研究課題/領域番号 |
21H03837
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高山 俊男 東京工業大学, 工学院, 准教授 (80376954)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | マイクロミキサ / マイクロ流体デバイス |
研究実績の概要 |
本年度は主にマイクロミキサを複数同時に駆動して,多くの異なる濃度のチャンバを一斉に作る機能について研究開発を行った.提案するマイクロミキサは主流路から枝分かれした円形状のメインチャンバを駆動用チャンバが囲った構造となっている.駆動用チャンバに圧力振動を加えると,チャンバ間の壁面が変形し,メインチャンバの体積が変化することで,主流路から液体をくみ上げつつ,メインチャンバ内で攪拌を行う.一つの圧力源を用いて多くのマイクロミキサを異なる駆動力で同時に駆動するためには,駆動チャンバ内で圧力勾配を作り,その勾配に沿ってミキサを並べれば良いと考えられたが,これまで用いてきたピエゾアクチュエータを用いた高周波の振動では,流路内の圧力振動だけでなく,装置全体の振動がマイクロ流路デバイスに伝わることで,流路の形状に関係なく圧力振動が発生してしまうことが判明した.そこで新たに空気圧を振動源に用い,これまでの高周波小振幅ではなく,低周波大振幅で壁面に圧力変形を加える方法を提案した.ピエゾアクチュエータではポンプの駆動振幅が小さく,ミキサを増やした場合に変形させるチャンバ間の壁が多くなると,変形に必要な液体の体積の変化量に対応できなくなる可能性があるが,空気圧を用いることで多くのミキサを同時に駆動することもできる.この結果8個のチャンバを同時に駆動して異なる濃度とすることができた.また大きな体積の変化にも対応可能なことから,大型のミキサも駆動できることが可能となることが分かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の一番の目的である複数のマイクロミキサを同時に駆動する目標が,空気圧駆動の導入により達成された.また当初は複数並べたマイクロミキサの駆動力を変えるのに,駆動用流路に直列に駆動チャンバを配置することで圧力分布を作る方法と,駆動用流路を枝分かれ状に並列に分岐させて駆動圧力を同じにしてメインチャンバを囲う駆動チャンバの囲い込み範囲をチャンバ毎に変えるという2通りの方法を考えていたが,空気圧駆動ではこれらの方法では,圧力振動が狭い駆動用流路を伝わって先端まで到達しにくいことが分かった.そこで想定していた流路とは異なる先端に行くほど流路の狭くなる大型の駆動用流路を作ると,狭くなるほど圧力が伝わりにくくなるため,圧力分布を作ることができることを発見した.また空気圧を導入したことで,大型のチャンバにも対応できることが分かり,次年度以降に計画しているスフェロイドの挿入可能なサイズのミキサの開発の可能性が高くなった.
|
今後の研究の推進方策 |
現在入口寸法が50μm直径150μm程度の培養室を持つマイクロミキサであるが,寸法が100~200μmスフェロイドの撹拌等を想定して入口寸法が200μmのサイズのマイクロミキサの開発を行う.現在空気圧の導入により大型化した場合でもそれなりに攪拌が行われていることは確認できたが,より攪拌力を高めるためにミキサの設計を見直す,またピエゾアクチュエータでは装置全体が振動することで,意図しないチャンバに振動が発生して攪拌が起きていたが,空気圧の導入により,流路の離れたチャンバには振動が伝わらなくなったことから,多くのチャンバを独立に振動させることが可能となったため,多くのミキサを独立に駆動して,任意の濃度を作る装置の開発も行う.逆に,ピエゾアクチュエータで振動を加えていた時に見られた流路の特定の場所に細胞が凝集する現象であるが,当初はこれを用いて細胞を一か所に集めることを考えていたが,空気圧振動においても同様の現象が起きるか確認する必要がある.また直線流路側面に多くの気室を設け,これにより液体を流すマイクロポンプの開発も行う.
|