研究課題/領域番号 |
21H03786
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
和田 真 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究室長 (20407331)
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研究分担者 |
篠田 陽 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (80403096)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マウス / 身体性 / 行為主体感 / 身体所有感 / 多感覚統合 / 自閉症モデル動物 |
研究実績の概要 |
身体所有感と行為主体感から構成される身体意識についてマウスとヒトを対象に調査し、発達障害における特徴とその基盤を明らかにする計画である。 研究を始めるにあたり、令和3年度には、行為主体感を評価するための実験系の確立に取り組んだ。先行研究のレビューを行い、マウスでは行為主体感を評価するための実験系は確立されていない一方で、オペラント条件付けを基盤とした時間知覚課題は、すでに多くの研究が報告されていることが確認できたため、当初計画にもとづいて、タスクを設計した。ヒトの行為主体感に関する研究に精通した研究者との議論を経て、マウス向けタスクについて調整と検討を重ねた。そのタスクに合わせたオペラントチャンバーを発注し、現在は、予備実験に向けて調整を行っている段階である。一方、これまでの研究で培ってきたマウスにおける身体所有感の錯覚評価(ラバーテイル応答)については、自閉スペクトラム症(ASD)モデルマウスの1つShank3-KOマウスでの実験と解析を行った。既発表のASDモデルマウス(Caps2-KO)と同様に、ラバーテイル応答が少ないことから、身体所有感の障害が生じていることが示唆された一方、本マウスについては全体的な応答が弱いことも示唆された。以上の成果を、日本動物心理学会にてオンライン発表した。また、Caps2-KOマウスでのラバーテイル応答減弱について、c-Fosイメージングにもとづく解析を進め、後部頭頂皮質での感覚統合が少ないことを示唆する結果について論文発表を行った(Wada et al., 2021 Front Behav Neurosci)。 以上のように、本研究では、発達障害のなかでもASDに着目して、その身体知覚の障害について、感覚間相互作用との関連の調査を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
身体意識のうち、これまでの研究によりASDモデルマウスの一種であるCaps2 KOマウスでは、身体所有感の錯覚(ラバーテイル応答)が生じにくいことを見出していた。このときのc-Fos発現を解析した結果、当該マウスでは、感覚統合に関わる後部頭頂皮質の活動低下が見られることを見出し、その結果を論文発表した。さらに別系統のASDモデルマウスShank3-KOにおいても、ラバーテイル応答が生じにくいことも見出した。一方、行為主体感の評価については、専門家との議論を通じてタスクを設計し、実験装置の製作を行った。この実験に関して、実験開始は次年度以降となったが、全体としては概ね順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
身体意識の問題のうち、行為主体感については、マウスにおける評価系の開発を引き続き進める。昨年度、考案したタスクについて、上半期のうちに実装し、予備実験の開始を目指す。上半期中に、野生型マウスで安定的な評価が可能となった場合には、下半期にASDモデルマウスでの評価を行い、障害部位の検討に入る。一方、実験系が確立した身体所有感の評価については、行動実験の結果をとりまとめて成果発表を目指す。これまでの研究から、後部頭頂皮質の感覚統合の問題が示唆されているため、薬理学的な実験操作等についても検討を進める。
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