |
21H03761
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
亀川 徹 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (70359686)
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研究分担者 |
丸井 淳史 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (90447516)
新津 香 (山田香) 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (50466984)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 収音方式 / 3Dオーディオ / アーカイブ構築 / 音場再生 / アンビソニックス |
研究実績の概要 |
本研究は、3Dオーディオなどの立体音響を用いて,音楽を未来に伝えるために必要となるあたらしい原理,すなわち音色や空間の再現性の原理を追求し,アーカイブ化のための収音・再生システムの具現化に向けた提案をおこなうことを目的とする。 2021年度に実施した 22.2マルチチャンネル音響の上層の再生に必要な周波数帯域の調査の結果から、下層の再生に必要な帯域は1kHz以上であることが示唆された。2022年度は、この結果を参考に上層および下層に小型スピーカを用いた23チャンネルの試聴環境を構築し、本学の展示会場などで一般の来場者に3Dオーディオ作品を公開して、その効果の検証をおこなった。また頭部運動が上下方向の違いの手がかりとなっていることをさらに検証するために,ダミーヘッドを用いて頭部を水平にした状態(右耳と左耳の角度差が0度)と左耳を15度上に傾けた状態で左右の耳に到達する信号の周波数特性の違いを調べた。その結果, 上層のスピーカからの再生音は、頭部を傾けた場合に1.5kHz以上の周波数帯域で違いが顕著に見られることが示された。 さらに2022年は、収音方式の検討としてMS方式を元に2チャンネルから3チャンネルを生成する手法を提案し、その効果について聴取実験を行い検証した。その結果、使用するコンテンツによっても異なるが、ホールの残響などの拡散音の収音には中層4チャンネル,上層4(または2)チャンネルの計9(あるいは7)チャンネルで収音したものを20チャンネルに変換することで20チャンネルの収音と同等の効果が得られることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022度はこれまで制作した3Dオーディオの作品の中から様々なジャンルの素材を用いて上層と下層の低音の再生帯域を制限した試聴環境での効果を検証した。また3Dオーディオの収音に必要なマイクロホンの本数の検証もおこない、それらの成果は2022年10月に韓国でおこなわれたICA(国際音響学会)と2023年3月の日本音響学会の春季研究会で発表した。また2023年5月におこなわれるAES(Audio Engineering Society)のフィンランドでの国際コンベンションと8月の英国で開催される国際コンファレンスにおいて講演を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
3年目の今年度(2023年度)は、2021年度の聴取実験や2022年度の再生環境の検証をおこなう。特に2022年度に明らかになった上下方向の知覚に関係している頭部の傾きによる両耳間の周波数特性の違いについてさらに検証をすすめ、聴取実験をとおして上下方向の広がり感や包まれ感と関連する周波数帯域を明らかにする。 また2022年度におこなった収音方式の検討についても、MS方式を用いたアップミックス手法の適応範囲について、実際にスタジオやコンサートホールなどでの収音をおこない、その効果について検証をおこなう。 これらの結果を踏まえ、さまざまな制作手法で作成した立体音響作品をAuro3Dなどの立体音響フォーマットによるインターネット配信をおこない,実際に一般聴取者が得られる試聴環境における3Dオーディオの効果についても検証をおこなう。
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