研究課題/領域番号 |
22H00681
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
檀 一平太 中央大学, 理工学部, 教授 (20399380)
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研究分担者 |
福田 純也 中央大学, 理工学部, 准教授 (20781818)
山西 博之 中央大学, 理工学部, 教授 (30452684)
印南 洋 中央大学, 理工学部, 教授 (80508747)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | fNIRS / 英語学習 / 脳機能イメージング / 言語変換 / 英語教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、光を用いたfNIRS脳機能イメージング法によって英語学習の効果を可視化して学習課題を最適化し、効率的な英語学習を支援する脳機能育成型英語教育法を開発することである。英語教育とは、観点を変えれば、脳において第2言語処理をつかさどる神経回路を構築し、それを効率化させるという行動介入作業である。そこで、英語学習の進行にともなう脳の機能的な変化を可視化することで、英語力を反映する脳活動、すなわち「ニューロマーカー」を抽出することを目指し、日英単語の言語変換課題の作成を試みた。英日両語の親密度により難易度を調整し、低親密度語(92語)と高親密度語(92語)からなる課題セットを作成した。脳活動計測には、光で脳の活動を計測するfNIRS(機能的近赤外分光分析法を用いた。fNIRS計測の結果、言語変換時の脳活動パターンは英語力を表すニューロマーカーとして機能し得ることが示唆された。これらの先行研究を発展させ、本研究では、英語学習者を大学生からリクルートし、言語変換課題遂行時の脳活動を、fNIRSを用いて計測した。脳活動計測日の前後1ヶ月以内にTOEIC-IPテストを受験していただき、TOEIC得点と脳活動の相関を明らかにすることとした。これまでに日本人88人を対象に、単語翻訳時の脳活動を測定した結果、言語の意味処理に関連するブローカ野、音韻処理に関連するウェルニケ野、言語の切り替えに関連する背外側前頭前野で、英語習熟度と脳活動の大きさの間に中程度の負の相関がみられた。これらの脳活動情報は、機械学習に活用し、脳機能からTOEICスコアの予測を試みる。機械学習により頑健なモデルを構築するためには100名分程度のデータがあることが望ましい。計測不良の可能性も踏まえ、15名分の追加データ計測を行う。この100名分の計測データにより、TOEICのスコアを予測するモデルの構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、光を用いたfNIRS脳機能イメージング法によって英語学習の効果を可視化して学習課題を最適化し、効率的な英語学習を支援する脳機能育成型英語教育法を開発することである。 英語教育とは、観点を変えれば、脳において第2言語処理をつかさどる神経回路を構築し、それを効率化させるという行動介入作業である。この本質を鑑み、英語学習の進行にともなう脳の機能的な変化を可視化することで、英語力を反映する脳活動、すなわち「ニューロマーカー」の探索を試みた。このために、日英単語の言語変換課題を作成した。脳活動計測には、光で脳の活動を計測するfNIRS(機能的近赤外分光分析法を用いた。fNIRS計測の結果、英語力を反映する脳活動の共通原理として、(1)翻訳作業が比較的容易で自動化できる場合、脳活動は低い、(2)適度に負荷の高い課題に関してはレベルを反映した脳部位の賦活が高まる、(3)能力を大幅に凌駕する課題でも脳活動が低いという特徴が明らかとなった。つまり、言語変換時の脳活動パターンは英語力を表すニューロマーカーとして機能し得ることが示唆された。 これらの先行研究を発展させ、本研究では、150名の英語学習者を大学生からリクルートし、言語変換課題遂行時の脳活動を、fNIRSを用いて計測する。脳活動計測日の前後1ヶ月以内にTOEIC-IPテストを受験していただき、TOEIC得点と脳活動の相関を明らかにすることとした。これまでに日本人88人を対象に、単語翻訳時の脳活動を測定した。この結果、言語の意味処理に関連するブローカ野、音韻処理に関連するウェルニケ野、言語の切り替えに関連する背外側前頭前野で、英語習熟度と脳活動の大きさの間に中程度の負の相関がみられた。
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今後の研究の推進方策 |
パイロット研究に基づき、我々は、低親密度語の日英及び英日変換課題で、ブローカ領域の脳活動が英語力を反映すると予想していた。今回、これらに加えてウェルニケ野、背外側前頭前野において、英語習熟度と脳活動の大きさの間に中程度の負の相関がみられたが、当初の予想通り、単一領域の脳活動だけでは中程度の相関r=0.4程度の相関が得るにとどまるという結果となった。このため、これらの脳活動情報は、機械学習に活用し、脳機能からTOEICスコアの予測を試みる。 これまでの研究から、TOEIC得点を従属変数、チャネルごとの脳活動を回帰式の係数を最大化させる機械学習法が有効であり、一般的な17種類の機械学習手法の組み合わせから、上位5手法程度を組み合わせて予測を行なうアンサンブル学習(スタッキング法)が頑健であることが判明している。目標とするベンチマークとして、TOEICスコア (10-990)を±65(95%信頼区間)で予測することを目指す。これは、TOEICスコアの流暢性レベル(130点刻み)を予測可能とする精度である。 機械学習により頑健なモデルを構築するためには100名分程度のデータがあることが望ましい。現在88人分のデータを計測済みであり、計測不良の可能性も踏まえ、15名分の追加データ計測を行う。なお、当初予定の150名からは規模は縮小した。この100名分の計測データにより、TOEICのTotalスコアを予測するモデルの構築を目指す。
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備考 |
上記研究は研究内容は異なるが、本研究のために開発した解析手法を用いている。
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