研究課題/領域番号 |
22H00812
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
稲増 一憲 関西学院大学, 社会学部, 教授 (10582041)
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研究分担者 |
三輪 洋文 学習院大学, 法学部, 教授 (20780258)
金子 智樹 東北大学, 法学研究科, 准教授 (50943487)
小林 哲郎 早稲田大学, 政治経済学部, 教授 (60455194)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | メディア / テレビ / インターネット / 培養理論 / 因果推論 |
研究実績の概要 |
2023年度は前年度にCrowd Worksを通じて取得したWeb調査データを分析し、その結果を9月に開催された日本社会心理学会で報告した。ここで報告した主な知見としては、「培養理論研究の知見とは異なり、ミーンワールド症候群的な認知・価値観とテレビ視聴は正の関連を持っておらず、「暴言」とは負の関連を持つ」「・インターネット利用については利用内容により結果が異なっており、SNS利用が「侵略」と正の関連を持つ一方で、ミーンワールド尺度とは負の関連を持っており、SNS・動画以外のインターネット利用が、「暴力」「侵略」と正の関連を持つ一方で、ミーンワールド尺度とは正の関連を持っていた」「異なる尺度に含まれる質問項目・因子のうち、庶民としての感覚を重視することと関連する項目が、いずれもテレビ視聴時間と正の関連を持っていた」といったものである。 少なくとも現代の日本ではテレビがミーンワールド症候群をもたらすとは考えられない。一方で、インターネットサービスについての知見からみると、「暴力に満ちた」という世界観と「冷たい(他者を信頼できない)」という世界観は分けて考える必要があるといえる。また、自分達をエリートや富裕層と対置した庶民という存在として認識する世界観が、テレビ視聴によって培養される可能性が示唆された。 上記の知見を踏まえた上で、2023年11月にLancersを通じて2回目のWeb調査を行い、メディア利用が関連し得る変数として、新たに正当世界信念をピックアップした。 2024年3月に、これらの2回の調査結果を元にしたWeb調査を行った。この調査はインテージ社のシングルソースパネルを利用したものであり、2024年2月中のメディアへの接触ログ(テレビ、PCモバイルによるインターネットサイト利用)と質問項目への回答(人々の価値観)を紐づけた分析が可能になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クラウドソーシングサービス(クラウドワークス, ランサーズ)を利用したサンプルサイズ1500程度のプリテストを複数回実施することで、メディア利用と関連しうる変数として、ミーンワールド症候群、政治過程の単純化、(エリートと自身を対置する)庶民感覚、公正世界信念を特定することができた。 このプロセスに1年以上がかかったことで、大学生を対象とした縦断調査の開始を申請段階よりも1年遅らせることになった。しかし、2024年度には問題なく実施可能である。この点は2022年度の実績報告において記した通りの進捗状況である。 また、本研究における主要な調査であるインテージ社のシングルソースパネルを利用したWeb調査の実施については、予定通り2023年度に実施することができた。これにより、2024年2月中のメディアへの接触ログ(テレビ、PCモバイルによるインターネットサイト利用)と質問項目への回答を紐づけた分析を行うことが可能になっている。 加えて、本プロジェクトに基づく学会報告・査読付き論文が発表されていることからも、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
大学生の時期は、たとえば実家から通学していれば、「お茶の間」でテレビを視聴したり、家族が定期購読している新聞を読むといった形でマスメディアに触れる機会も多いと考えられるが、1人暮らしであればインターネットのみが利用メディアとなる可能性も高い。また、学科やアルバイト先、サークルといった所属コミュニティにより利用するサービスが大きく異なるなど、メディア利用の分散が大きいと考えられる。そこで、大学生に対して、縦断調査を行うことで、大学生という時期におけるメディア利用による価値観の変化について研究を行う。 2024年度はこの縦断調査の第1波として、首都圏・近畿圏の大規模私立大学における講義の時間中に、調査票回答用URLが含まれる用紙を配布し、Web形式での調査を行う。調査において用いる価値観変数は、2023年度にインテージ社を通じて実施したWeb調査から、大学生における価値観を測定する上で有効だと思われるものを抜粋する。なお、この研究では、交絡変数により条件づけたメディア利用確率の逆数を用いた重みづけにより内生性の問題に対処する周辺構造モデルを用いる (e.g. Blackwell, 2013)。 また、2023年度に取得したデータの分析を行った上で、2024年5月に開催される日本選挙学会で報告を行う。学会での参加者からのコメントを元に研究のブラッシュアップを行った上で、その研究を学会誌に投稿することを目指す。
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