研究課題/領域番号 |
22H00775
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 芦屋大学 |
研究代表者 |
窪田 幸子 芦屋大学, 臨床教育学部, 教授 (80268507)
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研究分担者 |
栗本 英世 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構本部, 大学共同利用機関等の部局等, 理事 (10192569)
井野瀬 久美惠 甲南大学, 文学部, 教授 (70203271)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 先住民 / 少数者 / ネオエンライトメント / 和解 / 謝罪 / 歴史 / 記憶 / 返還 |
研究実績の概要 |
本年度も2~3ヶ月に1回の研究会を開催し、研究協力者を含め全員が、研究の基盤となる議論を共有することが可能となった。分担者の井野瀬は、奴隷制度廃止200周年(2033)に向かうイギリス、とりわけかつて奴隷貿易の拠点であった3都市(リヴァプール、ブリストル、ロンドン)の顕彰状況の相互比較を行ってきているが、この科研でイギリスに注目する意義を発表し、全員で議論し、その重要さを確認した。そのうえで、研究代表者と分担者2名でのイギリスでの共同調査を行うこととした。初年度に主となる3名の代表者と分担者が北海道、沖縄で共同調査を行い、密な議論を重ねたことが、この研究の遂行と発展に大変に有効であることが確認されており、その方法をとるため9月末から10月にイギリス現地調査を実施した。調査では、大英博物館、オックスフォード大学人類博物館、リヴァプール大学などで、関係者へのインタビューを繰り返し、聞き取りをした。そのなかで、近年大きく展開つつある旧植民地との和解、謝罪、返還の動きを知ることができた。同時にここからこの研究をどう発展させるべきかとの議論も行った。各々の調査の成果は、年度後半の研究会で報告し、3月には研究協力者を含めての研究会を開催し、議論を重ねることで、次年度以降の研究の道筋が明確なものにする。 その一方で代表者と分担者は、それぞれに自分の調査地での研究も遂行してきている。代表者の窪田は、他資金で8月にオーストラリアの調査を行い、博物館を中心として、先住民との関係性がさらに大きく変化している実態を詳細に追った。栗本もアフリカにおける動向を追い続けており、これらを大きな世界的な視点からとらえることの重要性を共有した。井野瀬もまた歴史資料を精解し奴隷貿易後の変化を追った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの調査と共同研究によって、少数者、先住民と主流社会の関係性の変化が広い範囲で共有されつつ動いていことが分かってきた。それは、研究計画ので予想していた理解を大きく超え、具体的な返還、謝罪の動きが各国でうごいており、植民地時代の問い直しもさらに加速していると言えた。博物館、大学はその中心地となっており、イギリスでのこのような動きをを知ることで、より広いヨーロッパ、北米などの動き全体が垣間見えたといえる。この科研研究が注目してきた新啓蒙主義(ネオ・エンライトメント)がディコロナイゼーションの中で展開しているともいえそうである。今後さらに、ヨーロッパでの動きを追うことで、この研究の目的である少数者と主流社会の関係性の在り方の変化の実像を明らかにできると考えている。当初の計画以上に、この研究のパースペクティブが広く共有されていることが分かり、本テーマでの研究もかなりの可能性と将来性があることがわかってきた。これを踏まえて、調査をさらに進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
イギリスでの調査を踏まえ、研究代表者と分担者は、それぞれの専門領域での調査をおこない、比較の視点から各地の少数者と主流社会の関係性の変化について、さらに研究をつづけ、その結果を共有し、議論する。この年度の後半にはそれを持ち寄る形での研究会を開催し、議論の諸点を整理する予定である。研究協力者にもできるだけ加わってもらい、この次の将来的な研究計画につながることも考えたい。代表者の窪田は、1月にオーストラリアでの調査を予定している。井野瀬は、イギリスでの収集資料の精査から、研究発表につなげる。栗本もまた、アフリカの調査地での展開が、イギリス調査から見えてきた部分があり、これをさらに追及する予定である。そのうえで、3月にそれぞれの研究発表と、招待研究者にコメントをもらい、翌年度の調査につなげる予定である。
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