研究課題/領域番号 |
22H00751
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
奈良間 千之 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50462205)
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研究分担者 |
飯田 佑輔 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10706328)
田殿 武雄 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 第一宇宙技術部門, 研究領域主幹 (50553351)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 氷河湖 / 氷河 / 氷河湖決壊洪水 / 天山山脈 / 岩石氷河 |
研究実績の概要 |
本研究では,「短命氷河湖」に関するハザードの理解とその災害軽減を目的に,3つの課題に取り組んでいる.1)衛星データとAI深層学習による「短命氷河湖」のモニタリング手法の開発,2)現地調査と衛星データ解析による危険な「短命氷河湖」を特定するハザードレベルの新評価基準の提案,3)現地調査と衛星データ解析による短命氷河湖が出現するモレーンコンプレックスの内部構造の解明である. 1)衛星データとAI深層学習による「短命氷河湖」のモニタリング手法の開発については,深層学習「CNN(畳み込みニューラルネットワーク)構造」を用いた氷河湖認識に取り組み,対象地域の小規模氷河湖においても80%の精度で氷河湖を自動で認識できることができた.本研究では,これまでの研究を発展させ,急速に拡大,消失を起こす短命氷河湖の面積変化の自動算出を目的とし,深層学習を用いたセグメンテーション技術を用い,氷河湖面積の自動計測手法の確立に取り組んだ.作成したデータセットを用いてモデルを学習させ,評価指標を算出した結果,モデルの学習不足により十分な氷河湖面積の検出精度を得ることはできなかった. 2)現地調査と衛星データ解析による危険な「短命氷河湖」を特定するハザードレベルの新評価基準の提案として,昨年の9月に現地調査をおこない,テスケイ山脈のコルムドゥ氷河湖に自動気象観測機器を設置し,氷河上でドローン空撮,氷河の融解量観測のためのステークを5本設置した.また,コルムドゥ氷河湖,ゴルトール氷河湖1,2でドローン空撮と水位計の設置をおこなった. 3)現地調査と衛星データ解析による短命氷河湖が出現するモレーンコンプレックスの内部構造の解明については,今年度は主に衛星画像解析により氷河起源型岩石氷河の形成環境の解析を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)衛星データとAI深層学習による「短命氷河湖」のモニタリング手法の開発について,深層学習により氷河認識は可能になったが,精度よい自動面積算出までを達成できなかった.2)現地調査と衛星データ解析による危険な「短命氷河湖」を特定するハザードレベルの新評価基準の提案について,自動気象観測機器,水位計,ステーク,タイムラプスカメラを設置し,ドローン空撮や気温・タイムラプスカメラ・水位計のデータを回収できた.氷河の融解量により氷河湖が出現する環境について理解が深まった.3)現地調査と衛星データ解析による短命氷河湖が出現するモレーンコンプレックスの内部構造の解明について,コロナ禍の影響により十分な現地調査を実施できなかったが,衛星画像解析で氷河起源岩石氷河が形成される環境が明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
1)衛星データとAI深層学習による「短命氷河湖」のモニタリング手法の開発について,深層学習により精度よい自動面積算出を実現するため,モデルの学習数を増やし,さまざまな環境の画像をインプットすることで精度を上げる予定である. 2)現地調査と衛星データ解析による危険な「短命氷河湖」を特定するハザードレベルの新評価基準の提案について,7月と9月に現地調査を予定しており,昨年度に設置した自動気象観測機器,水位計,タイムラプスカメラのデータ回収,ステークの再測をおこなう.テスケイ山脈北部の融解量を算出する. 3)現地調査と衛星データ解析による短命氷河湖が出現するモレーンコンプレックスの内部構造の解明について,7月にキルギス山脈のアドギネ氷河において地中レーダーと二次元電気比抵抗探査で内部構造を調べるとともに,ドローン空撮で数年間の流動調査を実施予定である.
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