研究課題/領域番号 |
22H00629
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
鷲野 彰子 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (20625305)
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研究分担者 |
伊東 信宏 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (20221773)
上田 泰 (上田泰史) 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (90783077)
山本 邦雄 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (90363407)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | ルバート奏法 / 歴史的録音 / ピアノロール / 歌い回し / タイミング / 演奏解析 |
研究実績の概要 |
初年度にあたる2022年度は、ルバートを旋律・伴奏間に生じるタイミングのズレとして捉え、ピアノロールに基づいてこのズレが、いかにして演奏表現における修辞的機能を担っているのかを調査した。これまでに分析したC. サン=サーンスによるショパン《ノクターン》作品15-2の演奏(1905年)の観点を踏襲し比較研究を行うため、同年に記録されたR.プーニョとF. ブゾーニによるピアノロールに基づいて、旋律と伴奏のズレを分析した。いずれもサン=サーンスと同様、平均的に左手が先行する傾向が確認された。両者はサン=サーンスほど体系的ではないにせよ、個別的なアクセント、トリルに応じてズレの間隔を意識的に調整していることが分かった。また、形式上、対応する2つのフレーズを比較した場合、三者ともにズレのタイミングに一致が見られ、周期的なフレーズを特徴づける構造的な表現要素としてもルバートが機能していることが明らかになった。こうした左右のタイミングのズレについては、ショパンの演奏の個人様式の特徴とされてきたが、18世紀前半に既にH. ド・モンジュルーやJ. ヅィメルマンらパリ音楽院のピアノ教授もまた、教則本の中でイタリア歌唱様式との関連において言及している。1905年に記録された上記演奏にも、19世紀のアカデミックなピアノ奏法の慣習が受け継がれていたと考えられる。 また、MIDI変換したピアノロールのデータに検出したい特定の情報を与えることで、別の演奏者が演奏した同一曲のMIDIから同様の情報を自動検出する方法を模索した。具体的には、演奏開始からの音高と出現時間を比較する単純な手法や、演奏を時間における音高の波ととらえ Dynamic Time Warping(動的時間伸縮法)によるマッチングを試行した。おおよその方向性は定まってきたものの、自動検出方法については、さらに精度を向上させる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にあたる2022年度は、ルバートを旋律・伴奏間に生じるタイミングのズレとして捉え、ピアノロールに基づいてこのズレが、いかにして演奏表現における修辞的機能を担っているのかを調査した。これまでに分析したC. サン=サーンスによるショパン《ノクターン》作品15-2の演奏(1905年)の観点を踏襲し比較研究を行うため、同年に記録されたR.プーニョとF. ブゾーニによるピアノロールに基づいて、旋律と伴奏のズレを分析した。いずれもサン=サーンスと同様、平均的に左手が先行する傾向が確認された。両者はサン=サーンスほど体系的ではないにせよ、個別的なアクセント、トリルに応じてズレの間隔を意識的に調整していることが分かった。また、形式上、対応する2つのフレーズを比較した場合、三者ともにズレのタイミングに一致が見られ、周期的なフレーズを特徴づける構造的な表現要素としてもルバートが機能していることが明らかになった。こうした左右のタイミングのズレについては、ショパンの演奏の個人様式の特徴とされてきたが、18世紀前半に既にH. ド・モンジュルーやJ. ヅィメルマンらパリ音楽院のピアノ教授もまた、教則本の中でイタリア歌唱様式との関連において言及している。1905年に記録された上記演奏にも、19世紀のアカデミックなピアノ奏法の慣習が受け継がれていたと考えられる。 また、ピアノロール(MIDI変換済み)のデータに、特定の検出したい情報を与えることで、別の演奏者によって同一曲が演奏されたピアノロールから同様の情報を自動検出する方法を模索した。具体的には、ひとつの演奏における各小節の冒頭音の入りの位置の情報を読み込ませることで、別の演奏家によって演奏された同一曲のMIDIデータから各小節の冒頭音の入りの位置を自動検出する方法を試みた。おおよその方向性は定まってきたものの、さらに精度を向上させる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、20世紀前半の歴史的録音やピアノロールの演奏から、演奏傾向に大きな変化がおきた20世紀半ば以前のルバートの実態をひもときたいと考えている。その際、「芸術音楽」のみならず、その周辺に位置する音楽、つまり、E-MusikとU-Musikの端境にある音楽やその演奏で用いられるルバート実践を分析し、類型を見出すことで、19世紀の「芸術音楽」及びそれを取り巻く環境におけるルバート実践の手法や様式を明らかにしたいと考えている。 2023年度は、2022年度に引き続き、(1)ルバート分析をするための演奏サンプルの収集、そして(2)演奏分析の手段の効率化に取り組むこと、に加え、(3)ルバートの特性そのものをこれまでとは別の角度から捉えることができないか模索することにも取り組みたい。 (1)については、特徴的なルバートが用いられた演奏を分析することで、その特徴を捉えて類型化するためのモデルを考案・選出したい。(2)については、演奏分析に用いるサンプルを効率よく取り出すためのシステムを構築したい、と考えており、MIDIに関連する先行研究の事例やプログラム等を組み込んだ形で本研究に必要なシステムを作成したい。(3)については、私たちが感覚的に捉えているルバートそれ自体の特性を科学的にかつ多角的に捉えることができるか模索したい。
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