研究課題
年層内データを用いた年代決定力の向上化を検討するため、年代既知の現生木を分析対象とし、1枚の年層を多分割して酸素同位体比を測定した。ケヤキは、成長初期の道管から成る孔圏部で酸素同位体比が低く、成長中盤の部位で極大値を取ったのち、成長の終盤に向かって減少する傾向を示した。一方、スギは、成長の初期で極大値を示し、それ以降は減少する傾向を示した。ケヤキのような環孔材は、前年の光合成産物を利用して道管が形成されるため、スギとは異なった年層内の変動特性を示した。次に、年層内の各部位と月別の気象要素を比較したところ、相対湿度や降水量と有意な相関を示す時期が、成長の初期では5月、それ以降では、6、7、8月と順に後ろの月にずれていくことを確認した。この応答解析の結果から、年層内の各部位の形成時期が特定できるとともに、月単位での気候復元も可能であることが分かった。次に、年層内を2分割して両者の差分を算出する方法を試してみたところ、この差分法は、従来の1年輪単位で得た酸素同位体比と独立しており、年代決定の新しい指標として有望であることが示唆された。年代決定力を検証したところ、従来法と差分法を併用することで、これまで以上に候補年代の絞り込みが可能になることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
年代決定の基盤となる、過去4354年間にわたる標準年輪曲線を論文として公表できたほか、各地で新たに収集した考古材の年代を決定できた。また、年層内同位体比差分法が年代決定に有効であることを示せた。
引き続き、年層内データの収集と分析を進め、より少ない年輪数での年代決定にむけた分析手法の開発に取り組む。特に、年層内同位体比差分法の改良や、樹種別に年層内のどの部位を抽出すれば樹種間でのパターンマッチングに効果的に働くか検討する。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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