研究課題/領域番号 |
22H00953
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
神谷 重樹 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60379089)
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研究分担者 |
亀井 保博 基礎生物学研究所, 超階層生物学センター, RMC教授 (70372563)
立花 太郎 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (80311752)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生活習慣病 / 歯周病 / メダカ / NASH / 骨粗しょう症 / 糖尿病 / 食品成分 |
研究実績の概要 |
本年度は非アルコール性脂肪肝炎(NASH),骨粗しょう症の疾患モデルを確立し,解析を行った。NASHモデルメダカでは,2-3ヶ月齢のCabメダカに12週間通常食(ND)または高脂肪食(HFD)を投与し,肝臓を採取して形態学的解析,組織学的解析,GC/MSによる脂肪酸分析,脂質代謝遺伝子・炎症性サイトカインの遺伝子発現解析を行った。また,同時に採取した腸管内容物を用いて腸内細菌叢解析を行った。その結果,ND群と比較してHFD群では,肝臓の組織切片のHE染色や脂肪染色から脂肪の蓄積や細胞の風船化変性が認められた。またGC-MSによる肝臓中の全脂肪酸量の分析では脂肪酸量の増加,特にパルミチン酸の増加が認められた。腸内細菌叢解析からは,ND群とは全く異なる細菌叢構造であり多様性の低下が認められ,dysbiosisの状態であることが示唆された。一方,骨粗しょう症モデルでは,トリプトファン水酸化酵素(tph2)を欠損した3ヵ月齢および6ヵ月齢メダカ(tph2-/-)を,麻酔下で屠殺してホルマリン固定し, X線トモグラフィーを使用して骨構造を評価した。また骨質を評価するため,屠殺したメダカを解剖し骨を回収して,原子吸光光度法により骨のカルシウム含量を測定した。その結果,tph2-/-メダカでは加齢に伴い明らかな骨の湾曲がみられ,骨のカルシウム含量の低下傾向が見られた。また,これら生活習慣病モデルへの歯周病原細菌の影響を調べるために,メダカへ投与方法の検討を行った。まず,メダカ生餌であるアルテミアを用いて慢性歯周病の病原細菌であるP. gingivalis(Pg)を取込ませ,これを透明メダカ(SKII)に投与すると,蛍光標識したPgが腹部,解剖すると腸管上部に蛍光が検出された。また液体培養したPgを加熱殺菌したのち,凍結乾燥して,混餌することにより投与したところ,問題なく摂食することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで当初計画していた3つの生活習慣病モデルのうち2つのモデルをほぼ確立できており、病態の評価方法もほぼ確立できている。また歯周病原細菌による病態への影響を評価するために、菌の投与方法を検討し,投与の方法も確立している。
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今後の研究の推進方策 |
今後,さらに歯周病原細菌の影響を調べるために他の投与方法も検討する。また生活習慣病モデルとして確立できた NASHモデルメダカと骨粗しょう症モデルメダカについては,上記の2つの投与方法をもとに増悪化するかどうかを調べる。病態の評価については,免疫染色などの方法を新たに用いるために,マクロファージの表面タンパクに対する抗体や破骨細胞マーカータンパクに対する抗体を分担者と協力して作製する。またレプチン受容体ノックアウトメダカ(LepR-KO)を使い,ブラインシュリンプを餌として28週間飽食給餌することにより,糖尿病モデルメダカの確立を試みる。評価は28週後に体重,血中グルコース濃度,血中インスリンレベルを測定する。本モデルでは網膜症を合併するため,メダカ眼組織の組織切片のHE染色により組織像を評価して病態を判定する。さらにこれら3つの生活習慣病モデルについて,イメージングにより病態を解析できるように病態特異的な遺伝子のプロモーターの下流に蛍光タンパクを発現するトランスジェニックメダカ(NASH:肝線維化マーカータンパクのα-SMA遺伝子,骨粗しょう症:骨吸収マーカータンパクの酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ遺伝子,糖尿病:網膜症の発症・進展に重要な役割を持つ血管内皮増殖因子の遺伝子)を作製または入手する。
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