研究課題/領域番号 |
22H00642
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坪井 秀人 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90197757)
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研究分担者 |
小林 昭菜 多摩大学, 経営情報学部, 准教授 (20784169)
川口 隆行 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (30512579)
シュラトフ ヤロスラブ 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (30726807)
溝渕 園子 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (40332861)
黒川 伊織 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (50611638)
石川 巧 立教大学, 文学部, 教授 (60253176)
宋 恵媛 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (60791267)
渡辺 直紀 武蔵大学, 人文学部, 教授 (80409367)
天野 尚樹 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (90647744)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | シベリア抑留 / 原爆 / 中央アジア / 核汚染 / 記憶 / カザフスタン / 高麗人 / セミパラチンスク |
研究実績の概要 |
当該年度はウクライナ情勢の影響で当初予定していたロシアでのアーカイブ調査を見送り、2024年度予定のカザフスタンにおける調査を前倒しで行うことに変更した。 カザフスタンへの調査のために調査内容に関わる知見を共有するため、当該課題に関する最も新しい研究学術成果である李眞惠『二つのアジアを生きる:現代カザフスタンにおける民族問題と高麗人ディアスポラの文化変容』(ナカニシヤ出版、2022)を読み、2022年7月24日に広島市のサテライトキャンパスひろしまにて第1回科研研究会を開催して同書のレビューを行うとともに、著者の李眞惠氏をお招きして講演会を開き議論を行った。さらに翌7月25日には広島国際会議場にて広島市役所市民局平和推進課の方々に被爆体験伝承者養成事業の行政の取り組みについてお話をうかがった。 カザフスタンへの調査はアルマティ、セメイの二都市を訪れて行った。セメイではセメイ医科大学を訪ねて学長らと面談、私たちの研究活動について意見交換を行った。またセミパラチンスク核実験場被害者家族と面会し核実験が残した記憶について話をうかがった。核医学センターと郷土史博物館を見学しチェルノブイリ事故当時の活動について関係者から話をうかがった。またアバイ記念国立図書館を訪問し同館所蔵資料や私たちの活動について意見交換を行った。 アルマティではアバイ記念カザフ国立教育大学において同大学と共同でワークショップを開催し、私たちのグループからも二つの報告を行って議論した。またカザフ国立大学でも種々の研究者と意見交換を行った。アルマティでは28人のパンフィロフ戦士公園、ゼンコフ教会を見学するとともに、日本人抑留者ゆかりの建築である科学アカデミーや日本人墓地も訪問し、お酒を手向けた。さらに日本人捕虜研究者、アッリャニゾフ氏からも遺骨収集事業に関わる情報など貴重なお話を個別にうかがうことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はシベリア抑留問題に関わる最重要資料を所蔵するロシア国立軍事公文書館などをはじめとするアーカイブを訪問する予定で、ちょうど特別研究休暇でサンクト・ペテルブルクに長期滞在する予定だった科研メンバーとも連携して効率的な調査を行う計画を立てていたが、ロシアのウクライナ侵攻でその全ての計画は変更を迫られることになった。 そこで2024年度に予定していた中央アジア、カザフスタンでの調査を行うことになった。ゲルマン・キム氏など当初から協力依頼を考えていたカザフスタンの研究者たちとも面談することが出来、短期間ではあったが調査を有効に行う準備を進めたので、想定した以上の研究の収穫があった。 ロシアでの調査は見通しが立たない中でカザフスタンを拠点として中央アジアの研究者や研究機関とも今後の協力関係が築けたことは大きな進展となったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は当初計画ではサハリンでの調査を予定しており、その準備もしていたが、やはり実現は困難なので、計画を変更し、かねてより科研グループ内でも私から提案してきた、同じソ連の強制収容所におけるドイツ人捕虜との比較研究を行うことにする。すでに当該分野の第一人者であるミュンヘン大学のAndreas Renner教授とはコンタクトが取れており、今年度ミュンヘンでドイツ(語圏)の研究者と日独比較のシベリア戦争捕虜研究にかかわるワークショップを行うことで合意が取れている。研究代表者が媒介できるドイツの研究者とも別途コンタクトをとる用意がある。 一方で2022年度の末に行ったカザフスタンでの共同研究の萌芽はぜひ発展させたいという思いも科研メンバーに強く、オンラインでカザフ教育大学との共同研究会を行うことが提案されており、それも実現する見通しであり、2023年度はドイツとの共同研究、カザフスタンとの共同研究の二つを軸にしてプロジェクトを推進し、来年度以降も情勢を見きわめながら、この両軸をもとに計画を推進する予定である。
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