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2023 年度 実績報告書

政策的レリバンスと因果推論を重視した教職選択・教員供給に関する総合的実証研究

研究課題

研究課題/領域番号 22H00963
配分区分補助金
研究機関東京大学

研究代表者

橋野 晶寛  東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (60611184)

研究分担者 町支 大祐  帝京大学, 公私立大学の部局等, 講師 (40755279)
川上 泰彦  兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70436450)
神林 寿幸  明星大学, 教育学部, 准教授 (70785279)
波多江 俊介  熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (70733715)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2027-03-31
キーワード教員政策 / 教員供給 / 教職選択 / 教員の労働環境 / 教員人材確保
研究実績の概要

本年度は、1)教職選択に関する調査データの分析・考察および成果発表、2)教員の労働条件の実証分析における方法論考察の成果発表、3)教員の労働環境に関する分析を行った。
1)について、前年度の行った30歳までの若年大卒者の教職選択に関する調査のデータ分析を行った。調査対象には教職を実際に選択しなかった者を含み、従来の教育学・心理学系の教職選択に関する知見とは異なり、教職を含むキャリア選択において労働環境に関する要因の重要性を明らかにした。また大学入学から就業までの間における教職志望度の変化や教職観と併せて分析を進め、速報的性質の大きいものではあるが、考察の成果を論文として発表した。
2)については、教員の労働環境のインパクトに関する分析における方法的改善に関する考察として、非従来的な識別戦略によるモデルを連続量の処置変数・非線形の処置効果を持つものへ拡張を図った。その成果発表は国際学会での報告によって行った。
3)については、主に研究代表者・分担者による。若年者の教職参入、若手教員の業務負荷、適応、離職といった一連の行動と労働環境との関連に関する分析を行った(論文4件、学会報告4件において成果発表)。また分析で得られた知見は次年度調査の調査項目に反映させる予定である。
これらの他に、30代の大卒者を対象とした大規模オンライン調査、前年度に引き続き、大卒者を対象としたオンライン調査を実施し、キャリア・ライフコース選択、教職観および労働関係法制の認識、認知的・非認知的能力に関する質問項目の検討を行った。現在このデータに関する分析の途上にあり、成果発表は2024年度に順次行っていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度の進捗に関しては、順調な進展が見られたと評価できる。本研究課題の初年度の作業として計画していた作業は、1)教職選択に関わる調査データ分析、2)教員の労働環境に関する実証分析の方法論的考察、3)教員の・労働環境に関する分析、4)30代の大卒者を対象とした教職選択に関するオンライン調査の実施である。
1)に関しては、主に研究代表者によってデータ整理・分析が進められ、論文によって成果発表がなされた。調査データの分析については、速報的な位置づけではあるが、重要な知見を提示することができた。また4)の異なる年代を対象とした調査データと併せた考察の展開が期待できるものとなった。
2)については、重要な成果を国際学会にて発表することができた。
3)に関しては、主に研究代表者・分担者によって若手教員の教職参入、業務負荷、離職と労働環境の関連に関して分析が行われ、論文・学会報告によって成果発表がなされた。若手教員の行動と労働環境要因との関連に関する多くの局面に着目して考察をすすめることができた点は顕著な進捗と言える。得られた知見については次年度以降の調査内容へ反映する。
4)に関しては、前年度の調査に加えて、30代の大卒者・大学院修了者(在学時に教職課程の履修経験者)を対象としたオンライン調査を実施した。この調査は1)の若年世代を対象とした調査を補完するものであり、質問項目の多くを共有しているため、教職選択行動の通時的変化を考察することが可能となった。2023年度末時点では、この採取したデータの分析・考察の途上にあり、本格的な分析は2024年度に行われる。

今後の研究の推進方策

2024年度以降の研究の内容は以下の4点から成る。第1は、教員継続・離職に関わるオンライン調査の実施・分析である。2022、2023年度に実施した調査の内容は主に教職参入を中心としたものであったが、この調査では教職就業経験がある者(現職教員および教職を離職した者)を対象とし、教職継続・離職に関わる詳細な情報を得る。その上で労働環境や家族形成等の当事者の企図・経歴等の要因が継続・離職に及ぼす影響を生存分析によって明らかにする。この調査の実施およびデータ分析は2024年度に行う。
第2は、教員人材確保策に関する政治的支持に関する調査の実施、あるいはその実施に向けた準備である。海外の教育政策・財政の比較政治学的研究では、財政的制約下での政策間の優先度を明示的な研究対象とした調査・サーヴェイ実験が行われている。それらの先行研究を参照しつつ、本研究課題の教員政策に焦点化したオンライン調査を2025年度に行うことを企図している。2024年度はその準備として先行研究の検討と併せて調査設計を行う。
第3は、教職選択に関する2次データ分析であり、2022年度に行った研究について近く公表予定の国際学力調査の直近の調査回のデータを加えた再分析を行い、加えて、東京大学社会科学研究所データアーカイブ中の高校生・大学生の進路選択に関わる調査データを活用し、都道府県レベルデータを組み合わせながら教職選択・教員養成学部選択に関するミクロデータによる計量分析を進める。
第4は、現職教員を代表者としたインタビュー調査の実施である。学校種・教員経験年数の異なる現職若手~中堅教員および教職大学院所属で現職教員と交流の多い研究者に対してインタビュー調査を行い、日々の業務遂行(教科指導・生徒指導)および長期的な力量形成において基盤となる・重要であると認知している要素(教職に就く前の時点での能力・経験)の情報を得る。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 教員の職場適応に及ぼす出身学部の影響に関する考察2024

    • 著者名/発表者名
      橋野晶寛
    • 雑誌名

      東京大学大学院教育学研究科教育行政学論叢

      巻: 43 ページ: 65-75

  • [雑誌論文] 若年大卒者を対象とした教職選択に関する調査 : 集計結果概要と今後の分析に向けて2024

    • 著者名/発表者名
      橋野晶寛
    • 雑誌名

      東京大学大学院教育学研究科教育行政学論叢

      巻: 43 ページ: 77-91

  • [雑誌論文] 小学校管理職とジェンダー研究の展望-都道府県の違いに着目して2024

    • 著者名/発表者名
      寺町晋哉, 跡部千慧, 瀨川朗, 高島裕美, 波多江俊介, 濱貴子, 楊川
    • 雑誌名

      宮崎公立大学人文学部紀要

      巻: 31(1) ページ: 53-76

  • [雑誌論文] 教員の労働時間削減をどのように進めるか?―学校や個人で行える取組を考える―2023

    • 著者名/発表者名
      神林寿幸
    • 雑誌名

      埼玉教育

      巻: 77 ページ: 10-11

  • [雑誌論文] 若手教員をとりまく労働環境と制度的問題2023

    • 著者名/発表者名
      神林寿幸
    • 雑誌名

      教職研修

      巻: 90 ページ: 90-91

  • [学会発表] A Semiparametric Regression Model Applicable to Causal Inference in Various Educational Research Data : Extension of Identification via Heteroskedasticity2023

    • 著者名/発表者名
      Hashino, Akihiro
    • 学会等名
      European Conference for Educational Research 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] 「令和の日本型学校教育」下の教員業務を展望する2023

    • 著者名/発表者名
      神林寿幸
    • 学会等名
      日本教育行政学会(第58回大会)
    • 招待講演
  • [学会発表] 教員の離職意思に関わる要因の研究2023

    • 著者名/発表者名
      波多江俊介
    • 学会等名
      日本教育政策学会(第30回大会)

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公開日: 2024-12-25  

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