今後の研究の推進方策 |
これまでのところ、k-means法を用いたクラスター解析では専門家の分類基準と大きな乖離がみられ、その原因を追求する。クラスターの大きさが不均一でも対応可能、かつメモリ効率が良好なクラスタリング手法として、Topological Mode Analysis Tool(ToMATo)の利用を検討する。個体差が大きい(外れ値の)須恵器, 複数の型式・年代の特徴を併せ持つ須恵器が存在する可能性も考えられるためである。外れ値に関しては, DBSCANやOPTICSなどの外れ値を扱えるクラスタリングアルゴリズム, 複数のクラスタを割当て可能なFuzzy c-meansなどファジイクラスタリングアルゴリズムの適用を検討している。 今回の解析で明らかになった課題は, voxelデータで須恵器を再構築(再現)した場合, 現行のvoxel化の手法では実寸・法量が反映されていない問題である。解決策としては前述VXelementsアプリケーションで法量・寸法をエンティティデータとして汎用フォーマット(igs,stp,csv等)にて出力し, それをvoxelデータに反映させる方法がある。具体的には, 例えばvoxelの単位を1mm立方体として固定定義し, エンティティデータから須恵器を1mm立法体voxelとして再構築する方法である。 現在の解析では東京国立博物館所蔵の完形・略完形の須恵器を対象としているため, サンプル数が蓋で49, 身で59と数理・データサイエンスの解析用としては非常に少ない問題がある。 今後は各地の窯跡の良好な資料のデータを収集したいと考えるが, 往々にして窯跡資料は欠損や歪みが大きい資料が多い。そのため窯跡に限らず, 古墳や集落遺跡から出土した, 完形かつ歪みが少ない良好な資料についても分類の基準となるデータ(教師データ)として収集したいと考えている。
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