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2022 年度 実績報告書

Cl-に着目した塩味受容メカニズムの解明とそれを起点とした減塩物質の獲得

研究課題

研究課題/領域番号 22H00945
配分区分補助金
研究機関東京大学

研究代表者

朝倉 富子  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (20259013)

研究分担者 成川 真隆  京都女子大学, 家政学部, 准教授 (50432349)
舟木 淳子  福岡女子大学, 人間環境科学研究科, 教授 (60219079)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード減塩 / 塩味受容体 / 塩化物イオン
研究実績の概要

本研究は、世界中で食塩の過剰摂取による健康の被害のリスクを低減させることが目的である。WHOが健康的な1日の食塩摂取量として5g/日を推奨している。しかし、日本人の現在の摂取量ははるかに多く、大幅な減塩が求められている。食塩の摂取量を減じるためには、塩味のメカニズムを明らかにすることからスタートし、クロライドイオンを認識する塩味受容分子TMC4を見出した。
TMC4は舌上の奥に存在する葉状乳頭および有郭乳頭に強く発現し、TMC4をKOしたマウスではNaCl、KCl、塩化アンモニウムなど、クロライドイオンを含む化合物に対する応答が低下していた。以上よりTMC4がクロライドイオンに応答し、少なくても塩味の一部に関わる分子であることが明らかになった。TMC4を活性化する分子は塩味を増強する可能性があることから、ホールセルパッチクランプ法を用いて既知の塩味増強剤かTMC4を媒介する電流を増大させるかを検証した。その結果、いくつかの塩味増強物質によってTMC4が媒介する電流をは増大した。このことからTMC4を用いた電気生理学的アッセイ方法による塩味増強剤のスクリーニングの可能性が示された。
本年度はホールセルパッチクランプ法は、ひとつのサンプルの測定に時間がかかり、多数のサンプルを処理できないことから本法の最適化をはかることにした。使用する細胞として、HEK、COS、HeLaなどが考えられた。そこで、これらの細胞を用いてアッセイの最適化を図った。また、トランスフェクションの方法についても検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

TMC4を用いたスクリーニング法をブラッシュアップするために、細胞の選択、培養時間、トランスフェクション試薬の検討、導入プラスミドの改変などを行い、アッセイ時間など効率が上がるか検討を行った。
用いる細胞はHEK、CHO、HeLaを検討したが、HEK293T細胞がTMC4の導入効率や増殖率が高いことが示された。トランスフェクション試薬は数種の市販のものを用いて検証したがリポフェクタミン3000が良好であった。TMC4を発現させるプラスミドでは、プロモーターを試したが、カリフラワーモザイクウイルス(CMV)がTMC4の高い発現を示した。培養時間は8~48時間の間で検討したが、24時間が良好な結果を得られた。2022年度の研究費を持ち越して研究を行うことになってしまったが、目標はおおむね達成できた。

今後の研究の推進方策

電気生理学的アッセイ方法以外のアッセイも検討する。
プロテオリポソームを作製し、マイクロ流路デバイスなどを用いて通過する電流を測定する。この方法を確立することができれば、今後、簡便なスクリーニングができる可能性が増す。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (8件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] 3-Guanidinyl Propanol Enhances Salt Taste via TMC4-Mediated Current2022

    • 著者名/発表者名
      Kasahara Yoichi、Yamashita Haruyuki、Narukawa Masataka、Abe Keiko、Asakura Tomiko
    • 雑誌名

      ACS Food Science & Technology

      巻: 2 ページ: 1213~1216

    • DOI

      10.1021/acsfoodscitech.2c00149

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mastication stimuli enhance the learning ability of weaning-stage rats, altering the hippocampal neuron transcriptome and micromorphology2022

    • 著者名/発表者名
      Yasuoka Akihito、Nagai Toshitada、Lee Seonmi、Miyaguchi Hitonari、Saito Yoshikazu、Abe Keiko、Asakura Tomiko
    • 雑誌名

      Frontiers in Behavioral Neuroscience

      巻: 16 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fnbeh.2022.1006359

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Genes related to cell wall metabolisms are targeted by miRNAs in immature tomato fruits under drought stress2022

    • 著者名/発表者名
      Asakura Hiroko、Tanaka Mayui、Tamura Tomoko、Saito Yoshikazu、Yamakawa Takashi、Abe Keiko、Asakura Tomiko
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 87 ページ: 290~302

    • DOI

      10.1093/bbb/zbac209

    • 査読あり
  • [学会発表] TMC4を介した3-グアニジルプロパノールによる塩味増強効果2023

    • 著者名/発表者名
      笠原洋一、成川真隆、山下治之、阿部啓子、朝倉富子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
  • [学会発表] 機械学習技術による前額部脳波を用いた基本味の評価2023

    • 著者名/発表者名
      町谷碧、森安珠、リュウイチョク、吉本秀輔、笠原洋一、上田玲子、阿部啓子、朝倉富子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
  • [学会発表] ダイズmiRNAによる結腸直腸癌リスク低減効果の期待2023

    • 著者名/発表者名
      豊田哲彰、齊藤芳和、笠原洋一、阿部啓子、朝倉富子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
  • [学会発表] 乾燥条件下で栽培したトマトの果実におけるトランスクリプトーム及びメタボローム解析2023

    • 著者名/発表者名
      朝倉浩子、田村倫子、平修、齊藤芳和、山川隆、阿部啓子、朝倉富子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
  • [学会発表] 精神的ストレスに伴う甘味嗜好性の調節メカニズムの解析2023

    • 著者名/発表者名
      田中まゆひ、Rarrana Jearakul Nawarat、箕越靖彦、朝倉富子、中島健一朗
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
  • [学会発表] 離乳期ラットにおいて咀嚼刺激が視床下部-下垂体系を介して心拍動の制御に及ぼす影響2023

    • 著者名/発表者名
      李善美、栃内亮太、安岡顕人、永井俊匡、齊藤芳和、桑原正貴、阿部啓子、朝倉富子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
  • [学会発表] 塩味受容に関与する新規分子のTMC4の同定2022

    • 著者名/発表者名
      成川真隆、笠原洋一、石丸喜朗、三坂巧、阿部啓子、朝倉富子
    • 学会等名
      日本食品科学工学会第69回大会
  • [学会発表] 塩味受容分子TMC4は新規電位依存性のクロライドチャネルである2022

    • 著者名/発表者名
      笠原洋一、成川真隆、三坂巧、阿部啓子、朝倉富子
    • 学会等名
      日本食品科学工学会第69回大会
  • [図書] 医学のあゆみVol.2812022

    • 著者名/発表者名
      笠原洋一、成川真隆、朝倉富子
    • 総ページ数
      2
    • 出版者
      医歯薬出版株式会社
  • [図書] 化学と生物Vol.602022

    • 著者名/発表者名
      成川真隆、笠原洋一、朝倉富子
    • 総ページ数
      3
    • 出版者
      公益財団法人日本農芸化学会
  • [図書] 日本味と匂学会学会誌2022

    • 著者名/発表者名
      成川真隆、笠原洋一、朝倉富子
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      日本味と匂学会
  • [図書] The Journal of Physiological Sciences 722022

    • 著者名/発表者名
      kasahara Yoichi, Narukawa Masataka, Takeuchi Ayako, Tominaga Makoto, Abe Keiko, Asakura Tomiko
    • 総ページ数
      2
    • 出版者
      The Journal of Physiological Sciences

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公開日: 2024-12-25  

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