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2022 年度 実績報告書

アフリカ在来知の実践的研究――持続可能な共生社会の実現のために

研究課題

研究課題/領域番号 22H00920
配分区分補助金
研究機関四天王寺大学

研究代表者

田原 範子  四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (70310711)

研究分担者 波佐間 逸博  東洋大学, 社会学部, 教授 (20547997)
松田 素二  総合地球環境学研究所, 研究部, 特任教授 (50173852)
榎本 珠良  明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 特任教授 (50770947)
梅屋 潔  神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80405894)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2027-03-31
キーワードアフリカ在来知 / コンヴィヴィアリティ / ウブントゥイズム / 共生原理 / ウガンダ / カメルーン / ガーナ / 南アフリカ共和国
研究実績の概要

本研究の目的は、アフリカにおけるフィールドワークをとおして、①他者との連帯・協同にかかわるローカルな実践、②人間、動物、自然を含めた他者との共生をはかるアフリカ在来知を明らかにすること、こうして得られた成果により、③多様な人びとが共に暮らすことを可能とする共生原理を解明することである。社会的格差拡大と不寛容性の高まる現代社会において、アフリカ在来知を基盤とする共生原理を提言することにより、社会的包摂にかかわる現代的課題への解決に貢献しようとするものである。
2022年度は、地域住民たちの生業にかかわる人・モノ・自然の循環的ネットワークを明らかにすることを試みた。田原は、ウガンダ・西ナイルの漁労社会とガーナ・アシャンティ州における農耕社会、波佐間はウガンダ北部モロト近辺の牧畜社会、榎本は、ウガンダ北部の紛争後社会、研究協力者森口は、ウガンダの首都カンパラのスラムにおいてフィールドワークを実施した。その成果として、牧畜・漁労・農耕・紛争後の社会においては、生業活動において自然や動物やモノを含めた他者と共生する状況の一端が明らかになった。とりわけスラムや境界地帯において、モビリティの高まりが加速されている。また各自のフィールドにおいてキーパーソンのライフヒストリーの聞き取り調査を進めている。
在来知の思想性・哲学性については、松田が中心となって理論構築を進めている。梅屋は研究協力者ニャムンジョと共にカメルーンにおける王族の儀礼に参加し、ジュジュ(juju)の哲学性について成果を報告した。研究協力者であるEria教授(マケレレ大学)、Kirumira教授(ステレンボッシュ高等研究所)、Senah教授(ガーナ大学)、Nyamnjoh教授(ケープタウン大学)と研究交流による連携を進め、フィールドワークにおける成果を共有とアフリカ在来知の理論化をはかる準備を行なった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

各自がフィールドワークを実施し、研究成果をあげることができている。
海外研究協力者との連携も順調で、ワークショップ等の企画を進めている。
アフリカ在来知の理論化については、端緒についたところであるが、 2023年度以降も研究会を開催して継続する予定である。

今後の研究の推進方策

2023年度は、田原・波佐間・森口・榎本・梅屋は、2022年度の成果に基づいて、生活の場におけるフィールドワークを継続し、在来知の活用についてさらなる研究を進める。具体的には、他者との相互作用にかかわる事例を収集すること、それにより特定したキーパーソンのライフヒストリーの聞き取り調査を継続することである。また文献研究と宗主国英国のThe National Archivesでアーカイヴワークを実施し、アフリカ在来知の通時的変化を明らかにすることを試みる。こうした研究成果については、研究会を開催し、情報共有をはかる。
2024年度は、2023年度までの研究成果をとおして、他者との「共生」の基盤にある原則を明らかにするために、海外研究協力者を含めて参加するワークショップの開催を企画する。各フィールドに観察される共生原理は、アフリカ在来知の多様性を反映するものであり、その解明においても多元的な方法で行う必要があると思われる。2025年度のワークショップ開催をとおして、〈コンヴィヴィアリティ〉〈ウブントゥイズム〉などのアフリカ哲学の概念を精緻化する。他者受容と葛藤の解決にかかわる在来知の理論化をはかる過程をとおして、アフリカ哲学の多様な存在を解明することができると推察される。こうした成果を、学術雑誌の特集号または書籍にまとめたいと考えている。2026年度は日本国内の学会においてアフリカ在住の研究協力者を招聘して、関係学会でアフリカ的「共生モデル」の分科会を開催し、研究成果公開を行う。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] What is at stake for us now?: From the Discussions on the “(draft)Ethical Guidelines for Research on the Ainu People2023

    • 著者名/発表者名
      Motoji Matsuda
    • 雑誌名

      JRCA Japanese Review of Cultural Anthropology

      巻: 23(1) ページ: 190-206

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Racism in the Development and Humanitarian Aid and Advocacy Sector2022

    • 著者名/発表者名
      Tamara Enomoto
    • 雑誌名

      国際武器移転史

      巻: 14 ページ: 9-16

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ロシア・ウクライナ戦争をめぐる言説における人種主義:歴史的・政治的背景と 危険な帰結2022

    • 著者名/発表者名
      榎本珠良
    • 雑誌名

      海外事情

      巻: 70(4) ページ: 58-72

  • [雑誌論文] 都市の記憶XIII 多重の犠牲者が突きつけたもの~広島三菱元徴用工被爆者問題から考える2022

    • 著者名/発表者名
      松田素二
    • 雑誌名

      平和文化研究

      巻: 43 ページ: 2-23

  • [雑誌論文] he Cultural Concepts of Poverty Narrated among Refugees in Central Uganda2022

    • 著者名/発表者名
      UMEYA, K. and KIRUMIRA , E. K. Obwavu
    • 雑誌名

      国際文化学研究

      巻: 58 ページ: 1-106

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Conviviality Created through Resilience: Cultivating the Imagination of 'Different Others' in the Leprosaria of Japan2022

    • 著者名/発表者名
      Noriko Tahara
    • 雑誌名

      Bouncing Back: Critical Reflections on the Resilience Concept in Japan and South

      巻: 1 ページ: 109-135

    • 国際共著
  • [学会発表] 世界史におけるアフリカを考えるーもうひとつの世界の見方とあり方ー2023

    • 著者名/発表者名
      松田素二
    • 学会等名
      文明構造の転換と日本の戦略
    • 招待講演
  • [学会発表] Discrimination in “Humanitarian Disarmament”: The Case of the Arms Trade Treaty2022

    • 著者名/発表者名
      Tamara Enomoto
    • 学会等名
      4th Biennial Conference of the African Studies Association of Africa (ASAA)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ハブとしてのスラムと大湖地域の移動民:カンパラ、N・スラムを事例に2022

    • 著者名/発表者名
      森口岳
    • 学会等名
      日本アフリカ学会第59回研究大会
  • [学会発表] ウガンダ・アルバート湖岸の漁村におけるコミュニケーションについての一考察2022

    • 著者名/発表者名
      田原範子
    • 学会等名
      日本ヒューマンリレーション学会
  • [図書] Bouncing Back: Critical Reflections on the Resilience Concept in Japan and South Africa2022

    • 著者名/発表者名
      Maho Araki, Tamara Enomoto, Kolawole Gbolahan, Toru Hamaguchi, Itsuhiro Hazama, Minga Mbweck Kongo, Masayuki, Komeyama, Kharnita Mohamed, Gaku Moriguchi, Zuziwe Msomi, Francis B. Nyamnjoh, Berni Searle, Marlon Swai, Noriko Tahara, Toshiki Tsuchitori, and Kiyoshi Umeya
    • 総ページ数
      438
    • 出版者
      Langaa RPCIG
    • ISBN
      9789956552238
  • [図書] アフリカ潜在力が世界を変える オルタナティブな地球社会のために2022

    • 著者名/発表者名
      松田素二、フランシスB ニャムンジョ、太田至
    • 総ページ数
      462
    • 出版者
      京都大学学術出版会
    • ISBN
      400011428X

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公開日: 2023-12-25  

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