研究課題/領域番号 |
22H00693
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
外村 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40277801)
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研究分担者 |
中山 大将 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (00582834)
伊地知 紀子 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40332829)
加藤 恵美 帝京大学, 外国語学部, 准教授 (60434213)
岡田 泰平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70585190)
山下 英愛 文教大学, 文学部, 教授 (80536235)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 市民運動 / 日韓関係 / 歴史問題 / 在日コリアン / 戦後補償 |
研究実績の概要 |
今年度は、分担研究者による、担当する分析対象にかかわる先行研究の整理やそこでの問題点の確認、資料収集を進めた。新型コロナウィルス感染症対策で、直接顔を合わせて意見交換することが困難であった韓国在住の研究者とも、オンライン会議やメールで連絡し、今後の研究の打ち合わせを行っている。 研究代表者・分担研究者が集まる活動としては、10月2日に東京大学駒場キャンパスで、「康浩郎監督作品『帰還船1959』上映会・トークイベント」を開催した。これは、1950年代末から1960年代にかけて展開された、在日朝鮮人の帰国運動についてのフィルム上映と監督の話をうかがうというものである。つまりは、本研究プロジェクトが中心的に分析を進める、1970~80年代の前史にあたる時期の、在日朝鮮人や日本と韓国・朝鮮との関係を考える取り組みであった。監督のこの時期についての回想から、日本人市民の植民地支配の歴史についての無関心、在日朝鮮人の間で、北朝鮮への希望が存在していた一方で、冷静に状況を見ていた人びとも多かったことなどを確認した。 なお、本科研が主催したわけではないが、8月25日には、本科研の分担研究者も執筆している論文集、外村大編『和解をめぐる市民運動の取り組み』(明石書店、2022年)の書評会が行われた。そこでの議論では、日韓の連携による市民運動の研究についての示唆を得た。 また、1970~80年代の市民運動にかかわる資料としては、 田中宏一橋大学名誉教授の所蔵する、日本の市民運動団体のニューズレター、パンフレット、集会資料等の整理を進めた。資料のデータベースとスキャニングを行った一部の重要資料は、研究プロジェクト参加者が共有している。このほか、市民運動関係者のインタビューを進めている。これらは、今後、論文作成等で使用していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分担研究者の各人がこれまでの関連分野に関する研究蓄積があり、そのうえで、関連研究の整理や資料収集に取り組んでいる。適宜、研究状況についての報告を受けたり、新たに入手した資料についての情報交換はしており、それぞれの研究は順調に進展していることが把握できている。また、田中宏一橋大学名誉教授所蔵の資料中から、各種市民運動団体の内部的な議論を知ることができる文書が多く発見することができた。これをもとにさらに、関係者のインタビュー等も進める手がかりも得られており、今後の調査の進展が大いに期待できる。 ただし、2022年度はまだ、韓国での調査を行っていないこともあり、日韓の市民の連携について、韓国側からの視点、活動がどうであったかを十分把握するところまではいっていない。その点は今後の課題となる。 同時に、各分担研究者の研究の中間報告をお互いに聞く機会が不足していたことも反省点である。日韓関係にかかわる市民運動もそれぞれの課題ごとに、連携のあり方、参加している市民の傾向も異なる。それがどのような点によって生み出されているのかも分析してくことも重要な課題となるが、現状では未着手である。
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今後の研究の推進方策 |
すでに、着手している研究課題については、特に資料発掘その他で困難や支障が生じているわけではない。したがって、今年度以降も、引き続き、各分担研究者がそれぞれの課題についての資料調査と分析を進める。また、1970~80年代の全般的な日本の市民運動の状況について把握するためにも、田中宏一橋大学名誉教授の所蔵資料の整理についても続ける。なお、これについては、本年度前半で終了する見通しであるが、その過程で把握できた、市民運動関係者のキーパーソンからの聞き取りや補充的な資料収集(重要な団体のニューズレターの欠号の入手など)を進めたい。 このほか、この間、聞き取りを行ってきた市民運動関係者などから、かかわって来た活動についての資料を寄贈したいといった相談を受けることも多くなっているので、可能な範囲で整理を進める。とりわけ、在日朝鮮人人口の多い、関西地方や、歴史掘り起しの運動が活発であった北海道での市民運動資料の収集整理は積極的に進めたい。同時に、前年度まで、十分に行っていなかった、分担研究者の相互の研究状況の報告も今年度は定期的かつ時間をとって実施する。 さらに、今年度は韓国での韓国での調査を実施し、関係資料の収集と関連研究者との協議を進めることとする。そのうえで、日韓の研究者の合同のシンポジウムの企画も検討、準備を進める。
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