研究課題
発達心理学等の領域では,人が新たな機能を獲得するためには,学習者が随伴的に規範動作を模倣するだけではなく,規範動作自体も積極的に学習者を模倣する「相互模倣」が重要であることが指摘されている.相互模倣による機能獲得の概念は,加齢によって様々な身体的制約を受ける高齢者に個人適応した機能回復訓練を実現する上でも有効と期待されるが,機能回復訓練を支援する機器の設計論として検討されてこなかった.本研究では,高齢者の「歩容」に注目し,それが規範歩容モデルとの相互模倣により変容してゆくメカニズムの神経心理学的な数理モデルを新たに構築し,それを用いた実験を通して,歩行姿勢の補正支援技術としてのその有効性を明らかにすることを目的としている.2023年度では,これまでに作成した自己歩容への客体的な視認を通して自身に内在する規範歩容のイメージとの比較をリアルタイムで行いながら自身の歩容を補正できる自己歩容提示システムを用いて,健康高齢者を対象とした動作実験を進めた.その結果,健康高齢者の歩行姿勢を改善させた事例を確認することができた.このことから,我々の提案する自己歩容提示システムが,若年者だけでなく,高齢者の転倒リスク低減を目的とした,歩行姿勢の安定化の支援手法として有効である可能性を示した.しかし,同システムのインタラクション機能に関し,健康高齢者を対象としたパラメータを補正する必要があることが判明し,そのための作業を開始した.
3: やや遅れている
これまでに作成した自己歩容提示システムを用いた若年者を対象とした動作実験の追実験と,健康高齢者を対象とした歩容計測実験を予定通り実施することができた.しかし,得られたデータより,健康高齢者の歩容に対応したシステムへの改良が必要となったため,そのための装置の補正が必要となり,やや遅延が生じている.
健康高齢者の歩容に対応した,自己歩容提示システムの改良を進め,改めて健康高齢者を対象とした有用性評価実験を進め,同システムの完成を目指す.
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