研究課題/領域番号 |
22H00882
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
秋野 晶二 立教大学, 経営学部, 教授 (50202536)
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研究分担者 |
菊池 航 立教大学, 経済学部, 教授 (00710724)
山中 伸彦 立教大学, ビジネスデザイン研究科, 教授 (40339594)
黄 雅ブン 北星学園大学, 経済学部, 准教授 (50609914)
安田 直樹 立教大学, ビジネスデザイン研究科, 准教授 (70756981)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | GVC / グローバルバリューチェーン / ガバナンス / 調整 / サプライヤーチェーン |
研究実績の概要 |
研究代表者・分担者それぞれの理論研究・文献研究に加えて、専門の研究者からのアドバイス、国内外の企業や個人に対する聞き取り調査や収集資料に加えて、質問紙の本調査がおおよそ当初の予定通りに進んだ結果、理論面実態面の両面でGVCガバナンスが解明されてきた。とりわけ今年度は質問紙調査によって定量的研究が実施されたことにより、企業間調整の実態が定量的に明らかになってきた。 理論的研究においては、GVCガバナンス論の先行研究の検討と整理によって、企業間ガバナンスに影響を及ぼす従来の規定要因にとどまらず、重層的で多面的な要因が示されるとともに、これまで主流のガバナンス類型が拡張され、多様化してきていることが明らかになった。さらにA.D.Chandlerの近代企業における調整概念およびそれをめぐる一連の議論の延長に、GVCのガバナンス論を位置づけた。これによって現代のグローバル生産体制を歴史的に位置づける理論的枠組みを提起でき、本研究の実態研究の成果を総括する枠組みを示すことができる。 今年度は本研究の中心となる質問紙調査の本調査を実施し、定量分析を実施し、なお解析中である。まずガバナンス理論の説明に則った測定尺度の項目間に、理論的説明に適合的な関係が確認され得るか否かの検討を行った。つまりガバナンス規定要因の測定尺度項目の因子分析、項目間の相関分析・信頼性分析・検証的因子分析を実施し、暫定的に理論の経験的検証のための規定要因の尺度構成を定義する。次に取引関係の規定要因について探索的分析を実施し、取引関係を記述する項目として設計された項目の因子分析を行い、取引関係を規定している潜在的要因を探索し、代替的な理論的仮説を検討する。次年度も引き続き解析を進めるが、GVCガバナンス研究の定量的研究が不足しているので本研究の意義は少なくないと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究会を7回実施し、研究代表者・分担者それぞれの研究報告、研究の予定と進展・成果の報告がなされた。また自動車産業の調達業務の経験を持つ研究者およびEVにおけるサプライヤーシステムの研究者2名の専門家を講師に招聘し、各講師の実務経験および研究経験から、本研究のアプローチや調査についてアドバイス、コメントをもらった。研究会および講師からのレクチャーは予定通り実施され、順調に進められた。 訪問調査については、まず国内調査は、合計5社に対して、対面あるいはオンラインによって実施された。訪問先企業のご都合により調整ができなかった企業もあり、当初の予定より少なかったが各調査からは貴重な聞き取りが実施できた。海外調査では、当初予定とは異なり、2度にわたり台湾の台北・新竹への調査を実施した。企業や個人、各種機関に対してのべ10か所への訪問と聞き取りを実施し、貴重な資料収集も実施した。海外調査を2度の台湾調査に切り替えた結果、より深く広範な調査と資料収集を実施することができた。そのため当初の予定とは異なったが、おおむね海外調査も順調に進めることができた。 質問紙調査については、予定よりも多くの企業に対して本調査が実施できた。調査後は、クロス分析を中心に第一次調査報告書を作成したうえで、質問項目の因子分析、項目間の分散分析、主要顧客のガバナンス行為とガバナンス規定要因との重回帰分析、ガバナンス類型の分布、ガバナンス類型間のガバナンスの差の検証、ガバナンス類型と主要顧客のガバナンス行為との関係に関する重回帰分析などの定量分析を進め、現在、解析中である。このように質問紙調査は、当初の予定通り分析が進められている。 以上のことから本研究プロジェクトは、初年度の計画とは若干変更した点もあるが、ほぼ当初の予定を実行し、さらに調査の充実を図っており、進捗状況は全体としておおむね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度が本研究の最終年度であることを念頭に、今後の研究の推進目標としては、各研究員の研究課題の成果を出すとともに、それらで得られた知見を総合し、最終的な本研究の全体的な総括を行うことを目標とする。 そのため、まず研究会(6回程度)において各自が成果報告を実施し、研究員間での議論を通じてその確認・検討・発展と共有を行う。加えて、関連テーマを深めるために専門家に講師を2回程度依頼し、レクチャーとアドバイスを受ける。また例年通り、実態の把握と研究の確認・補完のために国内外での企業等へのインタビュー調査を実施する。国内については4-6件(含:オンライン)、海外については台湾にて同様に6-7件程度の調査を実施したい。 また今年度実施した質問紙調査と理論研究・聞き取り調査に基づいて、共著論文を執筆する。そのためにまずは国際学会にてこの研究成果の発表を行う。(現時点では、11月にインドで開催される予定のEAMSAでの報告を予定している。)この報告により国内外から広く意見・アドバイスを得て、より完成された論文として共著論文を作成し、これを海外ジャーナルに投稿する予定である。 なお本研究をより充実させるために、当初の予定にはない質問紙調査を次年度も実施する。今年度の質問紙調査はサプライヤーを対象にした調査であり、GVCガバナンスを主導しているリード企業に対しては実施していない。そこでこれまでの調査を補完し、より充実した研究を実現するためにも次年度はリード企業に対する質問紙調査を8月をめどに実施する。その際、リード企業数が少なく、予算不足も予想されるため、リード企業のSCM担当者を対象にWEB調査にて実施する予定である。 最後に研究代表者・分担者は本研究活動を通じて得た知見を適宜論文執筆や学会報告で公開するとともに、それらを研究会などを通じてメンバー間で共有しながら、本研究全体を進めていく。
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