研究課題/領域番号 |
21H03776
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
川口 洋 帝塚山大学, 文学部, 教授 (80224749)
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研究分担者 |
黒須 里美 麗澤大学, 国際学部, 教授 (20225296)
市野 美夏 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等), データサイエンス共同利用基盤施設, 特任助教 (40376968)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 古文書画像データベース / 歴史GIS / 多変量解析 / 冷害 / 凶作 / 穀物価格 / 死亡危機 / 古天気 |
研究実績の概要 |
18・19世紀の東北地方では、宝暦・天明・天保期の冷害に伴う凶作以外にも、多数の死者が犠牲となる死亡危機が頻発したことが報告されている。しかし、死亡危機の要因は、十分解明されていない。本研究では、陸奥国会津郡金井沢村における毎日の天気と農作業を記録した「農業日記」、1坪の水田から収穫した籾の収量を記録した「作毛位付帳」、若松における穀物価格を記録した「相場書上帳」、および金井沢村周辺の死亡者を供養した寺院「過去帳」にもとづいて、古天気分析システム、「稲の作況史料」分析システム、穀物価格分析システム、および寺院「過去帳」分析システムから構成される「江戸時代の東北地方における死亡危機の要因分析システム」を構築して、気候、稲の作況、穀物価格が死亡指標に与えた影響を多変量解析によって評価する。 令和4年度には、前年度に構築した「稲の作況史料」古文書画像データベースに南会津郡福米沢村(1877-1915)と信夫郡小倉寺村(1816-1869)の史料を追加登録した。また、①1坪から収穫された籾容積の時系列変化、②各品種の株数と収量との関係を分析するプログラムを開発した。 つぎに、大沼郡横田村BB寺の「過去帳」をDANJUROを構成する寺院「過去帳」古文書データベースに追加登録した。 さらに、17世紀末から19世紀初頭の会津若松における穀物価格を10日ごとに記録した「相場書上帳」のうち、貞享5(1688)年から宝暦2(1752)年の64年分を史料入力した。本史料は、令和5年度に構築予定の「穀物価格史料」古文書データベースに登録する計画である。 研究成果は、日本人口学会大会、人文地理学会大会、奈良地理学会、歴史ビッグデータ研究会、歴史人口学セミナーで報告した。また、日本文化史研究、第54号に「作毛位付帳」の明治6(1873)年から大正5(1916)年までを翻刻・紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度に計画していた「稲の作況史料」分析プログラムの開発、寺院「過去帳」古文書画像データベースへの大沼郡横田村BB寺「過去帳」の追加登録、「相場書上帳」の史料入力、および研究成果の中間報告は、予定通り順調に進展した。 他方、「相場書上帳」を入力史料とする「穀物価格史料」古文書画像データベースの試作は、令和5年度に延期した。「相場書上帳」の史料紹介についても、研究協力者が異動したため、予定していた「福島県立博物館紀要」ではなく、令和5年度の「日本文化史研究」に掲載する予定である。 また、写真撮影を予定していた陸奥国会津郡金井沢村における天気や農作業を記録した「農業日記」などの史料は、コロナ禍のため、南会津町立奥会津博物館に出張できず、撮影できなかった。史料の写真撮影は、令和5年度に実施する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度には、令和4年度に史料入力した会津若松における米、大麦、小麦、大豆、小豆、銅銭の価格を貞享5(1688)年から宝暦2(1752)年まで10日ごとに記録した「相場書上帳」(福島県立博物館架蔵)をもとに、「穀物価格史料」古文書画像データベースを構築して、穀物価格の時系列変化や季節変化などを分析する「穀物価格史料」分析プログラムを試作する。さらに、宝暦3(1853)年から文政8(1825)年までの「相場書上帳」を入力して、「穀物価格史料」古文書画像データベースに登録する。 第二に、既開発の「稲の作況史料」古文書画像データベースから、1坪の面積を補正した籾の収量などを時系列分析する「稲の作況史料」分析プログラムを追加開発する。 第三に、陸奥国会津郡塩ノ岐村DD寺の「過去帳」を写真撮影して、史料入力する。本史料は、次年度に寺院「過去帳」古文書画像データベースに追加登録する計画である。 第四に、陸奥国田村郡守山の「守山藩郡奉行所御用留」に記録されている18世紀後期から幕末までの毎日の天気を史料入力して、古天気データベースを試作する。 第五に、明和9(1772)年から大正9(1920)年の陸奥国会津郡金井沢村における天気や農作業を記録した「農業日記」(奥会津博物館所蔵)を写真撮影する。本史料は、次年度に古天気データベースに追加登録する計画である。 今年度までの研究成果を、11月に法政大学で開催される人文地理学会大会などで中間報告するとともに、「相場書上帳」の享保7(1722)年から宝暦2(1753)年までの約30年分を、研究協力者である阿部綾子・栗原裕斗と協力して、日本文化史研究、第55号で史料紹介する。
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備考 |
前者から、本研究で開発中の「稲の作況史料」分析システムや「過去帳」分析システムなどを公開している。 後者には、第4章に黒須里美「単年パネルデーの活用と分析:同居児法からイベントヒストリー分析まで」、第5章に川口 洋「18・19世紀を対象とする人口・家族のためのデータベース・歴史GIS」、 第8章に黒須里美「皆婚社会のメカニズム」、第18章に川口 洋「人口移動からみた地域変容」が収録されている。
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