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2022 年度 実績報告書

図像・出土器物・文献資料による古代東アジアにおける饗宴システムの復元と比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 22H00729
配分区分補助金
研究機関大手前大学

研究代表者

森下 章司  大手前大学, 国際日本学部, 教授 (00210162)

研究分担者 菊地 大樹  金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 客員教授 (00612433)
高橋 照彦  大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (10249906)
長友 朋子 (中村朋子)  立命館大学, 文学部, 教授 (50399127)
山本 尭  公益財団法人泉屋博古館, 学芸課(本館), 学芸員 (90821108)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード考古学 / 古代東アジア / 飲食器 / 饗宴システム / 飲食儀礼 / 比較研究
研究実績の概要

資料収集および基礎的な分析を実施しつつ、オンライン研究会により、研究の方向性と課題について議論した。森下から中国における饗宴システムの材料として画像石など図像資料を用いて政治の場に於ける饗宴や割烹のための施設、飲食器の特徴と用い方、割烹→饗宴に至る進行過程について具体的に復元した結果を報告した。供膳形態や諸施設について、古代東アジア各地と比較するために必要な視点と課題を確認した。議論の中で特に耳杯の分析方法について、法量など各種要素の検討の必要性が指摘された。
検討会の議論をふまえて図像資料の分析を進めると共に、耳杯資料の収集、各種要素の比較検討を開始した。資料カードを作成し、法量等をデータ化した。なお古墳祭祀における供膳形態を示す資料である食物形土製品の集成も進めた。菊地氏は肉食を中心に漢代の飲食に関わる有機物資料の収集を実施し、調理法の視点から漢代の飲食の実態について検討を進めている。山本氏は先秦時代の青銅礼器の扱われ方、政治権力との関係を検討した結果を論文に発表すると共に、それらの成果を通じて当該期の飲食儀礼に深く関わる器について新たな視角を見出した。長友氏は日本・朝鮮半島の飲食器検討の基礎となる土器製作技術について実験もふくめた研究を実施し、また弥生時代の列島における土器の移動の問題を論じた。高橋氏は奈良・平安時代において宮廷の饗宴等で用いられた飲食器の形態検討から、唐王朝で用いられた飲食器との関係性を見出し、その成果を国際シンポジウムで発表した。
各地域間の供膳形態を本格的に比較検討する段階には至っていないが、課題の明確化と各々の担当分野で基礎的な作業を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

代表者・分担者の担当分野に応じて資料収集と基礎的な検討を進めた。研究会を通じて課題のほかに新たな分析視点を得ることもできた。菊地氏以外の研究者は中国や韓国での実地調査を実現できていないが、コロナ感染状況から本年度の実施が困難であることは当初計画に織り込んでおり、国内で可能な資料検討および研究成果の発表などを行った。
森下は漢代の画像資料および耳杯を中心とする飲食器資料のデータ化を進捗させた。また分担者からの指摘により新たな分析要素を項目に加えることができ、飲食器による供膳形態研究の新たな方向性を見出した。食物形土製品の資料集成はほぼ完了した。菊地氏は中国の考古資料や最新情報を獲得しやすい立場を活用し、関係資料の収集を進めた。山本氏はこれまでの研究蓄積を基に先秦代の飲食礼器の扱われ方等に関して研究論文を発表した。高橋氏は古代日本の施釉陶器の分析結果から、嵯峨朝における新たな飲食器形態の出現を唐王朝の影響とみる斬新な研究成果を国際シンポジウムで発表した。長友氏は弥生時代における地域間の土器の影響関係とその背景について研究成果を発表している。各々の研究を進めつつ、異なる専門の研究者の相互刺激による新たな視点の獲得という方向に沿った展開を行っている。

今後の研究の推進方策

各々の研究成果を元に議論を行う研究会を実施し、知見の共有とあわせて比較検討も進めてゆく。研究の基軸となる漢代の飲食形態と饗宴システムの復元について、森下は当面の目標として耳杯の資料収集と法量・形態分析をさらに進める。時期、地域、階層による違いを明らかにした上で、饗宴での具体的な使用法や使い分けとの関係性を検討する。古墳祭祀に関わる供膳具に関しては前後の時代との比較検討も進める、山本氏は古代中国の重要な飲食儀礼容器「爵」の検討結果を論文に発表予定であり、その成果を元に先秦時代の飲食儀礼の具体像の解明に努める。これらの成果に菊地氏が検討を進めている出土資料による古代中国の飲食の具体的な様相を連結して、古代中国の飲食、饗宴、儀礼の変化という視点の構築を目標とする。なお中国での現地調査は本年度も困難な状況であるが、現地に長期にわたって滞在している菊地の助力により必要な情報を収集する。
長友氏は引き続き朝鮮半島~弥生時代の供膳形態の検討を行う。高橋氏が昨年度提出した奈良・平安時代の宮廷における饗宴形態と唐との関りについては、相互の議論を元にさらに進展を図る。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (7件) (うちオープンアクセス 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 東周青銅器施文技法の基礎的検討-侯馬出土鋳型資料を中心に-2023

    • 著者名/発表者名
      山本尭・樋口陽介・内田純子・新郷英弘
    • 雑誌名

      泉屋博古館紀要

      巻: 第38巻 ページ: 25-48

  • [雑誌論文] 洛陽西朱村曹魏墓出土石牌銘選注2022

    • 著者名/発表者名
      「三世紀の東アジア」研究班(向井佑介・森下章司)
    • 雑誌名

      東方学報

      巻: 第97冊 ページ: 97-173

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 楚國政權構造試論 : 考古資料よりみた政權基盤の變遷2022

    • 著者名/発表者名
      山本尭
    • 雑誌名

      東洋史研究

      巻: 第81巻第3号 ページ: 309-346

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 東周時代華中地域における青銅彝器生産の変革と画期2022

    • 著者名/発表者名
      山本尭
    • 雑誌名

      考古学雑誌

      巻: 第105巻第1号 ページ: 81-130

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 殷周金文辨僞新考2022

    • 著者名/発表者名
      山本尭
    • 雑誌名

      中国出土資料研究

      巻: 第26號 ページ: 29-57

  • [雑誌論文] 殷周青銅器における伝世・復古とその史的意義2022

    • 著者名/発表者名
      山本尭
    • 雑誌名

      考古学研究

      巻: 第69巻第3号 ページ: 16-27

  • [雑誌論文] 西周王朝的牧業経営2022

    • 著者名/発表者名
      菊地 大樹  覚張隆史 劉呆運 張嘉欣 , 龍悦
    • 雑誌名

      南方文物

      巻: 15 ページ: 79~85

    • 査読あり
  • [学会発表] 日本奈良、平安時代瀬釉陶器生産2023

    • 著者名/発表者名
      高橋照彦
    • 学会等名
      東アジア都市文明の考古学研究
    • 国際学会
  • [学会発表] 曹操高陵・洛陽西朱村曹魏墓出土石牌の性格2022

    • 著者名/発表者名
      森下章司
    • 学会等名
      第66回国際東方学者会議
    • 国際学会
  • [学会発表] 殷周青銅器における伝世・復古とその史的意義2022

    • 著者名/発表者名
      山本尭
    • 学会等名
      考古学研究会総会
  • [学会発表] Landscape of a Pottery Production viewing from Japanese and Korean Dragon Kilns2022

    • 著者名/発表者名
      Tomoko NAGATOMO, Daisuke NAKAMURA
    • 学会等名
      The Nineth World Archaeological Congress
    • 国際学会
  • [図書] 南関東の弥生文化2022

    • 著者名/発表者名
      長友 朋子、石川 日出志、深澤 芳樹他
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      吉川弘文館
    • ISBN
      978-4-642-09364-4
  • [図書] 家畜の考古学2022

    • 著者名/発表者名
      菊地大樹、丸山真史
    • 総ページ数
      212
    • 出版者
      雄山閣
    • ISBN
      9784639028628

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公開日: 2023-12-25  

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