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2022 年度 実績報告書

受傷人骨の骨科学分析による縄文終末期の埋葬原理と社会変容の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H00741
配分区分補助金
研究機関東北芸術工科大学

研究代表者

青野 友哉  東北芸術工科大学, 芸術学部, 准教授 (60620896)

研究分担者 西本 豊弘  伊達市噴火湾文化研究所, その他部局等, 専門委員 (70145580)
永谷 幸人  伊達市噴火湾文化研究所, その他部局等, 学芸員 (10844269)
添田 雄二  伊達市噴火湾文化研究所, その他部局等, 専門委員 (40300842)
新美 倫子  名古屋大学, 博物館, 准教授 (10262065)
近藤 修  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40244347)
澤田 純明  新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (10374943)
篠田 謙一  独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, 名誉研究員 (30131923)
神澤 秀明  独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究主幹 (80734912)
安達 登  山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60282125)
渋谷 綾子  東京大学, 史料編纂所, 特任助教 (80593657)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード受傷人骨 / 縄文晩期 / 続縄文前半期 / 社会変容
研究実績の概要

縄文時代晩期の受傷人骨が含まれる有珠モシリ18号墓人骨(多数合葬・複葬例)について、人骨部位ごとの整理、同定を行い、部位ごとの最小個体数を算出した。性別と成人/未成人の判定は頭蓋と骨盤により行った。最小個体数は最大で11体(頭蓋)、成人6体(男5、女1)、未成人5体を含む人骨の集積埋葬であることが判明した。多くの個体(9/11)の頭蓋骨には、人為的損傷と思われるキズ痕が複数(多いもので8か所)みられ、また治癒後(治癒過程)のものも2例観察された。
18号人骨のDNA分析については、安定性に優れたアメロゲニン遺伝子エクソン1領域を対象とした新しい性別判定法を用い、11個体(18Aから18K)すべての判定に成功した。結果は18E人骨のみ女性で、他は男性であることが判明し、形態人類学的な性別判定結果と矛盾しなかった。核DNA分析による血縁推定では、18Hと18J人骨が兄弟の可能性が高かった。
これら18号人骨の死亡年代の特定には、14C年代測定における海洋リザーバー効果を補正する海域差(ΔR)の算定が必要であった。そこで、有珠モシリ遺跡の発掘により、縄文晩期の貝塚を検出し、補正に用いる陸産と海産の動物遺存体試料を複数個体採取した。
古病理分析では、縄文・続縄文・弥生時代の人骨について、エナメル質減形成の出現状況を調査した。その結果に基づき、1)本州以南において、渡来系弥生社会の生活・健康水準は、縄文時代に比べて上昇した、2)北海道では、縄文時代から続縄文時代にかけて、生活・健康水準が大きく変化しなかった、と推察した。残存デンプン粒分析では、これまで分析してきた有珠モシリ遺跡を含む続縄文期の人骨の歯石を分析した結果を査読付き論文に投稿した。
動物遺存体分析では、北海道における縄文から続縄文期のイノシシ利用を考えるために、沖縄から北部九州の弥生期遺跡出土イノシシ類の調査を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

出土人骨に対する形質人類学的分析およびDNA分析、年代測定などの骨科学分析が極めて順調に進んでいる。特にDNA分析は人骨の遺存状態が良いことと、出土して間をおかずに分析を開始したことから、DNA自体の状態が非常に良好であった点が幸いしている。

今後の研究の推進方策

有珠モシリ遺跡18号墓の出土人骨の核DNA分析では、Y染色体ハプログループでの比較により、父系情報からも血縁関係を検証する。
北海道の縄文晩期における受傷人骨の例として、洞爺湖町高砂貝塚の人骨が知られている。有珠モシリ遺跡18号墓よりも時期が古いとされるものの、比較対象として重要であるため、これらの調査を実施する。高砂貝塚人骨群は札幌医科大学が保管しており、これらの観察記録および年代的検討を行う。また、噴火湾北岸集団の遺伝情報から縄文晩期の争いの要因を探るため、DNA分析の実施の可能性について模索する。
また、有珠モシリ遺跡の発掘調査で検出された縄文晩期の貝塚は、全国的にも数が少なく、珍しいため、引き続きブロックサンプルを採取して内容を把握する。特に北海道に本来生息しないとされるイノシシ骨の時期的な変化傾向を把握し、本州との交流、人の移動について検討する上での基礎データとする。

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 北海道地方-縄文晩期の土器文化と葬墓制の地域的諸相-2023

    • 著者名/発表者名
      青野友哉
    • 雑誌名

      季刊考古学

      巻: 別冊40 ページ: 19-22

  • [雑誌論文] 有珠モシリ遺跡発掘調査概要報告32023

    • 著者名/発表者名
      青野友哉・永谷幸人・三谷智広
    • 雑誌名

      歴史遺産研究

      巻: 17 ページ: 63-74

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 酒田市生石2遺跡発掘調査概要報告22023

    • 著者名/発表者名
      青野友哉・渡部裕司
    • 雑誌名

      歴史遺産研究

      巻: 17 ページ: 59-62

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 縄文晩期の人類学ー縄文晩期人の形質的特徴2023

    • 著者名/発表者名
      近藤修・佐宗亜衣子
    • 雑誌名

      季刊考古学

      巻: 別冊40 ページ: 143-146

  • [雑誌論文] Starch granules from human teeth: New clues on the Epi-Jomon diet2022

    • 著者名/発表者名
      Shibutani Ayako、Aono Tomoya、Nagaya Yukihito
    • 雑誌名

      Frontiers in Ecology and Evolution

      巻: 10 ページ: 1-13

    • DOI

      10.3389/fevo.2022.907666

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Highly sensitive sex determination method using the exon 1 region of the amelogenin gene2022

    • 著者名/発表者名
      Fujimoto Kana、Fujii Gento、Shojo Hideki、Nakanishi Hiroaki、Kanzawa-Kiriyama Hideaki、Saitoh Masao、Yoshizawa Kunio、Aono Tomoya、Horita Tetsuya、Takada Aya、Saito Kazuyuki、Ueki Koichiro、Adachi Noboru
    • 雑誌名

      Legal Medicine

      巻: 59 ページ: 102136-102136

    • DOI

      10.1016/j.legalmed.2022.102136

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 残存デンプン粒分析を知る2023

    • 著者名/発表者名
      渋谷綾子
    • 学会等名
      学術変革領域研究(A)「中国文明起源解明の新考古学イニシアティブ」第22回領域セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 縄文時代葬墓制の時期的・地域的特徴-合葬・複葬例を中心に-2022

    • 著者名/発表者名
      青野友哉
    • 学会等名
      国立民族学博物館共同研究会「島世界における葬送の人類学-東南アジア・東アジア・オセアニアの時空間比較」
    • 招待講演
  • [学会発表] 北海道有珠モシリ縄文人の生と死2022

    • 著者名/発表者名
      青野友哉
    • 学会等名
      沖縄県立博物館・美術館 第538回博物館文化講座
    • 招待講演
  • [学会発表] 骨・歯の接合関係による多数合葬複葬例の埋葬過程復元-北海道有珠モシリ遺跡の事例2022

    • 著者名/発表者名
      青野友哉・永谷幸人・近藤修・澤田純明・三谷智広・菅野修広
    • 学会等名
      日本考古学協会第88回総会
  • [学会発表] 恵山文化の骨角器の文様変遷について2022

    • 著者名/発表者名
      青野友哉
    • 学会等名
      日本動物考古学会 第9回大会
  • [学会発表] 歯牙フッ素分析を用いた人の移動に関する研究2022

    • 著者名/発表者名
      青野友哉・吉村和久・米田穣・澤田純明・山口晴香・増山禎之
    • 学会等名
      第9回世界考古学会議
    • 国際学会
  • [学会発表] 埋葬環境の判別を基にした“廃屋墓”の分類2022

    • 著者名/発表者名
      青野友哉
    • 学会等名
      第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会 連合大会
  • [学会発表] 続縄文時代の人々のエナメル質減形成2022

    • 著者名/発表者名
      澤田純明・青野友哉
    • 学会等名
      第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会 連合大会
  • [学会発表] ゲノムで解明する日本人の成立史2022

    • 著者名/発表者名
      篠田謙一
    • 学会等名
      第65回日本手外科学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] ゲノムで分かった日本人の起源2022

    • 著者名/発表者名
      篠田謙一
    • 学会等名
      日本進化学会大会公開講演
    • 招待講演
  • [学会発表] 新規プライマーセットを用いた高感度性別判定の開発2022

    • 著者名/発表者名
      藤本佳那・小泉 舞・井口 蘭・諸井明徳・安達 登・上木耕一郎
    • 学会等名
      第76回NPO法人日本口腔科学会学術集会
  • [学会発表] 歯石からの残存デンプン粒抽出の効率化に向けて2022

    • 著者名/発表者名
      渋谷綾子・青野友哉・永谷幸人
    • 学会等名
      第37回日本植生史学会大会・日本花粉学会第63回大会合同大会
  • [学会発表] 沖縄県新城下原第二遺跡出土のイノシシもブタなのか?2022

    • 著者名/発表者名
      新美倫子・玉城綾
    • 学会等名
      日本動物考古学会 第9回大会
  • [図書] 日本人の起源2022

    • 著者名/発表者名
      篠田謙一
    • 総ページ数
      295
    • 出版者
      丸善出版

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公開日: 2023-12-25  

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