研究課題/領域番号 |
21H03787
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
岩木 直 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 副研究部門長 (70356525)
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研究分担者 |
梅村 浩之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究チーム長 (10356587)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | VR空間 / 道具の身体化 / 脳機能計測 |
研究実績の概要 |
本研究では,VR環境内で操作する非身体的な道具の身体化の神経学的機序を明らかにし,身体化の過程で生じる脳認知・行動機能の変化を行動指標と脳活動・脳構造指標をもとにしたモデルを構築すること,さらにはそれを用いて非身体的道具の身体化による課題成績向上を 評価可能かどうか検証することを目的とした.この目的に向けて,今年度はまずVR環境内で脳波を用いて脳活動を計測する技術的課題の解決と,MRI中で仮想空間を構築するための検討と予備実験を行った.この結果,VRゴーグルを装着した状態で脳波を計測し,θ・α・β帯域の自発脳活動の変化と,聴覚課題非関連プローブ刺激に対する誘発電位を安定的に取得することに成功した.また,MRI中で利用可能な左右眼に独立に視覚刺激を呈示可能なシステムを用いて,両眼立体視による三次元視覚環境を呈示することを可能にするとともに,同時に課題に対する実験参加者の反応を収集するための仕組みづくりを行った. 一方で,道具の身体化の理解においては視覚系から得られる情報と固有感覚系からえられる情報がどのように統合されているかを定式化することが必要であるため,視覚系から得られる面の変形情報を,その際の操作運動と矛盾させた実験を行い,その結果を記述するためのモデルを考案した.固有感覚系から得られる尤度情報を一様分布と正規分布の混合で表現したこのモデルは,視覚情報との齟齬が大きいときには視覚情報との統合をしないという実験結果を高い精度で再現することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究実施期間中に,所属組織の方針に従い,当初の予定にはなかった実験参加者安全対策と感染症対策の策定と,それを反映させた実験計画の準備が必要となった.これに対応するために予備実験の開始に遅れが生じた.
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今後の研究の推進方策 |
実験参加者安全対策と感染症対策を反映させた実験計画を策定し,当初より予定していた実験を実施する環境を整えた.今年度の成果であるVR環境内での脳活動の計測を用いて,今後VR環境内で操作する道具の身体化の神経学的機序を明らかにするための適切な課題の設計と,データ取得を進める.とくに,身体化の過程で生じる脳認知・行動機能の変化を行動指標と脳活動指標を用いて明らかにする基盤となるデータ取得を集中して行うとともに,それを用いたVR環境内での道具の身体化の進捗にともなう行動学的変化と脳活動変化の関係を記述するモデル構築に向けた検討を始める.
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