研究課題/領域番号 |
22H00621
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
益田 朋幸 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70257236)
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研究分担者 |
菅原 裕文 金沢大学, 人文学系, 准教授 (40537875)
辻 絵理子 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (40727781)
児嶋 由枝 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70349017)
武田 一文 筑波大学, 芸術系, 助教 (90801796)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ビザンティン美術 / キプロス / キリスト教図像学 / 聖堂装飾プログラム / カッパドキア / クレタ島 |
研究実績の概要 |
2023年8~9月に、キプロス島の聖堂壁画悉皆調査を継続した。16世紀のポスト・ビザンティン壁画(研究の対象外)、及び北キプロス(占領地域)にある作例を除いて、ほぼ当初の目的を達成した。特にPlatanistasa村Timios Stavros tou Agiasmati聖堂と、Louvaras村のAgios Mamas聖堂のフレスコを描いたギリシア系シリア人画家Philippos Goolの様式・図像について、いくつかの知見を得た。またPerendri村のTimios Stavros聖堂では、聖母伝図像を中心とする装飾プログラムに興味深い点があることを確認した。 Letymvou村ではKyriakos神父の案内により、学界未報告のPanagia聖堂廃墟を調査することができた。ここはアプシスにキリスト昇天を描く、という驚くべき作例で、修復報告書によると14世紀後半以降とのことであるが、様式的に判断するなら14世紀前半と考えられる。これまでアプシスの昇天図像は、カッパドキア、ジョージア、南イタリアとビザンティン帝国辺境のみから発見されてきたが、キプロス島の作例は極めて重要である。 秋以降は調査データを整理・共有化し、2024年5月に開催される国際シンポジウムでの報告に備えた。代表者の益田に加えて、分担研究者の菅原・辻が報告を行う。テサロニキ大学のA・セモグルウ教授を招聘して、聖山アトスで新発見された画家Eutychiosの署名が、後期ビザンティン美術史に及ぼす影響を中心に議論を行うことになる。益田はオフリド(北マケドニア共和国)のパナギア・ペリブレプトス聖堂の「天使キリスト」図像に関して、その起源についての新解釈を発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査を切望していた北キプロスのChrysostomos修道院(Koutsovendis)は、現在もトルコ軍基地の中にあり、調査許可が下りなかった。これを除いて、調査は順調に進行し、成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していたクレタ島、キプロス島、シチリア島、ナクソス島の主要なビザンティン聖堂壁画の調査はほぼ終了した。今後は図像学的比較を行うために、ビザンティン帝国各地の聖堂壁画を渉猟しなければならない。バルカン半島とカッパドキア、南イタリアが主要な対象となると思われる。
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