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2023 年度 実績報告書

東京首都圏における気温分布と局地風系場の構造および変動性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22H00756
配分区分補助金
研究機関東京都立大学

研究代表者

高橋 日出男  東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (40202155)

研究分担者 三上 岳彦  東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員教授 (10114662)
菅原 広史  防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 教授 (60531788)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード都市気候 / 海陸風 / 鉛直気温分布 / 水平気温分布 / 東京 / 関東平野
研究実績の概要

①関東平野では,海からの北東~東風が西部や北部の山地でせき止められ,大気下層に寒気の溜まりが形成されることがある(Cold-air damming,CAD)。南岸低気圧の接近に伴い,関東平野の気圧・気温場にCADの特徴が認められ,東京都心で日照時間が0時間であった2020年1月27~28日の事例により,東京都心の温度プロファイラデータから予察的に高度1000mまでの気温鉛直分布を調べた。その結果,まず下層ほど大きく気温が低下し,その後低気圧の接近に伴って上層で気温が上昇するが,高度400m以下の気温上昇は小さく,その上空には明瞭な逆転層が形成された。この時,関東平野西部の地上では北北西風が吹走しており,内陸からの寒気に伴い下層の気温上昇が抑制されたことが想定され,薄い内陸寒気の特徴の一端が捉えられた。
②局地風循環の出現が期待される晴天弱風日を抽出し,関東平野における日中の発散場に基づいて風系を5類型に分類した結果,各類型は,一般場の気圧傾度との関係が認められた。日本の南への太平洋高気圧の張り出しが強く,北向きの気圧傾度が大きい風系では,日中の地上風系は南寄り海風が卓越し,東寄り海風は弱かった。このような日には,鹿島灘沿岸や内陸部で顕著に高温となる一方,関東南部における午後の昇温は相対的に抑えられるなど,風系によって気温分布に差異が認められた。南寄り海風が卓越する風系の出現頻度は近年やや増加傾向にあり,南岸の高気圧が強い気圧配置型の出現頻度増加と対応すると考えられた。
③本研究で観測している百葉箱の気温(広域MRTROS)と埼玉県内の27消防本部における熱中症による救急搬送者数の1時間ごとの日変化を解析したところ,埼玉県南部より北部で日最高気温の起時が1時間程度遅れることに対応して,熱中症の救急搬送者数のピークも県南部より県北部の方が1時間遅れていることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度(2022年度)の解析に際して,気温鉛直分布を観測した温度プロファイラの1台に経年的なセンサの感度変化が認められたことから,測器メーカに補正を依頼していた。2023年度後半に補正が完了したため,現在改めて再解析を実施中である。一方で,これまで観測的にほとんど捉えられていなかったCold-air damming(CAD)に関連する下層の寒気構造について新たに温度プロファイラデータを用いた解析を実施し,関東平野内陸から北北西風が吹走する場合における気温鉛直分布の特徴や時間変化の一端を捉えることができた。また,南関東の小学校百葉箱等に設置した温度ロガー(広域METROS)のデータ回収と器差補正,データベース化は予定どおり進行している。さらに,関東平野の気温分布と海風との関係,また関東平野内陸部の夏季高温発現について解析を進め,広域METROSなど稠密観測データを用いた解析により一定の成果を得ている。
以上のことから,本研究は概ね順調に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

東京を中心とする気温分布と逆転層や局地風循環との関係については,都区部西部で逆転強度が大きい事例を抽出し,各事例ごとに逆転層上端の気温変動と地上風の風向風速との対応を,タイムラグを考慮した相関分析などによって調べる。東京の境界層構造に与える中部山岳の影響については,温度プロファイラの観測期間中における原田渦の影響事例を判別し,気象庁局地客観解析データなどを用いて気温の鉛直構造と関東平野の風系や気温分布の立体構造との関係を解析・検討する。その際に原田渦の挙動と海陸風との関係にも着目し,気温分布に与える影響を考察する。埼玉県南部の高温域と海風循環との関係についても,稠密な風向風速や気温などの観測データ,また気象庁局地客観解析データなどを援用して現象の把握を行う。上記のほか,2023年度に事例解析を実施した,北高南低型の気圧配置時に発現する関東平野のCold-air damming(CAD)に伴う寒気層の構造についても解析を進める。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Vertical Development Speed of Shallow Radiation Fog2024

    • 著者名/発表者名
      Tanahashi Rieko Y.、Misawa Ryota、Sugawara Hirofumi
    • 雑誌名

      SOLA

      巻: 20 ページ: 102~107

    • DOI

      10.2151/sola.2024-014

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The climatology of cold‐air damming in the Kanto Plain, Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Sengoku Kazumasa、Takahashi Hideo、Fujibe Fumiaki、Takahashi Hiroshi G.
    • 雑誌名

      International Journal of Climatology

      巻: 44 ページ: 253~268

    • DOI

      10.1002/joc.8326

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 日平均気温の年変化における段階的な季節遷移2024

    • 著者名/発表者名
      高橋日出男
    • 学会等名
      2024年日本地理学会春季学術大会
  • [学会発表] 長野県諏訪地域における塩嶺颪の風速分布推定と日変化特性2024

    • 著者名/発表者名
      五味すみれ・高橋日出男
    • 学会等名
      2024年日本地理学会春季学術大会
  • [学会発表] 小学校百葉箱を利用した気温の定点観測とその課題2024

    • 著者名/発表者名
      三上岳彦
    • 学会等名
      2024年日本地理学会春季学術大会都市気候環境研究グループ例会
  • [学会発表] 関東南岸に形成される局地低気圧の特性2023

    • 著者名/発表者名
      原田健生・高橋日出男
    • 学会等名
      第77回気候影響・利用研究会
  • [学会発表] 関東平野の夏季局地風系に影響を及ぼす気圧場の特徴2023

    • 著者名/発表者名
      瀬戸芳一・高橋日出男
    • 学会等名
      日本気象学会2023年度春季大会
  • [学会発表] 関東沖収束線上に形成される局地低気圧の気象場解析2023

    • 著者名/発表者名
      原田健生・高橋日出男
    • 学会等名
      日本気象学会2023年度春季大会
  • [学会発表] How should the anthropogenic heat be treated in the urban canopy model?2023

    • 著者名/発表者名
      Sugawara Hirofumi
    • 学会等名
      11th International Conference on Urban Climate
    • 国際学会
  • [学会発表] 都市気候におけるいくつかの誤解について2023

    • 著者名/発表者名
      菅原広史
    • 学会等名
      日本ヒートアイランド学会第18回全国大会
  • [学会発表] 夏季晴天日の関東平野における局地風系の類型と気温分布の特徴2023

    • 著者名/発表者名
      瀬戸芳一・高橋日出男
    • 学会等名
      2023年日本地理学会秋季学術大会
  • [学会発表] 埼玉県内における熱中症の救急搬送者数の地域性―気温や暑さ指数の観測データからの一考察―2023

    • 著者名/発表者名
      大和広明
    • 学会等名
      2023年日本地理学会秋季学術大会
  • [学会発表] 東京都内で夏季に発生した短時間強雨時における地上風収束の特徴2023

    • 著者名/発表者名
      瀬戸芳一・高橋日出男
    • 学会等名
      2023年日本地理学会秋季学術大会都市気候環境研究グループ例会
  • [学会発表] 関東平野におけるcold-air damming発達時の地上風系2023

    • 著者名/発表者名
      仙石和正・高橋日出男
    • 学会等名
      日本気象学会2023年度秋季大会
  • [学会発表] Characteristics of local wind patterns and temperature distribution in sunny summer days over the Kanto Plain, Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Seto Yoshihito, Takahashi Hideo
    • 学会等名
      The 15th Korea-China-Japan Joint Conference on Geography
    • 国際学会
  • [学会発表] 日平均気温の年変化における不連続的遷移: 日本を対象とした予察的解析2023

    • 著者名/発表者名
      高橋日出男
    • 学会等名
      第78回気候影響・利用研究会
  • [図書] The Climate of Japan: Present and Past2023

    • 著者名/発表者名
      Mikami Takehiko
    • 総ページ数
      210
    • 出版者
      Springer

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公開日: 2024-12-25  

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