研究課題/領域番号 |
22H00873
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
軽部 大 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (90307372)
|
研究分担者 |
内田 大輔 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (10754806)
米倉 誠一郎 法政大学, イノベーション・マネジメント研究科, 教授 (00158528)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 資源制約 / 資源動員 / 創業 / 人的ネットワーク / 起業家精神 |
研究実績の概要 |
本研究は、新興企業ゆえの脆弱性と資源動員の間に存在する多様なトレードオフ関係を同定し、その克服メカニズムを実証的視点から解明することにある。具体的には、日本における新興企業を対象に、(a)創業前から創業までの期間、(b)創業後から上場までの期間、そして(c)上場後の期間という3つの成長フェーズに分けて、フェーズ別の新興企業各社の資源動員に関わる障壁の同定と、フェーズ別の克服メカニズムをそれぞれ同定することを目的とする。 2022年度の研究成果は、次の4点に集約することができる。第一に、フェーズ別の経営課題を具体的に検討するために、1999年から2020年3月末までにJASDAQ、マザーズあるいはその他地方新興市場に過去一度でも上場した1324社に関する分析データを構築したこと。第二に、上場前の資源動員に関わる経営課題を考察するために、アクセラレータプログラムが果たす役割について特に注目し、組織学習の観点からアクセラレーターの経験がスタートアップの育成において果たす役割について検討した。具体的には、日本のアクセラレーター38社およびプログラム参加スタートアップ企業813社のデータを用いた実証分析を実施し、アクセラレーターの経験は,十分な資金調達に至っていない初期のスタートアップを支援する場合にのみ、スタートアップ企業の資金調達に寄与することを明らかにした。第三に、上場した新興企業の起業ネットワークを検討するために、新規上場に成功した企業1258社の創業に関与した1512名の創業者に注目し、その創業者の属性、キャリアパス、創業のタイミング、創業者の前職組織などを同定した。また、第四に、同様の分析を1266社の上場に関与した非創業者を構成する取締役延べ7262名を対象として実施し、創業過程で、特定の大手企業群が起業過程に寄与する程度が小さくないことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的なデータ収集作業は初年度の2022年度に予定通り終了し、分析用のデータ構築についても基礎的なものは完了した。その結果、分析用データベースの構築を通じた研究成果は、3本の論文公刊に結実した。他方で、コロナ感染症の影響で、2022度に予定していた探索的なインタビュー調査ができなかった。この点については作業を加速する予定である。また、当初日本における外国人起業家についても検討する予定であったが、想定したほど適切なサンプルを収集できなかったため、日本人起業家(とその人的ネットワーク)に研究対象を絞りこむことも検討する。
|
今後の研究の推進方策 |
公刊資料を中心にしたデータ収集については2022年度に 大きく進捗しており、2023年度は、2024年度に実施する質問票調査(もしくは創業者への体系的なインタビュー調査)の予備調査を推進する予定である。 当初計画していた2022年度に実施予定のインタビュー調査は、コロナ感染症に付随した制約のため、部分的にしか実施できなかったため、2024年度に向けて2023年度再度準備を進める予定である。公刊資料に基づく独自のデータ分析を通じて、本研究では、2022年度に引き続き、創業前から創業までの期間、創業後から上場までの期間、上場後の期間という3つの成長フェーズに分けて、フェーズ別の新興企業の資源動員に関わる障壁およびフェーズ別の克服メカニズムをそれぞれ解明することを計画している。 具体的には、創業前後のシード期やアーリー期には、シードアクセラレータやエンジェルとどのように関係構築するか。創業後から上場に至る期間には、VCを中心とした利害関係者と、どのように関係構築し、結果として資源調達に成功するか。そして上場後においては、経営陣や利害関係者同士の対立をいかに克服し、アンダーパフォーマンスを克服する資源動員を実現できるのか、という一連の問いを立て検証を行う。 一連の分析は、定量分析と定性分析の両面から検討を進める予定である。特に2023年度には、個別の企業事例にも注目して、資源動員プロセスの企業間の相違についても考察を深める計画である。
|