研究課題/領域番号 |
22H00686
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伴瀬 明美 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (90292797)
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研究分担者 |
三田 辰彦 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (00645814)
豊島 悠果 神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (10597727)
稲田 奈津子 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (60376639)
江川 式部 國學院大學, 文学部, 准教授 (70468825)
古松 崇志 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (90314278)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 東アジア / 王室 / 儀礼 / 比較史 / 后位 / 後宮 / 金 / 中国礼制 |
研究実績の概要 |
前近代東アジア諸地域の諸王室は、中国礼制の影響のもとで、制度や称号・身位において多くの共通点をもつ。しかし制度運用の実態や称号・身位のあり方は王室によって大きく異なり、とくに非漢族国家では礼的〈逸脱〉ともいうべき事例が見出せる。本研究ではそうした多様性が顕著に現れる「后位」(皇后、王后等)関連儀礼を中心に、時代的地理的に広範な東アジア諸地域における王室儀礼を中国礼制と相互に比較し分析することによって、中国礼制の継受から〈逸脱〉まで多様な受容のあり方の具体的様相を明らかにするとともに、その多様性をもたらした歴史的背景を考察し、礼制伝播のあり方という視点から東アジアにおける多様性の歴史的意義の解明を目指している。 本年度は、金(12世紀前半に女真が中心となり東北アジアに勃興)の后位について本格的な研究を開始した。本研究においては、主要礼典・儀礼書における后位関連儀礼の解読、訳注の作成を、礼制受容の多様性を具体的に析出する手段として研究計画の中核としている。現在、金の儀礼書『大金集礼』に収められた皇后・皇太后儀礼を解読することによって、金における皇后や後宮の成立期の様相を考察している段階である。 また、定例研究会である「東アジア后位比較史研究会」では、東アジア非漢族国家である高麗・元・琉球の后位や後宮、皇宮を含む都城に関する研究報告をもとに、各王室の后位や後宮のあり方の多様性について議論・検討を行った。 さらに、北魏・朝鮮・清の后位や後宮に関する最新の研究成果となる中国・韓国研究者の論文を翻訳し、それをふまえて当該地域の后位の独自性や中国礼制からの逸脱的状態について議論を深めた。こうした研究活動の成果の一部は、本科研参画研究者を中心とする研究者の執筆により、東アジア諸地域の後宮をテーマとする単行本に収載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において掲げた訳注対象礼典・儀礼書のうち、2022年度に着手できたのは『大金集礼』のみだが、事前に推測した以上に本研究課題にとって重要な内容を含むものであり、着実な研究成果を得つつある。 関連文献目録の更新・拡充は作業のための人員が難しく、遅れているが、后位・后妃に関する中国語/韓国語による主要関連論文の翻訳は計画以上に進んでいる。 前科研での成果に2022年度における研究成果を加え、中国礼制受容の多様性とその歴史的背景に関する研究書を研究者のみならず一般の方も手に取りやすい単行本として刊行するための準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
礼典・儀礼書の訳注については、まずは、研究的に意義の大きい『大金集礼』の訳注に集中する予定である。それとともに、2022年度の研究において、中国礼制からの色濃い独自性が再確認された琉球やベトナムに関して、研究対象を広げることも検討しており、今後、両地域に関する関連学知の獲得につとめたい。そのための場として、ひきつづき東アジア后位比較史研究会を1、2ヶ月に一度開催する。 后位・后妃関連外国語論文の翻訳が順調に進展していることをふまえ、外国語論文翻訳集を中間報告書の形で発刊する。 また、2022年度は実施できなかった儀礼空間の調査について、首里城遺構・玉陵から調査を開始する。
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